癒羽琉(ユウル)/由羽(ユウ)
2020-02-26 00:52:56
9089文字
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necklace

レディが悪魔退治中にネックレスを無くしてしまい、それをダンテと二人して探すお話。
ダンレディ要素有り。
二人の関係は曖昧な感じかもです。

「ダンテ、ないの……
「何が?」
「ネックレス、どこかに落としちゃったみたい……
……え」

***

「なぁレディ、本当にこの辺りに落としたのか?」
……分からない」
「分からないって……。手掛かりなしに探すのは困難だぞ?」
「そうなんだけど……
「しょうがねぇ。お前が通った道を片っ端から探っていくしかないか」
……ごめん」

 事の発端は数時間前。ダンテとレディは、いつものように悪魔退治の依頼を二人でこなしていた。
 数は多かったが、ダンテとレディは二手に別れて各自悪魔を難なく倒していた。
 互いに最後の一体を倒し終え、このあとどうしようかと、二人で話している時だった。
 レディが不意に自身の首元へと手を触れたとき、普段から身につけている赤い宝石のネックレスがないことに気が付いた。
 その瞬間、レディは体中の血の気が一気に引いてしまった。
 そんなレディの様子を目の当たりにしたダンテは、青ざめている彼女の表情をそっと覗き込んだ。
「おい、レディ?どうした?」
……
「レディ?」
………………
「?」
「ダンテ、ないの……
「何が?」
「ネックレス、どこかに落としちゃったみたい……
……え」

 そして、今に至る。

「なかなか見つからねえな……
……うん」
 ネックレスを探し始めて二時間になるが、思い当たる場所を隅から隅へと探ってみても、なかなか見つかる様子がなかった。
 ダンテの記憶では、二手に別れて行動するまでは、レディの胸元にいつもつけているネックレスがあったのを覚えている。ということは、レディが悪魔と戦っていた場所にあるはずだった。
 だが、辺りは悪魔との戦闘のせいで、見渡す限り瓦礫の山。地道に瓦礫をどかしてネックレスを探してはいるが、この中から見つけ出すには余りにも困難だった。
「しっかし、今回も派手にやったな」
「だって、数が多かったから……
「そうだとは思うけど、こんなにめちゃくちゃにしちまったら、ネックレス壊れてるんじゃねえか?」
 いつもの軽いノリで、ついそう言ってしまったダンテ。咄嗟に「今の発言はまずい」と思い、慌ててレディの表情を見た。案の定、レディは溢れ出しそうな涙を堪えるかのように、唇をギュッと噛みしめて顔を俯かせていた。
「っ……
……ごめん」
 ダンテは、些細な一言でレディを傷付けてしまったことに対して申し訳なさそうな表情を浮かべると、ひと言謝った。
 レディは顔を左右に軽く振ったあと、重い口をゆっくりと開く。
「ダンテ、あの……
「ん?」
「ごめんね、たかがネックレス一つに……
 レディはそう言うと、更に顔を俯かせた。同時に、彼女の頬を一筋の涙が伝う。
 それを見たダンテは、指先でレディの涙を拭ったあと、優しい声色で話しかけた。
「別にいいって。それほど、大事な物なんだろ?」
……うん」
「なら、見つかるまで探そうぜ。例え、壊れていたとしてもな」
 そして再び、ダンテは足元の瓦礫をどかしては、ネックレスを探し始めた。続いてレディも、ダンテと共に足元の瓦礫をどかしてネックレスを探し始める。
「そういえば、なんでいつもあのネックレスつけてるんだ?」
……お母さんの、形見なの」
……そっか」
「バカだよね私。大切な物なら、普段からつけていないで保管していればよかったものを……
「だからこそだろ」
「え……
「大切な物だからこそ、ずっと身につけておきたいんだろ。母親の形見なら尚更だと思うぜ。……俺も、そうだし」
 そう言うとダンテは、自身の首にかけてある母親の形見のアミュレットをそっと握りしめた。
「さぁさぁ、あんまり喋ってても切りがねぇし、早く探そうぜ。もうこの辺りは大分見たから、場所変えるぞ」
 ダンテはレディの手を引いて次の目的地へと足を進め始めた。
「ちょっと、ダンテってば……
 ダンテの行動に少し驚いたレディだが、ギュッと掴まれた手からは彼の必死さ伝わってきた。
 ダンテ自身も、レディと同じように焦る気持ちでいっぱいだったのだ。
「あの……
 ダンテの心情を察し、申し訳なさが募ったレディは再び彼に謝ろうとした。
 だが、ダンテは「謝らなくていい」と伝えるかのように、真っ直ぐ前を見つめたまま首を横に振った。
 ダンテの優しさに瞳の奥が熱くなるレディ。
 レディはダンテに握られた手を弱々しくギュッと握り返すと、黙って彼の後ろを着いていった。



ーーーーーーーーーー



それから二人は互いに手を握りあったまま、足元をキョロキョロと見回してネックレスを探し続けていた。
やはり、辺りは瓦礫の山ばかり。
ただ地面などを見回すだけでは、ネックレスは一向に見つかりはしなかった。
「本当、見つからねぇな……
「悪魔が、盗んでいったとか……
「お前までそんな事言ってどうするんだよ」
「だって……
「いいから、破片でも何でも探すぞ」
「破片て……。チェーンだけとか、それこそ石の破片だけとかだったらどうするのよ」
「その時はその時だろ。何なら、俺がカスタマイズしてやるし」
……
「なぁに、心配すんな。こう見えて手先は器用何だぜ俺。お前に似合うネックレス、作ってやるよ」
そう言うとダンテは、レディの手を握りながら再び歩き始めた。
「ついでに、新しい材料も探しとくか」
「もう、真面目にやってんだかやってないんだか……
……あのなぁ、ふざけた気持ちでここまでお前に付き合ったりしないぜ、俺は。……まぁ、俺ってこんな奴だから、信用ならないかもしれねぇけど」
「別にそう言う訳じゃ……
レディは思い出していた。初めて会った日の事を。
確かに最初は自分の使命を邪魔する目障りな奴だと思ったり、ましてや、彼には悪魔の血が流れている。
本来ならば、自分にとって最大の敵であるはずの存在。
それでも、そんな彼を信用出来るようになったのは、デビルハンターとしての互いの志をぶつけ合い、ダンテが双子の兄バージルと決別した際に見せた、涙がきっかけだった。
……ダンテって、優しいよね」
「なんだよ、急に」
「だって、たかがネックレス……っていう訳ではないけど、私のためにここまでしてくれる人っていなかったから……
そう言うとレディは、どこか遠くを見るように顔を俯かせた。

ダンテの憶測だが、今でこそデビルハンターをやってる彼女を見る限り、そこら辺の男達より強かっただろうし、俗にいう女性らしい扱いを受ける機会があまり無かったのだろうと思った。
しかし、ダンテはその事が疑問だった。
以前、母親と一緒に写る彼女の昔の写真を見た事があったが、可愛らしい洋服を着ており、母親に似て綺麗な顔立ちをしていた。
髪の毛は今と同じように短めだったが、よく似合っている。
……どう考えても、男達が見る目ねぇよなぁ。俺は可愛いと思うんだけど)
ダンテは心の中でそう思いながら、俯いているレディの顔をジッと覗き込んだ。
……?ダンテ、何よ……
レディは、顔をジッと見つめてくるダンテに疑問を抱きつつ、自身もそのまま見つめ返した。
……お前ってさ、結構可愛らしい顔立ちしてるよな」
……ぇ?」
「何か、雰囲気は近寄りがたいとかキツイ印象あるかもしれねぇけど、瞳とか大きいし、唇も艶々で綺麗だし」
……!な、急に何言って……
「だから、可愛いって言ってんの」
……っ!もう、そんな事言ってないで、早くネックレス探すわよ……!」
そう言うとレディはダンテから顔を逸らし、辺りの瓦礫を手探った。
(やだ……ビックリした……。ダンテったら、不意に予想もしないような事言ってくるんだもの……
嬉しい事だが、容姿を褒められる事はあまり慣れていなかった。
それなりに自分自身には気を使ってはいるが、職業柄、周りからは距離を置かれる事が多い。
自分を女性として見てくれるのは、彼、ダンテだけかもしれない。
しかし、ダンテは……
(いけない。今はネックレスを探す事に集中しないと……
レディは複雑な想いが込み上げてくるのをグッと堪えるように唇を噛み締め、目の前の瓦礫をひたすら漁るのだった。



ーーーーーーーーーー



「ダメだ、この辺りも見つからねぇな」
……そうね。破片一つすら見当たらない……
ネックレスを探し始めて、かれこれ4時間経とうとしていた。
よくこんなに長々と探していたかと思うと感心はするが、正直ダンテもレディも諦めてしまおうかという気持ちが芽生え始めていた。
「ダンテ……
「ん?」
「やっぱり、悪魔達がどさくさに紛れて盗んだのかもしれないわ……
冗談なのか本気なのか分からないが、レディのその発言にダンテは苦笑いした。
「ハハ……、ネヴァンみたいな奴なら分かるけど、下級悪魔達が欲しがるとは思えないぜ」
……それもそうね」
……
……
……
……
体力はあっても、気力が無くなりかけていた二人には話題がなくなってしまい、暫くの間沈黙が流れた。
(ダンテ、怒ってるかな……
レディは、ダンテの表情を横目でそっと伺った。
ダンテは、不機嫌な表情をしているわけではないが、何処か疲労を感じさせるような雰囲気を漂わせていた。
(こんな事、ある意味悪魔達と戦う事よりも神経使うもの。……もう、これ以上は迷惑かけられない)
レディはそう思うと、ダンテの手を引いて来た道を戻ろうと歩き始めた。
……?レディ?どうした?もう少し休んでからでも……
「もう、いいの」
……ぇ?」
「だから、もういいの」
……
「これだけ探しても、見つからないんだもの。……きっと、これ以上はもう無理よ」
そう言うレディの声が微かに震えているのを、ダンテは聞き逃さなかった。
……ごめんね、ダンテ」
……
「早く、帰りましょ?……お腹だって、空いているでしょ?」
……
「本当に、もういいから……。大丈夫……だから……
……大丈夫なら、何で今にも泣きそうになってるんだよ」
ダンテは、真っ直ぐ前を見つめたままのレディを後ろから、片方の腕で抱き寄せた。
そして、彼女の耳元で優しく話し始めた。
「本当はもう少し探したいんだろ?それで見つからなくて、お前も俺も諦められるならそれでいい。だけど、今のお前を見ていると、このままじゃ終われねぇよ」
……
「もし今日、いくら探してもダメだったら明日だって明後日だって、また探してやる」
……
「だからさ、レディ……。俺に迷惑かけるとか、そんな事気にするなよ」
……
「お前に迷惑かけられたって、俺は嫌じゃないぜ?俺だって、お前に散々迷惑かけているし……。だけど、その分頼りにしてるって事だし、お前だってそうだろ?」
……
「一人で抱え込むなよ……。ったく、強がる割には、落ち込みやすいんだから……お前は」
ダンテはそう言ったあと、レディからそっと離れて行った。
そして、再び彼女の手をギュッと握ると、ゆっくりと歩き出した。
「とりあえずあと、一時間な?それで見つからなかったら、明日また探すぞ」
……うん」
レディは、今にも溢れ出しそうな涙をグッと堪えながら、ダンテが歩き進める方向へと黙って着いて行った。


ーーーーーーーーーー


「とりあえず、今日はこの辺り探して最後にしようぜ?これ以上は暗くなって見つかりにくいと思うし」
……そうね」
ダンテとレディが最後に来た場所、そこは、廃墟となった建物の裏に流れている川だった。
溺れるほどではないが、深い所ではダンテの膝まで浸かりそうなくらいだった。
「よし、お前はその辺で待ってろ。もしかしたら川の中とかにあるかもしれねぇし、ちょっと探してくるな」
ダンテは自身が羽織っているコートを脱ぎ捨て、ズボンの裾をたくし上げると、川の中へと入ろうとした。
そんなダンテの行動を阻止しようと、レディは慌ててダンテの腕を掴んだ。
「ちょっとダンテ……!幾ら何でも、川の中はいいわよ……!着替えとかないのに……
「別に、着替えなら問題ないさ。アグニ&ルドラでも使って風とか起こせば、乾かせるだろ」
「もう……それなら私だって川に入って探すわよ」
「それはダメだ」
「何でよ……
……透けるだろ」
そう言うとダンテはレディの胸元へと視線を向け、直ぐに逸らした。
……分かった」
レディは、ダンテが言った意味を理解し、
掴んでいたダンテの腕をそっと離した。
「じゃ、ちょっと探してくるから」
ダンテはレディに一声かけると、川の中へと足を進めて行った。
そこまで冷たいわけではなかったが、若干襲って来た寒さに、ダンテは軽く歯を食いしばった。
そんなダンテの様子を見たレディは、少しでも手伝おうと思い、川の近くへと寄って行った。
「ダンテ、私……中には入れないけど、上から川の中見てみるから、何かあったら声かけるね……?」
「分かった、頼む」
そしてレディは、ダンテから少し離れた場所へと行き、川の中を上から見ながら探った。
(何か、光る物とかが見えたらいいんだけど……。あとは、岩の間に挟まっているとか……
レディは微かな手掛かりでも見落とさないように、目を一生懸命見開いてネックレスを探した。
怪しいものが見えたら、自分の手が届く範囲で川の中も探ってみた。
(お母さん、ごめんなさい。必ず見つけるからね……
レディは胸の奥で、亡き母に想いを伝えた。

その時だった。
自分がいる場所とは反対側にある岩と岩の間に、赤い石がキラッと光っているのが目に見えた。
(もしかして……
余りにも小さいためちゃんと確認はできないが、可能性はありそうだった。
「ダンテ、ちょっと……!」
レディは、少し遠くにいるダンテに向かって声をかけた。
ダンテは、流れる川に足を取られそうなりながらも、慌ててレディの元へとやって来た。
「どうしたレディ?見つかったのか?」
「ううん、分からないけど、あそこに光ってるの……
レディは、先程目に映り込んだ光を指差した。
「ん……どれ……?」
「あそこ……ほら、何か赤いのが……
「うーん……とりあえず行ってみるな」
ダンテはレディが指差している方向を頼りに、
岩場へと近付いていった。
「えっと……コレか……?」
ダンテは、岩の隙間に挟まっていた赤い石を指先で掴み、ゆっくり引っ張った。
その石には、ネックレスのチェーンが付いていた。
(コレだったっけな……レディのネックレス……
記憶が曖昧なせいか確信を持てないでいるダンテ。
とりあえず、今手に持っている物をレディに見せようと思い、ダンテは岩の隙間に引っかかっているチェーンをゆっくり外したあと、彼女の元へと向かいながら話しかけた。
「レディー!とりあえずソレらしき物があったから、見てくれねぇか?……って、うおっ!」
ダンテは、あと数歩でレディの元へと辿り着きそうというところで足が縺れてしまい、バシャーン!と音を立てながら川の中で思い切り転んでしまった。
当然、その時に起きた水しぶきは、レディの身体にもかかった。
「ゃ、ちょっとダンテ……!大丈夫?」
レディは、川の中から起き上がるダンテに手を伸ばした。
「悪ぃ……大丈夫」
ダンテは、差し出された手を握ると、レディがいる岸に上がった。
しかし、そこでもダンテの足は縺れてしまい、再び派手に転んでしまった。
その勢いで、レディを押し倒す形となってしまったダンテ。
レディの体には、ダンテの体重が一気にかかる。
「痛ぇ……って、レディ大丈夫か?」
「っ……バカ、私の方が痛いに決まってるじゃない……っていうか、重いんだけど……
……悪ぃ」
ダンテは、倒れる際にレディの頭に添えた手で抱き寄せるように、彼女と共に自身の体を起き上がらせた。
そしてそのまま、彼女の顔を自身の肩に埋めるように抱き寄せると、頭を優しく撫でた。
「ダンテ……?どうしたの……?」
……
「ねぇ、ダンテってば……
レディは、自身の顔を埋めているダンテの肩を軽く押すと、彼から身体を離した。
その瞬間、ダンテはハッと我に返るように目を見開くと、レディから顔を背けた。
……ぁ、悪い。何でもねぇよ」
……もぅ、何なのよ」
「いや、何でもない……
何でもないと言いつつ、ダンテの頬がほんのり赤く染まっていたのを、レディは見逃さなかった。
……それよりさ、コレ」
ダンテは、この場の雰囲気を変えようと、手に持っていたネックレスをレディへと差し出した。
「記憶が曖昧だからハッキリは分からねぇけど、コレ……お前のネックレスじゃないか?」
……見せて」
レディは、手の平をダンテに差し出すと、その上にネックレスをそっと載せて貰った。
赤い石にチェーンが付いているだけのシンプルなデザイン。
レディは、石の形やチェーンの長さをしっかりと確認し、そのネックレスを自身に着けた。
その瞬間、レディの脳裏には、亡き母の姿が思い浮かんだ。
母が、いつも御守りとして身につけていたネックレス。
いつしかそれを、母親が自分にプレゼントしてくれる事を聞いた時は、心の底から嬉しかったのを覚えている。
そして、自身が十五歳の誕生日の時、母親のネックレスはレディの元へとプレゼントされた。
少女から大人の女性に向かう複雑な年頃。
素敵な女性になれますようにという、願いが込められていた物だった。
その時の思い出、母親の願いが鮮明に蘇る。
間違いない。
このネックレスはレディが普段身に付けている物、レディの母親の形見のネックレスであった。
その事を確信すると、レディは胸元で光る赤い宝石を優しく握り締め、声を押し殺しながら肩を震わせ、静かに涙を流した。
そんなレディの様子を見たダンテは、再び彼女の頭を自身の肩に埋めるように抱き寄せ、そのまま彼女の頭を優しく撫でた。
「よかったなレディ……無事に見つかって」
「っ……ぅん」
「事務所戻ったらさ、少し修理してやるよ。チェーンとかもう少し丈夫にして、石も欠けている所直したりさ……
「ぅぅっ……
……落ち着いたら、帰ろ?」
ダンテは、未だに声を押し殺しながら泣いているレディをあやすように、彼女の頭を撫で続けていた。
(レディ……
出来る事なら、このままこうして過ごしてはいたいが、そうもいかない。
しかし、少しでも長くこうして過ごせるなら、このまま彼女が泣き続けていてくれればいい。

(だけど、俺が本当に好きなのは……

ダンテは、自身の肩に頭を埋めているレディの事をゆっくりと押すように引き離すと、彼女の頬を伝っている涙を指先で拭った。
「レディ、お前って本当に泣き虫だよな」
「っ……だって……!」
「ほら、そうやってすぐムキにもなったりする」
……ぅっ」
「俺がな、一番好きなのは……笑ってる顔なんだけどな……
そう言うとダンテは、レディの頬を包み込むように優しく撫でた。
口元を緩ませるように、優しい笑みを浮かべながら。
そんなダンテの表情、行為によって、レディは鼓動が高鳴っていくのを感じた。
彼の透き通る青い瞳にジッと見つめられ、身動きが取れない。
頬を撫でている彼の手の温もりに、酔いしれそうになる。
……だめ)
これ以上、もう耐えられない。
レディは、何とか保っている理性を頼りに、ダンテの元からそっと離れた。
……レディ?」
「っ……ダンテ、そろそろ本当に帰らないと……遅くなっちゃうわ……
……そうだな」
どこか、もどかしさや物足りなさを感じつつ、ダンテは一息吐いたあと、その場からゆっくりと立ち上がろうとした。
しかし、その時だった。
自身の視界に、レディが身に付けているネックレスが急に飛び込んできた。
そう。レディが自身の胸元にダンテの頭をグッと引き寄せ、抱きしめたのだった。
レディの胸元とダンテの唇がほぼ接触しているため、ダンテは声を上手く発せず、息をするので精一杯であった。
突然の事に、身動き一つ出来ないダンテ。
そしてしばらくすると、レディが自身から離れようとする動きを感じた。
しかし、そんなのも束の間だった。
ダンテの額に、生暖かくて柔らかいものが触れた。
それは、レディの唇であった。
一瞬、何が起こったのか理解出来ないでいるダンテ。
そんなダンテの様子をよそに、レディは再びダンテと向かい合った。

「今の私には、これが精一杯だから……
レディはそう言うとその場からゆっくりと立ち上がり、地面に座り込んだままのダンテへと手を差し伸べた。
「さぁダンテ、帰りましょ?今夜はお礼にピザとストロベリーサンデー奢ってあげるから。ね?」
……ぁ、うん」
ダンテは、差し伸べられたレディの手を掴むと、その場から立ち上がった。
そしてそのまま、二人は手を握ったまま歩き出した。


ーーーーーーーーーー


「ダンテ……今日は、ありがとうね」
……いや、別に」
……今夜は、ダンテの家に泊まるパターンかしら」
……そうだな」
「ごめんね。帰りが遅くなっちゃって……
……いや、気にすんな」
……今度は、依頼じゃない時にでも会いましょ?」
……あぁ」
ダンテとレディは、他愛ない会話をしながら、月明かりに照らされている瓦礫の道をゆっくりと歩いていた。
「ネックレス、見つかってよかったな」
……そうね。本当、ダンテのおかげよ」
「俺は別に……
「ううん、ダンテのおかげ。ありがとう」
レディにお礼を言われたダンテは何処か照れ臭くなってしまい、ほんのり頬を染めると彼女から若干顔を背けてしまった。
今は、彼女の顔がまともに見れない。
抱きしめられた時、目の前に飛び込んできた彼女の胸元とネックレスが頭から離れない。
ダンテはその時の光景を思い出しつつ、彼女の胸元、ネックレスだけに視線をそっと向けた。
……綺麗だ)
月明かりに照らされたネックレスの赤い宝石は、不思議な力を増しているかのように美しく輝いていた。
(それと……お前もな)

ダンテとレディ、互いの大切なものを改めて実感した一日を胸に刻みながら、帰路を進んで行くのであった。




END