癒羽琉(ユウル)/由羽(ユウ)
2017-06-16 00:21:16
3018文字
Public
 

大切な温もり②

ほとんどダンテとネロの会話。
ネロにとってダンテはありがたい存在だよね。

 
何回か電話のコール音が家中に鳴り響いた頃、ネロはようやくリビングへと辿り着き、渋々と受話器を手に取った。

……はい」
先程、気持ちが落ちてしまったせいなのか、電話をかけてきた相手にも分かるくらい暗い声色でネロは電話を出ると、天井を仰ぎながら軽く溜め息をついた。

……ん?もしもし?俺だけど……
……
どこか聞き覚えのある声に、ネロは思わず固まってしまった。
『よぉ。元気か?』
……
……おーい』
……お前か」
『そうだよ。俺だよ。』

電話の相手は想像通りというか、丁度よかったというか、やはりダンテだった。
しかも、当たり前だが、今のネロの気分とは正反対で、相変わらず呑気な雰囲気が電話越しでも漂っていた。
そんなダンテの調子にネロは大きく溜め息をつくと、どこか嫌々になりつつもダンテに話し掛けた。
「ダンテ、あのさ、頂いた電話で悪いんだけどさ、ちょっと頼みがあって……
『ん?』
「今日の依頼なんだけど、俺の代わりに行けるか?」
『うーん、別に構わないが……。報酬は俺が貰うぞ』
「あぁ、別にいいよ。そのつもりで頼んでるし」
『そりゃ有難い』
ダンテはそう言うと、どこか嬉しそうにハハッと笑った。
そんなダンテの様子に、しょうがないとはいえやはり報酬を全て取られてしまう事に、ネロはどこかやるせない気持ちになったが、今はそれをグッと堪えるように唇を噛み締めた。
『それにしても、お前がこんな事わざわざ頼んでくるなんてな。あの嬢ちゃん絡みの事だろ』
ダンテにそう言われると、ネロはやはりバレたかと言うように、肩を軽く落とした。
「うん……まぁな。ちょっと、キリエがかなり体調崩しちゃったみたいでさ……
『ん?風邪か?』
「いや、風邪ではないんだけど」
……じゃあ、オメデタか』
……!?な、何言ってんだよ……!違う……!」
『だったら何だって言うんだよ』
「っ…………っそれは……その……
別に恥ずかしがる事ではないかもしれないが、世間一般的にどこかデリケートな話題に、ネロは言うのが恥ずかしくなり、口をモゴモゴと動かした。
そんなネロの様子を他所に、ダンテはキリエの体調不良の原因をわざとらしくボソボソと呟きながら考えていた。
『うーん……風邪でもない、オメデタでもない、となると……
……お前、分かってるだろ」
『あー……成る程。そういうことか。いやぁ……女の子は大変だなぁ。毎月毎月……
「っ……。分かってるなら変に焦らしたりすんなよ……
『だって、お前の反応が面白くて』
……お前なぁ」
ダンテの言葉やからかいに、ネロは思わず殴りかかりたくなる衝動に襲われたが、それをグッと堪えると再び大きく溜め息をついた。
『ところで、嬢ちゃんは?』
「今は……部屋で寝てる」
『そっか。不謹慎だけど、大人しくしていてて羨ましいな』
「ん?」
ネロはどういう事だ?と疑問に思い、首を傾げた。
『レディなんかさ、かなーり機嫌悪くしてさ、俺に向かってカリーナ=アンでミサイル撃って来たぜ。しかも、事務所で』
……は?」
『で、そのまま久しぶりにミサイル乗り回したらさ、天井ぶっ壊してさ!ハハッ!』
……
『ということで、今回の報酬は天井の修理代で消える……ってことよ』
……
ダンテの話に、ネロは心の中で思い切り「くだらねぇ」と呟いた。
この際、声に出してダンテに向かって言ってもよかったが、あまりの戯言に付き合う気力も湧かず、ネロはまたしても大きく溜め息をついた。
「ところで、何でお前電話してきたんだよ。何か用事があったんじゃないのか……?」
『ん?別に』
……要するに、暇潰しか」
『あぁ』
……
『ハハッ……
……
……もしかして、ご機嫌ナナメか?』
……
ネロは本当に、これ以上ダンテの戯言に付き合うのが嫌になってしまい、一言も話す気がなくなっていた。
しかし、ただ単にダンテの戯言が嫌になっただけが理由ではなかった。
というのも、やはり、先程のキリエの事や、あの事件の時の様々な恐怖心に侵されてしまったことがあったせいか、いつもより気分が思うように乗らなかった。
そんなネロの様子をどこか悟ったのか、ダンテは電話越しにフッと一息つくと、ネロの様子を伺うように話し掛けた。
『おい、ネロ……
……ん」
『お前、何かあったか……?』
……いや、別に」
『嘘つけ。バレてないと思っているだろうが、鼻声というか、涙声だぞ、お前』
ダンテにそう言われたネロはハッとなり、受話器を持っていない方の手で自身の頬を未だに伝っていた滴を慌てて拭った。
『何だよネロ。泣いたのか?嬢ちゃんが心配で』
……っ!違う……!泣いて……ねぇよ…………っぅ……!」
『おいおい、落ち着け。そんなに具合悪そうにしていたのか?』
……
……ネロ?』
「っ……
ネロは、急に優しい口調になったダンテにどこか不意を突かれたような気分になり、再び瞳の奥がグッと熱くなるのを感じた。
そして、ダンテの問いに応えようと、声にならない声を上げながら電話越しに静かに頷いた。
……そっか』
……
『まぁ、心配になったり不安になったりする気持ちは分かるが、お前がそんなんでどうする。厳しいことを言うけど、お前がしっかりして、あの嬢ちゃんを支えてやらなきゃなんだからな」
……ああ。分かってるけど、やっぱりどこか苦しくて……
……
「何で、俺まで辛くなるんだろう……ってな……
そう言うと、ネロはどこか遠くを見つめるように力なく笑った。
そして、こんな情けない自分を笑えよと言うように、そのまま力なく笑い続けた。
しかし、ダンテはそんなネロの気持ちや様子を悟っても、決してからかう気持ちなんて生まれなかった。
むしろ、誰よりも人間らしいネロの感情にどこか安心したのか、口元を軽く緩ませた。
『要するに、優しい……って事だろ。お前が。大切な人のために、涙を流せるくらい』
……
『まぁ、それとは別に、とにかくしっかり気持ちを整えろ。お前まで落ち込んだりしていると、あの嬢ちゃんと共に気持ちが沈む一方だぞ。無理に元気になれとは言わないが……
ダンテにそう言われたネロは、何かに気付かされたかのように一瞬目を見開くと、ダンテに何か言いたげな感じで口をパクパクと動かしたが、思うように言葉や声が出なかった。
しかし、ダンテはネロが何を言いたがっているのかを何となく察したため、言いにくいなら無理に言わなくていいというように、電話越しに優しく微笑みかけた。
『とりあえず、嬢ちゃんもお前も、お大事にな』
「あぁ。頼むぜ……今日の依頼」
『別にいいってことよ。丁度、暇してたし』
ダンテは「じゃあな」と最後に一言呟くと、そのまま電話を切った。

……

そして、部屋には先程のダンテとの会話が嘘だったかのように、沈黙が訪れた。
……飯、作るか」
ネロは、未だに苦しい気持ちに侵されてつつ、それでもどこか安心感に満たされた事を実感すると、足早にキッチンへと向かって行った。
「キリエには、何作ってやろうかな……
そして、部屋で休んでいるであろう彼女のことを考えながら、手際よく料理を開始していった。

***



(ありがとう、ダンテ)




end