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癒羽琉(ユウル)/由羽(ユウ)
2020-08-02 00:10:11
3747文字
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怯える二人に愛の贈り物を②
第2章はダンテとキリエの会話メイン。
キリエ自身も色々悩んでいるのを、ダンテさんは見抜いていた。
[坊やへ
昨夜は世話になったな。夕食、美味しかったぜ。
本当はもう少しゆっくり過ごしたかったが、少々予定があってな。これで失礼するよ。
体には気を付けて、嬢ちゃんと仲良くな。
色々と応援してるぜ。またな。
ダンテ]
「さてと、こんな感じか
……
。あ、そうだ」
[PS お前のコートのポケットの中に俺からの土産が入っている。後で確認しといてくれ。
出来れば、中身は嬢ちゃんと一緒に見てくれ。]
「じゃあな、坊や」
朝日が昇り始めた頃、ダンテはネロが起きないうちに身支度を整え置き手紙を残すと、ネロとキリエが住む家を後にした。
【怯える二人に愛の贈り物を】②
ネロとキリエの家を出て、ダンテは真っ先にある場所へと向かっていた。
そう。キリエが子供達の世話をしている、孤児院だった。
話を聞いたところ、キリエは孤児院に泊まりがけで働いている時は朝食の準備や掃除のため早い時間に起きているらしく、ダンテはその時間帯を狙ってやって来たのだった。
「
……
どうやって中に入るかだな」
まだ、孤児院の扉は閉まってる時間。
ダンテは、門の前で少々唸った。
その時、孤児院の扉が開く音が聞こえ、ダンテはその方向へと目を向けた。
中から出てきたのは、タイミングがいいことにキリエだった。
その手にはホウキと塵取りを持っており、これから玄関の掃き掃除をおこなうところであろう。
そして、キリエが玄関の掃き掃除を始めようとした時、門の方から何やら視線を感じ、キリエはそちらの方向を見た。
「よっ、嬢ちゃん。久しぶりだな」
「
……
あれ、あなたは
……
ダンテさん?」
「ハハ。しばらく見ないうちに、随分綺麗になったもんだ」
「ええっ
……
そんな
……
!それにしても、どうしてここへ?」
キリエはダンテの言葉に照れつつ、驚いた様子で門の外にいるダンテのもとへと近付いていった。
「ダンテさん、ちょっとお待ち下さい。今、門の鍵開けますから」
「悪いな」
キリエは手早く門の鍵を外すと、孤児院の玄関前の段差まで案内した。
「すみません。本当は孤児院の中まで案内できたらよかったんですが、ちょうど室内の清掃中と朝食の準備をしているところでして
……
」
「ああ。別に構わないさ。ここでゆっくり話でもしようか」
そう言うとダンテはその場に腰をかけ、続いてキリエもダンテの隣に腰をかけた。
「いやぁ
……
フォルトゥナも大分変わったな。あの事件以来、重くて堅苦しい空気もなくなったし」
「そうですね。最初の頃は色々と大変でしたが、今はもうすっかりネロのことも、みんな受け入れてくれて。子供達は「ネロ兄ちゃんの右腕はヒーローの証!」って言ってます」
キリエはそう言うと、クスクスと笑いながら頬をほんのりと赤く染めた。
「ヒーローの証
……
か」
「当の本人はそう言われて恥ずかしがっていますが、どこか嬉しそうにしていますよ」
「ハハ。坊やらしいな。ところで、嬢ちゃん
……
」
ダンテはキリエ本題を投げ掛けようと、声をかけた。
「実はな昨夜、坊やたちの家に世話になってな」
「え、そうなんですか?」
「あぁ。最初は外で飯でも食おうかと思ったんだが、昨夜はちょうど嬢ちゃんが孤児院に泊まるから、よければ俺の家に来い
……
って坊やがな。嬢ちゃんの手料理、おいしかったぜ」
「いえ、お口に合ったようならよかったです」
「毎日、これからもずっと、嬢ちゃんが作るおいしい料理を坊やは食べていくんだな。羨ましいぜまったく」
ダンテはそう言うと、少しからかうようにキリエの顔を覗き込んだ。
「これからもずっと
……
ですか
……
」
「ん?嬢ちゃんはそういうつもりじゃないのか?」
「いえ、そうではなく
……
!も、もちろん、ネロとはずっと一緒にいたいです!でも、この先どうなるかとか分からないですし
……
」
「分からなくても、ずっと一緒にいたいんだろ。なら、先の不安なんて考えなくていいんだよ。坊やも嬢ちゃんも、明るい未来を描きつつ、今、この時を一生懸命生きればいいのさ」
ダンテのその言葉に、キリエは何かを気付かされたようにハッとした。
確かに、先の不安なんて今考えたところでどうにもならない。
「坊やも嬢ちゃんもまだまだ若い。若いからこその不安や苦労も山程あるだろうけど、大丈夫さ。互いを想い合う気持ちは、誰にも負けないだろ?長い時間をかけても、君達なら必ず、今よりもっと深い関係になれるはずさ」
「深く
……
ですか」
「そう。心も、体もな
……
」
「
……
」
「
……
意味は、分かるよな」
遠回しには言ったが、彼女は賢い子だとダンテは分かっていた。
きっと、ネロ以上に色々と悩んでるはず。
こんなデリケートな話題、ましてや一世代以上離れた男となんかと話したくないのが本来普通かもしれない。
そのため、ダンテはキリエが話の意味を理解してくれたところで、彼女から話してくれるのを待つことにした。
話したくないならそれはそれでいい。
しかし、キリエは意外にも嫌がった様子はなかった。
むしろ、ダンテ相手なら話したいと思っていた。
キリエはひと息つくと、少し重い口を開いた。
「
……
私、ネロが怖いわけではないんです。むしろ、ネロなら安心して身を委ねられると思います」
「
……
」
「
……
恥ずかしいんです。それと、こういうこと
……
心の中ではしてもいいのだろうか
……
って思ってて。なんだか、いけないことのような気がして
……
」
「
……
」
「
……
こんな考えするなんて、おかしいですよね
……
私。だって、私たちはそういう行為で生まれるのに
……
」
「いや、おかしくないさ」
ダンテは、キリエの肩に軽く手を添えながら話し続けた。
「女の子は性に対して恐怖心を持つことが多いはずさ。明らかに、女の子の方が危険な目に合うわけだし。昔から嬢ちゃんの隣にはいつも坊やがいただろうけど、坊や以外の男たちにも言い寄られたことはあるだろ?坊やのように本気で嬢ちゃんのことを好きだった奴もいれば、残念ながら体目的の奴もいたはずさ」
「
……
」
「嬢ちゃんが本当に坊や
……
ネロのことを信じているのは分かる。だけど、過去にあったそういうので少なからず、男性への恐怖心は残っているはずだ」
「
……
」
「俺が謝っても仕方ないが、男として怖がらせてしまっていることは申し訳ないと思っている。ただ、嬢ちゃんが少しでも男性を受け入れ許すことができれば、ネロのことをもっと深く愛することができる」
「許し
……
愛す
……
」
「ああ。もちろん、焦らなくていいし、嫌なこと、許せないことは無理に許せなくていい。それに、ネロだって気持ちの整理がついていない嬢ちゃんを深く愛するなんて、できないだろう。大丈夫さ。ネロは本当にいい奴だ。誰よりも一番に嬢ちゃんのことを想っている。心の底からな。だから、嬢ちゃんもネロのことをもっと信じてほしい。心の底から
……
な」
「
……
」
「さてと、俺が伝えたかったことは伝えたし、あとは嬢ちゃんと坊や次第だな。大丈夫さ。頑張れよ」
ダンテはそう言ったあと、キリエの頭を軽くポンと撫で、その場からゆっくりと立ち上がった。
それに続くように、キリエも立ち上がった。
「あの、ダンテさん
……
」
「ん?」
「ありがとうございます。その
……
私、実は心の奥で感じていた恐怖心とか、無理やり抑え込んでいたんだと思います。でも、お陰で解放することができそうです。今はその気持ちを感じ切って全て受け入れます。そしたら、ネロの想いに向き合いたいと思います」
キリエのその言葉に、ダンテは優しく微笑んだ。
やはり、彼女は芯の強い子だ。
これで、安心して自分の事務所に帰ることができる。
時間がかかっても、これからの二人の関係がより一層深まることを、ダンテは心の奥底から願った。
「じゃ、そろそろ帰るとするか。話せてよかったよ」
「こちらこそ。また、是非いらしてくださいね。今度は、ネロも誘って三人でお話しましょう」
「ハハ。そうだな。
……
あ、そういえば」
ダンテは、コートのポケットの中をゴソゴソと漁り、小袋を取り出した。中身は見えない。
「嬢ちゃん、コレやるよ」
そして、それをキリエへと手渡した。
「?何ですか、コレ
……
」
「見てからのお楽しみさ。できれば、坊やと一緒に見てほしい」
「ネロと
……
ですか?」
「あぁ。アイツにも、同じ物をプレゼントしてあるから。
……
じゃ、宜しく頼むよ」
そう言うとダンテは、片手を上げてキリエに背を向けながら門の外へと向かっていった。
(
……
ダンテさん、ありがとう)
キリエは心の中で呟いたあと、ダンテからもらった小袋を胸にキュッと抱きしめ、孤児院の中へと戻っていった。
ーーーーーーーーーー
(ハハ。まさか、アレを誰かに渡すだなんてな)
ダンテが渡した物
……
それは、ダンテにとってとても大切な宝物だった。
(でも、やりたくなったんだよな、なぜか。あの時、閻魔刀をネロに渡したように
……
)
きっと二人なら、ずっと大切にしてくれる。
そう確信したダンテは、どこか切ない気持ちになりながらも、柔らかい笑みを浮かべてフォルトゥナを後にした。
to be continued
……
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