癒羽琉(ユウル)/由羽(ユウ)
2018-01-30 19:48:16
5087文字
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花と共に誓う

時系列はDMC4から10年後設定にした(最初は7年後だった)
ネロ視点で書いてます。
ネロがクレドに伝えたかった事をメインに書いてる……と思います。←


あの事件から十年の時が経った。
俺もキリエもすっかり成人しており、世間一般でいう大人というものになっていた。
そんな俺は今、若くしてだが十年前に崩壊した魔剣教団の新たな騎士長となっており、生意気で命令違反をしていたあの頃とは大分変わった。
むしろ、俺みたいに命令違反するような奴に頭を抱える立場となっていた。
きっと今の俺みたいに……いや、それ以上にクレドは俺に対して頭を抱えていただろうな。
その事を思うと、若気の至りとはいえ、今更ながら俺はクレドに申し訳なくなった。
「まぁ、謝ろうにも……もう遅いけどな」
俺はそう呟くと、部下達の報告書に目を通し、それをある程度読み終わったあと机にしまった。
それにしても、騎士長の仕事とは面倒な物だ。
下の立場でいるうちは、適当に訓練をして、悪魔が出没すればそれを退治して、上の者に報告書を提出する。大抵それで終わりだ。
しかし、騎士長となった今、戦闘力が高い俺は部下達を鍛えたり、任務を下したり、相手が自分より年下だろうと年上だろうと、時には叱りつけたりしなければならない。
そして、部下達から提出された任務の報告書にサインをしたりなんだりと、面倒な仕事が一気に増えてしまった。 (その変わり、収入はそこそこいいが)

「さてと、今日の俺の仕事は終わり」
仕事を終えた俺は椅子から立ち上がると、教団の服を脱ぎ捨てて私服へと着替え始めた。
それにしても、教団の服は相変わらず着馴れない。
俺が騎士長に就任してからは、魔剣祭や行事以外は動きやすくて戦闘に向く服装ならある程度自由にしてもいいという決まりにしたが、どうも周りが余りにも真面目な奴の集まりで、皆して毎日のように教団の服を身に纏っていた。
「ハァ……。昔から浮くのは馴れているけど、今は騎士長って立場だからな……
そう思うと、俺一人だけ私服で過ごすのもどこか気が引けた。
人から慕われなければいけない立場という以上、まずは見た目からということだろうか。
「誰か昔の俺みたいに、協調性に欠けてる奴でもいないかな……なんて」
そう呟いたあと、俺は手元の時計へと目を向けた。
時刻は十七時を過ぎた頃。
……余り遅くならないうちに、行くか」
俺は着替え終わったあと、騎士長の部屋を足早に出ていった。

今日は、クレドの命日だ。



ーーーーーーーーーーーー



騎士長の部屋を出て、俺は教団本部をある程度見回し、まだ訓練等で残っている部下達に軽く声をかけてから、教団本部を後にした。
向かう場所は、クレドのお墓だ。
途中、俺は花屋で花を買った。
真っ白のバラの花束を。
それを選んだ理由は特になく、何となく目についたからだった。
花屋の店主に花束を梱包してもらっている時に、白いバラの花言葉を俺は教わった。

“純潔”
“深い尊敬”
“約束を守る”
主に有名なのはこの辺りらしい。

「“深い尊敬”……
俺は昔、もちろん今もだが、ああ見えてクレドのことを尊敬していた。
いつもしかめっ面で真面目すぎるせいか、クレドに対して怖い印象を持つ人達が多かったが、クレドは俺やキリエの事をいつも気にかけており、クレドとキリエの両親が亡くなってからは、特に俺達の面倒をよく見てくれた。根は物凄く優しい人だった。正に誠実な人間。
今だから言えるが、俺にとって頼りになる兄貴だった。

ちなみに、白いバラの蕾には
“恋をするには若すぎる”
という意味があるそうだ。
俺は花屋の店主からその事を聞くと、昔の自分とキリエを思い浮かべてしまった。
穢れを知らない純白な少女だった頃のキリエが愛くるしい。
まだ、姉弟のような友人のような、恋人のような曖昧な関係をしていた頃が懐かしい。
しかし、そんな白いバラの蕾のような時期もあっという間に終わり、今は綺麗に咲き誇ったところであろう。

「そういえば、白いバラには“私はあなたにふさわしい”って意味もあるって言ってたな……
まるで、プロポーズのような言葉だ。
少し自信過剰な気もするが。
……この前キリエにも白いバラの花束をあげたけど、丁度よかったかもな」



ーーーーーーーーーー



気が付けば、黙々と歩いていた俺の足はクレドの墓の前へと辿り着いていた。
日中にキリエが来たのだろうか、墓の周りは綺麗に掃除されており、花も飾られていた。
「クレド……久しぶり」
俺はクレドの墓に一言話しかけたあと、買ってきた花束をそっと置いた。
……あまり会いに来れなくて、ごめんな」
仕事の都合上、なかなかクレドの墓参りに来れない俺は、せめて命日だけでも来るようにはしていた。
あの日、俺もキリエも、クレドの最後を看取っていないからこそだった。
クレドが姿形、何も残らないまま消えてしまったことは想像ついていた。
何せ、クレドは……

……

いや、過去の過ちを責めるのはよそう。
しかも、亡き者に対して何て尚更だ。

今日、俺がこの場所に来た理由は、クレドの墓参りという理由だけではなかった。
クレドに報告したいことがあったからだった。
俺は本題に移ろうと思い、軽く深呼吸をしたあと、クレドのお墓の正面へと立った。
「なぁクレド、信じられないかもしれないけど、俺……教団の騎士長に就任したんだぜ」
もしクレドが生きていたら、実力はどうあれ、俺はずっとクレドの部下としていたであろう。
何せ、騎士長なんて面倒な役職に俺は就きたいと思わなかった。
それなら何故、騎士長になったのか。
単純に、他に騎士長に向いている人材が俺以外に検討つかなかったからという理由であった。
「でも、もしクレドが生きていたら、俺……クレドから騎士長の就任式して貰いたかったな」
俺がそう言うと、冷たい風が頬を撫でるように吹き始めた。
木々達も、ザワザワと騒ぎ始める。
「騎士長って、大変なんだな。部下達をまとめなきゃならないし。部下達が何かミスをすれば、俺が責任を負うこともあるんだぜ。全く、困ったものだ……
しかし、そんな状況をそこまで嫌がっていない自分がいる事を実感すると、俺は空を仰いで力なく笑った。
少なからず俺は今、部下達のことを可愛がっている。
……俺も、まだクレドの部下だった時さ、クレドに迷惑かけて、我が儘言って、たくさん困らせたよな。それはもう、呆れるくらいに……
俺は昔の自分と、そんな俺に呆れ顔を向けているクレドの姿が脳裏に思い浮かんだ。
考えてみれば、俺が教団の一員となった日からクレドはいつも俺を厳しい瞳で見つめていた。
それは、自宅にいる時も。
教団の一員となったからには、私生活から態度や言動を見直して欲しいということだったんだなと、今になって俺は気付いた。
しかし、当時まだ十代の俺にとってはそんなのただのお節介というか、正直うざいだけだった。
正に、反抗期真っ盛り。
「あの頃の事思い出すと、俺は何て馬鹿だったんだろう……ガキだったんだろうって、思うよ本当……。だけど……
俺はそう言うと、クレドの墓の前に静かに跪いた 。
「最後に一つだけ、俺の我が儘を聞いて下さい……
そして瞳を閉じると、自身の胸にそっと手をあてた。
同時に風が吹き止み、木々達も動きを止め、辺りに静寂が訪れた。




……





(貴方の大切な妹、キリエと結婚させて下さい。
まだ騎士長としても、人としても未熟なのは承知しています。
だけど、俺には彼女が必要です。彼女も俺を必要としてくれています。
それに、彼女を守れるのは俺しかいません。
貴方が命に変えても守りたかった尊い存在を、俺に守らせて下さい。
俺は、生涯彼女と共に生きる自信があります。貴方の分まで。
必ず彼女を幸せにします。
だから彼女を、貴方の大切な妹、キリエを俺に下さい……)



……



俺がクレドに告げ終わったと同時に、先程ピタリと止んだ風が再び吹き始めた。
それが、俺とキリエの事を承認してくれたという意味なのか、それとも、「お前たちにはまだ早い」という反対の意味なのかは分からなかったが、どちらにせよ俺の決意は変わらなかった。
何せ今日の目的は、俺とキリエの事をクレドに報告するという事だったから。
もしクレドが生きていて反対しようにも、俺は無理矢理にでもキリエを連れ出して好き勝手やっていたかもしれない。
「まぁ、そんな事したら、クレドどころか街の住民たちからも恨まれそうだけどな」
俺はその光景を思い浮かべると、苦笑いした。
「実はこの前、やっとキリエにプロポーズしてさ……。まぁ、OKの返事は貰ったんだけど、この事、クレドにもちゃんと報告したくて……
クレドから返事がこないのはもちろん承知しているが、俺の中できちんとけじめをつけたかった。
「キリエのやつ、満面の笑みで「やっと、ネロのこと“旦那さん”って、皆に紹介出来るわ」って……ハハ。俺、何か可笑しいというか、恥ずかしくて……
今は亡きクレドの前だからこそ、俺はクレドに堂々とのろけ話をした。
こんなこと、誰にも言えやしない。
ましてや、ダンテに何か言ったり知られたりしたら、それこそ恥ずかしくて生きていけやしない。
絶対、言いふらされる。
「まぁ……そのうちダンテにもちゃんと報告しに行こうとは思ってるよ。何せアイツは……唯一の血族だからな」
それに、クレドを最後まで看取ってくれた。
どういう状況で看取ってくれたかは未だに知らないが、ダンテの事だ。きっと、死ぬ間際のクレドとさえ、いつも通りの軽いノリで会話したに違いない。
しかし、それは表面上の話で、心の中ではクレドと俺とキリエの事を想ってくれていた。
クレドから託された俺とキリエへの想いを、ダンテはきちんと受け継いでくれた。
俺は改めてその事を実感すると、瞳の奥が熱くなった。
少しでも気を緩めてしまえば、今にも涙が溢れだしそうになった。
しかし、今はそれをグッと堪える。
俺が次に泣くのは、キリエと式を挙げる日にしたい。

……さてと、そろそろ行くか」
俺は、辺りが大分暗くなった事を確認すると、クレドの墓に向かって軽く頭を下げ、そっと背を向けた。
「じゃあなクレド。また近いうちに来れたら来るよ……
今度はキリエを連れて。
……あ、そうだ。言い忘れてたけど、キリエとは婚前交渉も終えてます……なんてな」
俺はそう言うと、クレドの墓に背を向けたまま、その場から逃げるように去っていった。
どこか後ろめたい気持ちのせいもあったが、単純に恥ずかしかったからだった。
「ハハ……俺もまだまだ青臭ぇや……
初々しさと言うものはもうなくなってしまったが、それでも彼女、キリエを抱く度に愛しさと切なさが身体の奥から込み上げてくる。
何年経っても。
しかし、結婚したらこの気持ちに変化が訪れそうな気がする。
もちろんいい意味で。
俺達はやっと、本当の家族になれるんだ。
この先、何が起こるか分からないけれど、楽しいときも苦しいときも互いに支え合えるような家庭を築いていきたい。
……早く帰らねぇと」
未来の奥さんが待ってるから……
何てな。



ーーーーーーーーー



帰宅したのは十九時を過ぎた頃だった。
家に入ろうとした時、俺は玄関の扉の横に小包が置いてある事に気付いた。
……?届け物か?それなら何で玄関先に……
家にはキリエがいるだろうし、こんな所に小包が置いてあるのはどうも不自然だった。
俺は、家の中に入る前にその小包の中身を確かめようと、その場で小包を開けていった。
シンプルな白の包装紙をゆっくり剥がし終ると、中には更に白い箱が入っていた。
俺は箱の蓋に手をかけると、中身を確認した。
……これは……
箱の中には、青い花が敷き詰められるように入っていた。
俺はその花を見たことがあった。
以前、たまたまダンテの事務所へと立ち寄ったとき、机の上に飾ってあったのを覚えている。
「確か……“ブルースター”……だったっけ……
花言葉は、確か……
……


……



……ったく、アイツは何でもお見通しかよ」
俺は送り主が分からないブルースターの花が入った箱を抱えると、足早に家の中へと入って行った。
もちろん、この花を彼女にも分けるために。



End



(お帰りなさいネロ。……その花どうしたの?)
(ただいま。……玄関に置いてあった。お届け物だよ)
(誰から?)
(……そのうち分かるさ)