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癒羽琉(ユウル)/由羽(ユウ)
2019-11-21 21:03:11
6148文字
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少女からの贈り物〜幸せのおまじない〜
時系列はDMC5。
ネロキリ前提だけど、ネロと依頼先で出会った少女の話。
フォルトゥナから海を越えて遠く離れた場所にある小さな街に、ネロは依頼でやって来ていた。滞在してから、十日目になる。
ダンテ、V、バージル、それに関わる悪魔達との騒動も一件落着し、自身の故郷であるフォルトゥナで暫くのんびりと過ごしている時だった。
全滅させたと思っていたが、あの事件で溢れ出した悪魔の数体が流れ着いていたらしく、今回悪魔退治の依頼がネロの元に来たのだった。
自身も本来の力を取り戻し、新たな力も付けていたため、悪魔退治は今のネロにとって心も身体も絶好調の状態だった。
ただ、問題は依頼場所の遠さだった。
海を渡るため、船で丸一日はかかる。
天候によっては、それ以上の日数も。
遠出先での依頼に関してだが、頻繁に来ることが難しいため、悪魔を退治した後の最終確認を念入りに、日数をかけてやらなければならない。
しかも、今回依頼で来た場所は小さいながらも有名な観光地の街らしく、大勢の人が賑わっている。
中には人間の姿に化けている悪魔も混ざっている可能性もあるため、ネロはいつも以上に全神経を集中させて、悪魔の気配を探っていた。
そんな日々が何日か続いたせいか、少しばかり身体が参り始めていたネロ。
今日一日、最後の見回りをして、余程何も無ければ明日にはこの街を出れる。
ネロは無事に依頼を終える事を願いながら、愛用のレッドクイーン、ブルーローズを手に取り、泊まっているホテルの部屋を出て行った。
ーーーーーーーーーー
「よし、特に異常なしだな」
最後の見回りを終え、ホテルの部屋に戻ったネロは依頼書に目を通しサインをすると、武器をベッドに寝かせて自身も腰をかけた。
遠い場所のため何かと心配事が多かったが、幸いにも怪我人などが出る前に悪魔退治を終える事が出来たため、ネロは安堵の息を漏らした。
今回の依頼主は、ネロが泊まっているホテルのオーナーだった。
家族でホテルを経営しているらしく、事の発端はオーナーの一人娘が森で悪魔らしき物体を見かけた事だった。
幸いにも、その少女は悪魔に気付かれずにホテル兼自宅へと帰って来れたらしいが、この世の物とは思えない物体をどうにかしなければならないと思い、古い書物をひたすら漁ったとの事だった。
どうやら、遥か昔にこの街にも悪魔出没の記録があるらしく、少女は更に悪魔についての書物を漁った。
そこで、魔界という存在がある事を知り、伝説の魔剣士スパーダの事も知ったとの事だった。
信じてもらえるか定かではなかったが、少女はホテルのオーナーであり、自身の父に悪魔の件を相談した。
意外にも少女の父は、娘の話をすんなりと信じたのだった。
実は昔、そのオーナーはフォルトゥナへと訪れた事があり、そこで魔剣士スパーダの伝説を学んだとの事だった。
「しかし、こんな遠い街にも縁があるとはな」
一体、どれだけの人が今、魔剣士スパーダの伝説を知っているのだろう。
その息子ダンテは、伝説が語り継がれようと多くの人に知られようと、特に気にしていないみたいだが、ネロにとってデビルハンターとして尊敬するダンテの父の名が知られる事は、誇らしい事だと感じていた。
「ダンテの親父か
……
」
自分が生きている間に、会うことは出来るのだろうか。
息子のダンテでさえ、生き別れたまま会った事がないという。
一度でいいから、この目で見てみたい。
会ってみたい。
そんな事を思った直後、部屋の扉がノックされる音が聞こえた。
ネロはホテルのオーナーだと思い、部屋に入るように促した。
しかし、扉が開いた先に見えたのは少女の姿。
そう。ホテルのオーナーの娘だった。
ブロンドの瞳と髪。ホテルの制服を着ており、顔立ちはどちらかというと大人びた印象だったが、全体的な雰囲気は可愛らしい少女だった。
その少女の手にはワゴンがあり、どうやらルームサービスのドリンクを運んで来た用だった。
「お疲れの所失礼します。お兄さん、ドリンク何がいいですか?」
少女は、ドリンクのメニューが書いてある紙を、ネロに渡した。
「無難にコーヒー、紅茶とかありますけど、オススメは自家製ブレンドのハーブティーです」
「へぇ〜。ハーブティはたまにキリエが淹れてくれるやつ飲んだりするし、それをお願いしていいか?」
「はい。直ぐにご用意しますね。今日は寒かったでしょう?暖かくして、ゆっくり寛いで下さいね」
そう言うと少女は、手際良くワゴンの上で作業をし、ネロが腰掛けているベッドの側のテーブルへとハーブティを用意した。
ローズをメインにしているのか、甘くて優雅な香りが部屋中に広がった。
「お熱いので、気を付けて下さいね。二分から三分くらい蓋をして蒸らしてから飲むと、香りがもっと良くなりますよ」
「分かった。ありがとう」
ネロは少女に言われた通り、用意してもらったハーブティを暫く置くことにした。
用も済んだし、少女は部屋を直ぐに出て行くと思ったネロ。
しかし、少女はベッドに腰掛けているネロの正面へとたち、そのまま動かなかった。
どうしたものかと思い、ネロは少女を見つめると、首を傾げた。
そんなネロの様子に御構い無しに、少女はネロに話しかけた。
「ねぇ、お兄さん
……
聞いてもいいですか?」
「
……
ん?」
「お兄さんて、恋人とかいるんですか?」
「
……
まぁ、恋人というか、正直それ以上の人だけど」
まさかと思うが、ネロは少女がその気になる前に、先手を打とうと素っ気ない態度を見せた。
しかし、少女は一歩引いたり攻め寄ってくる姿勢を見せずに、そのまま話し続けていた。
「そうなんですね。
……
こうして、会えない期間が少し続くと、寂しくないですか?だって、いつも一緒にいるんですよね
……
?」
「そりゃあ、多少はな」
「
……
あの、電話したかったら、うちのホテルの自由に使っていいですよ?」
「?
……
あぁ。ありがとう」
何故少女は突然、この様な話題を自分にして来たのだろうと疑問に思いつつ、ネロは先程淹れてもらったハーブティを手に取り、ゆっくりと口に含んだ。
「
……
美味いな」
爽やかな味わいにほんのり甘さが広がるハーブティ。
ネロは身体が温まると同時に、心が安らぐのを感じた。
「よかった。ハーブティって、あんまり好んで飲む人いなくて
……
。色んな効果、効能があるのに
……
」
「そうだな。俺も、キリエが淹れてくれるまではあんまり馴染み無かったから」
「キリエって、お兄さんの恋人
……
?」
「
……
まぁな」
「恋人というより、パートナー?」
「
……
あぁ」
「そう
……
。お兄さん、キリエさんに
……
会いたいですか?」
「
……
そうだな」
「
……
寂しい?」
「
……
少しな」
「そう。
……
そしたらね」
少女は、ネロの横にそっと腰を掛けた。
「この地に、昔から伝わるおまじないがあるんです。大切な人に会いたくても会えない時に、よく効くおまじないが
……
」
そう言うと少女は、制服のポケットに入っていたペンと紙を取り出し、机の上で何かを書き始めた。
「紙に、好きな動物や生き物のイラストを描いて、背中の部分に会いたい人の名前を書いて、それを月明かりに照らすだけなんですけどね」
そう言いながら少女が描いた絵は、何故かカエルだった。
「げっ
……
俺、カエルは苦手なんだよな
……
」
「あら、それはごめんなさい。でもね、カエルはこの街では家の守り神として讃えられている時代もあったって、本に書いてあるんですよ」
「カエルが守り神
……
か
……
」
ネロは遥か昔、カエルに良く似た大型の悪魔と戦った事をふと思い出した。
「それにしても君、絵が上手なんだな」
マスコットみたいに簡単なイラスト程度だと思っていたが、少女はそこそこの画力の絵を描いていた。
「それはどうもありがとう。
……
私もね、彼に会えない時は、こうやって想いを届けているの
……
」
そう言って切ない表情を浮かべる少女の言葉に、ネロは耳を傾けた。
「
……
恋人、いるのか?」
「うん。この街から遠い所に住んでいるの。
……
会いたくても、会えない日々が多いの」
「
……
手紙とか、書いてるのか?」
「一ヶ月前に出して、それっきり何もないの」
「
……
電話とかは?」
「この前かけたけど、繋がらなくて
……
」
「
……
なるほどな」
「だからね、お兄さんがこの街に来た時ビックリしたんです。お兄さん、私の彼にどこか似ていたから
……
彼が来てくれたと思って
……
」
そう言うと少女は、ネロの横顔をジッと見つめた。
「お兄さんみたいに睫毛がとてもフサフサしててね、髪の毛の色はちょっと違うけど、雰囲気とか凄い似てるなって
……
」
「そっか
……
」
ネロは思った。
恐らく、少女の恋人の面影を自身に重ねてしまったのだろうと。
もちろん、互いに大切な人がいるため、間違いを犯したり変な感情が湧き上がってくる事はないが、彼に会えない少女はその寂しさをただ聞いて欲しくて、ネロの元にやって来たのだろうと。
「私、十六歳なんですけど、まだまだ子供だから、今は彼を信じて待つ事しか出来なくて
……
」
少女の年齢を聞いて、ネロはキリエと想いが通じ合った頃の自分をふと思い浮かべた。
「若いなぁ。その彼も、歳近いの?」
「ううん。彼は二十一歳」
「となると、俺と同い年くらいか
……
」
それなら尚更、歳の近い自分自身に彼の面影を重ねてしまうのは無理がないなと、ネロは思った。
「
……
本当はね、おまじないなんて、ただの気休めくらいにしかならないだろうな
……
って思う時があるの。でもね、それでも彼に会いたい会いたいって念じていれば、またいつか必ず会えるって信じているから
……
」
「
……
」
「でもね、もしかしたら彼にはもっといい人が出来たんじゃないかって
……
思ってしまうの。
……
本当にもう、会えないんじゃないかって
……
」
「
……
大丈夫。会えるさ」
「
……
」
「その彼がどんな人かは俺は知らないけど、君の事をこうして見る限り、君は物凄く良い子だな
……
って俺は思うぜ。そんな子をほっとく奴がいるとは思わないし。
……
仮に、ほっといたりでもしたら、ソイツはその程度の男って訳さ。それに
……
」
そう言うとネロは、先程少女が淹れてくれたハーブティを再び口に含んだ。
「
……
こんなに美味しいお茶を淹れてくれる女の子、中々いないと思うぜ。俺にとっちゃ、キリエ以来さ」
「
……
」
「だからさ、君は自信を持って、彼を信じて待っていればいい。君が想えば想うほど、彼に気持ちは必ず伝わるから
……
な?」
「お兄さん
……
ありがとう
……
」
ネロの優しさに、少女は一筋の涙を流した。
しかし、嬉しい言葉を貰ったお陰か、頬をほんのり染めると、口元を緩ませた。
その瞬間、少女は何かを思い出したのか、ハッとした表情を浮かべた後、ワゴンに置いてある引き出しの中をガサガサと探りに行った。
そして、目当ての物を見つけてそれを手に取った後、再びネロの正面へと立った。
「ねぇ、お兄さん」
「?」
「話聞いてくれたお礼に、この飴
……
あげるね」
そう言って少女がネロに差し出した物は、袋に詰めてある数々の飴だった、
「え?
……
サンキュ」
「どういたしまして。
……
その飴ね、私の彼が住んでいる街の名物なの。飴職人が想いを込めて、時間をかけて手作りしている物だから、凄く美味しいのよ。宝石みたいで、綺麗でしょ?よかったら一つ、お茶菓子代わりに食べてみて下さい」
ネロは少女に言われた通り、袋の中から飴を一つ取り出すと、それを口の中に含んだ。
飴の色は赤。恐らく苺の味だろう。
甘酸っぱい味わいが、ネロの口内に広がっていった。
「
……
」
「
……
どう、ですか?」
「美味しいよ、凄く。なんだか、他の飴とは違う不思議な味がするな
……
」
「よかった
……
。実は、その飴は私の彼が作った物なんです。私の彼ね、一人前の飴職人になるために、自分の故郷で修行中で
……
。だから私、待ってるの。彼、一人前の飴職人になったら私の街に来て、そこでお店を開いて、一緒に住んでくれるって
……
」
「そっか
……
」
少女が真っ直ぐ彼を想う心に、ネロは自身のパートナーであるキリエの姿を重ねた。
きっと、目の前にいる少女も、キリエのように芯が強くて優しい女神のように素敵な人だ。
ネロは、少女とその彼の恋の行方が明るい方向に行くようにと、強く願った。
「それじゃ、私はそろそろ部屋を出ますね。
お疲れの所、長居してごめんなさい」
「大丈夫だよ。俺も、いい土産もらったし。
……
君と話せてよかったよ。少しだけだけど、癒されたぜ」
ネロがそう言うと、少女は優しく微笑んだ。
「こちらこそ、どうもありがとう。お兄さんと話せてよかったです。
……
明日また、帰る時にでも飴
……
食べて下さいね?」
「あぁ、もちろん。美味しく頂くよ」
「ふふ
……
。それと、帰ったら大切な人
……
キリエさんにもその飴を分けてあげてね?きっと、凄く幸せになれるから
……
凄く喜んでくれるから
……
」
そう言うと少女は持ってきたワゴンを引きながら、ネロの部屋を後にした。
そして、部屋に沈黙が訪れる。
今回の依頼は、肉体よりも精神疲労の方が多かったネロだったが、少女に淹れてもらったハーブティのお陰か、心身共にとてもリラックスした状態でいた。
あんなに可愛らしい女の子と二人きりで、ゆっくり話をするなんていつぶりだろうか。
もちろん、自分にはキリエがいるが、もし何かの縁で少女と出会っていたら、自分だって恋に落ちていたかもしれない。
「ハハ
……
こんな事、誰にも言えねぇ」
ネロはそう呟くとベッドから立ち上がり、部屋に備え付けてある浴室へと向かった。
「さてと、シャワーでも浴びて、ゆっくり休もう
……
」
(今夜はいい夢が見れそうだ)
ーーーーーーーーーー
次の日、ネロは朝食を済ませると、早々に帰る支度をしてホテルを後にした。
今は船に乗っており、海風に揺られながら行き先を眺めていた。
「今回は依頼の報酬よりも、いい物をたくさんもらったな
……
」
ネロは帰る前、玄関まで見送りに来てくれた少女に礼を言い、硬く握手を交わした事を思い出していた。
「それにしても、世の中には素敵な女性がまだまだいるもんだな
……
」
あの日の自分とキリエのようにまだまだ幼い面影を残す少女ではあったが、ネロにとってほんの少し心の隙間を埋めてくれた、温かくて大きな存在であったことは確かだった。
帰ったら、お土産にもらった飴の話も含め、キリエに少女の話をして上げようと思った。
しかし、夜にホテルの部屋で年頃の少女と二人きりで居たことを話すのは、何処か気が引けた。
「キリエには
……
内緒にしないとな」
いや、やはり言うべきだ。
小さな街で出会った少女から貰った幸せを、自分の大切な人へと分けてあげたい。
ネロは少女から貰った飴を頬張りながら、大好きな彼女に一刻も早く会える事を願うばかりであった。
END
(あ、お兄さんに一つ言い忘れてたけど、その飴ね、願い事を心の中で唱えながら味わうと叶う
……
って言われてるの。私の彼の街で、人気のおまじない
……
なんてね)
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