癒羽琉(ユウル)/由羽(ユウ)
2017-05-15 21:10:22
4947文字
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あなたの色になる③

浴室で過ごす2人の時間の続き。

あれからどれくらい時が経ったのだろう。
ダンテとレディは露になった肌を密着させながら、いまだに互いを強く抱き締め合っていた。
絶頂を迎えた身体は徐々に落ち着きを取り戻している二人だが、それでも尚、鼓動は高鳴り続け、ドクドクと強く脈打つ感覚を噛みしめ合っていた。

……
……

……


……クシュン」
そんな時、レディが小さくくしゃみをした。
いくら浴室とはいえ、何も身に纏っていないまま長い間そこで過ごしたせいか、身体が少しばかり冷えてしまったのだろう。
しかも、今はシャワーも止めてあるため、尚更その空間は寒くなるばかりであった。
その様子に気付いたダンテはどこか物足りなさそうな表情を浮かべながらもゆっくりと立ち上がり、再びシャワーの蛇口を捻った。
そして、レディの両脇を抱えるように彼女を立たしてあげると、シャワーから溢れ出ている熱いお湯を互い浴びた。
「大丈夫?熱くないか?」
……うん。調度いい……
それならよかったと言うように、ダンテはフッと微笑んだ。そして、彼女の後ろに回り込むと、棚にあるシャンプーのノズルへと手を伸ばした。
「ダンテ……?」
そんなダンテの行動に疑問を抱いたのか、レディは正面にある鏡越しに彼を見つめた。
「ほら、せっかくだし、洗ってやるよ」
……ぇ」
「髪の毛」
「うん。……え?!」
一瞬、ダンテの言ったことに頷いたレディ。しかし、その意味を理解すると、驚きのあまりダンテの方へと振り返ろうとした。それを阻止するように、ダンテは彼女の頭をガシッと掴むと、目の前にある鏡と向かい合わせた。
「ちょっと、ダンテ……
「いいから。そうしないと洗えないだろ?」
「でも……
「っ……!あぁ……もぅ……
じれったい……と今すぐ言いたいのをグッと堪え、ダンテは半ば強引にレディの髪の毛を濡らし、シャンプーを2プッシュほど片手に出した。
それを両手に軽く伸ばすと、髪の毛の隙間からレディの頭皮へと指を忍びこませた。そして、彼女の頭皮を揉み込むように指をゆっくりと動かし始めた。それが心地よかったのか、レディは再び甘い感覚に溺れそうになった。
……ダンテったら、もぅ……
「ハハ……。まぁ、いいじゃねぇか……今日くらい」
「今日くらいって……。どうせ、「やらせろ」とか言うんでしょ?」
「え?させてくれんの?」
……ぇ?」
「だから、風呂場でセック……
ダンテがそう言いかけた瞬間、レディは振り向かないままダンテの腹へと肘鉄を食らわせた。
それが案外強かったのか、ダンテは声にならない呻き声をあげながら肘鉄を食らった場所を押さえ込んだ。
「っ……痛ぇ……
「バカなこと言ってるからでしょ!大体、あんなのシたうちに入るかどうか……
「え?何?物足りないって?」
……!違う!」
「よかったくせに」
……っ!ああもう!いいから!っ……!早く洗うなら洗って!」
「はいはい」
まだ若干肘鉄を食らった所に痛みが残るダンテたが、今にも激しく彼女が怒りそうなことを察すると、彼女の髪の毛を洗う事を再開した。
「ハァ……まったく……
突然何を言い出すのやらと思い、レディは大きくため息をついた。
一方ダンテは、そんな彼女を気にする素ぶりを見せず、彼女の髪の毛を洗い続けた。
「それにしてもお前、女にしては髪の毛短い方だよな……
ダンテはざんばらに切られている彼女の毛先を指で摘まむと、そう呟いた。それを聞いたレディは、軽く俯きながらダンテに話かけた。
……ダンテは、長い方が好き?」
……?何で?」
「ううん。伸ばしてみようかなって……
そう言うと、レディも自身の髪の毛先を軽く摘まんだ。
いくら職業上邪魔になるとはいえ、もう少し女らしくしたいなと思い、短い髪の毛の自分を鏡越しに見てレディは軽くため息をついた。
そんな彼女の様子を見たダンテは、彼女の頬に軽く口付けると、優しく微笑みかけた。
「いや。お前はそのままでいいよ。可愛いし」
「ぇ……
「それに、短い方が洗いやすいし」
「それだけ……?」
「違えよ。お前は短い方が可愛いって言ってるだろ?」
……ぇ」
「うなじもよく見えるし……
そう言うと、ダンテはレディのうなじに唇を落とした。
……ぁ」
「キスマークつけても隠せないから見せつけられるし」
そして、そのまま彼女の肌に吸い付いた。
……ゃ!ダンテ……!」
「ハハ……。歯止めがきかなくなる前にやめとかねぇとな」
……もぅ」
そんな会話などをしているうちに、ダンテはレディの髪の毛を洗い終わったのか、シャワーを手に持つと泡のついている彼女の髪の毛を流し始めた。
「ダンテ、あの……
「ん?」
……目に泡入れたら、ぶっ殺すわよ」
「あー……地味に痛いよな。泡が入ると」
「いいから、早く流してよ……
「はいはい。分かったから、目閉じてろ……
ダンテがそう言うと、レディはゆっくりと目を閉じていき、ダンテが自分の髪の毛を洗い流し終わるまでジッとしていた。
暫くすると、ダンテがレディの髪の毛を洗い流し終わったのか、シャワーの蛇口を捻る音が聞こえた。
「ほら、終わったぞ」
「ん……
またしてもどこか心地良くなってしまったのか、レディは眠たくなってしまった瞼をゆっくりと開いていった。
まだどこかウトウトとしている彼女見たダンテは、少しばかり怪しげな表情を見せると、彼女の耳元でそっと囁いた。
「ついでに、身体も洗ってやろうか……?」
耳元で言われたレディは、背中からゾクッとする感覚に襲われたが、それを振り払うように一瞬瞳をギュッと閉じたあと、再びダンテの腹に肘鉄を食らわせた。
「っ……!痛ぇ……
……!だから!アンタってやつはどうして……!っ……!もう……!」
レディは恥ずかしい気持ちを抑えきれなくなったのか、両手で自身の顔を覆うと、ダンテの横をすり抜けるように浴室を出て行った。
そんな彼女の様子を見て、ダンテはどこか可笑しそうに、だけど愛しそうに微笑むと、彼女の後を追うように自身も浴室を出て行った。

***

ダンテが浴室を出た時、レディは既にバスタオルを身に巻いており、鏡を見ながら髪の毛をタオルでゴシゴシと拭いているところだった。
……ハァ」
そんな彼女の様子を見て、ダンテはどこか残念そうに溜め息をついた。
「何よ……
「もう少しあのままのんびりしたかったなぁって……
ダンテはそう言うと、自身も腰にバスタオルを巻き付けた。
「っ……!バカ……!だったらアンタだけ一生裸でいればいいじゃない」
「一人じゃつまんねぇだろ。色々と」
……っ!……別にいいじゃない。いつも裸でいるようなものでしょ……
「何だよ、それ」
「そのままの意味に決まってるでしょ。あーもう、化粧もすっかり取れちゃったわ……
レディは目の前にある鏡で自身の顔をジッ見つめると、大きく溜め息をついた。せっかくダンテがメイクしてくれたのに……と、心の中で呟きながら。
そんな彼女の様子を見てダンテはフッと微笑みかけると、後ろから優しく包み込むように彼女の事を抱き締め、耳元に唇を這わせるように囁いた。
「また、俺がしてやるよ」
そんなダンテの仕草に、またしてもレディはゾクッとする感覚に襲われた。
「っ……!ぁ……だから何で、アンタは耳元でわざわざ話すのよ……
「「お前が気持ち良さそうに感じるから」って言ったら……
怒る?と言う前に、ダンテは再び彼女の肘鉄をくらった。
……それ以上変なことしたり言ったりしたら、今度は鉛玉で撃ち抜くわよ」
……悪ぃ」
レディから放たれているどす黒いオーラを感じたのか、ダンテも少しばかり調子に乗ってしまったことを反省しつつ、ゆっくりと彼女から離れていった。
そして、戸棚からドライヤーを取り出すと、再び彼女の後ろへと立った。
「ダンテ……?」
まさか、髪の毛を乾かしてくれるのだろうかと思ったレディ。その予感は見事に的中し、ダンテはドライヤーのコードをコンセントに差しスイッチを入れると、彼女の髪の毛を乾かし始めた。
……
しかし、先ほどから彼に背後を取られては敏感な場所を攻められているレディ。
そのことを警戒したのか、レディは少しばかり火照った顔で鏡越しにダンテを睨むように見つめた。
その視線に気付いたのか、ダンテは軽くため息をつくと、「もう何もしねぇよ」と一言彼女に告げた。
そのことに安心したのか、レディはホッと胸を撫で下ろすと、ダンテにそのまま髪の毛を乾かしてもらうことにした。
ドライヤーの熱風の温度にどこか心地好くなったのか、レディは少しウトウトし始めると、ゆっくりと瞳を閉じていった。
その時、ドライヤーの風で漂ってきた甘い香りがフワッとレディの鼻をよぎった。その香りに覚えがあったのか、レディは閉じかけた瞳をゆっくり開いた。
「この香り……
「ん?」
「ストロベリー……
「ん?何?」
ダンテはレディの声が聞こえなかったのか、ドライヤーのスイッチを切ると彼女の顔を横から覗き込んだ。
「ストロベリーサンデーの、香りがする……
「ストロベリーサンデー?確かに、ストロベリーの香りのシャンプーだけど……
何故にサンデーなんだ?とダンテは疑問に思い、レディの髪の毛を優しく摘まむと、鼻に添えて香りを嗅いだ。
「バニラアイスの匂いでもしたか……?」
「分からないけど、何か、ストロベリー単体っていうより、ダンテがいつも食べているストロベリーサンデーの香りっぽい?」
「うーん……。ストロベリーサンデーねぇ……
バニラアイスじゃなければ、生クリームの匂いか?と思ったダンテ。
……ぁ」
しかし、それと同時にあることを思い出し、焦りからか目をキョロキョロと泳がせた。
(もしかして、白い液体のことか……俺の)
さすがに、このことを言ってしまえば今度こそ殺されると思ったダンテは、レディにあたふたしている様子を悟られないように自身の頭をタオルでゴシゴシと拭き始めた。
「それにしても、アンタってもっと爽やかな香りのシャンプー使ってると思ってた」
「何で?」
幸いなことに、とんでもない思い付きをしてしまったことはレディにバレてなく、ダンテはホッと胸を撫で下ろした。
「だって、男の人って大抵そうじゃない?」
「お前の親父も?」
……。あの人は、シャンプー使うほど髪の毛ないわよ……
「ぁ……
……
……
……
……っ」
……。ふふ……
「っく……!アハハ!笑わすなよ」
「アンタが言い出したくせに」
「ハハ、そうだな」
そして、二人はそのまま暫く笑い合った後、衣服を身に纏い始めた。
「あ、もうこんな時間……
「ん?」
そんな時、ふと洗面所の時計に目をやると、時刻は十八時を過ぎた頃だった。
「お前このあとどうする?俺ん家で飯でも食ってくか?」
「そうね。今から帰っても家に何もないし。でも、アンタのことだから、どーせ宅配ピザでしょ」
「あぁ」
……
相変わらずなダンテの食生活に、レディはため息をついた。しかし、そんな彼を愛しく思う気持ちからなのか、直ぐに優しい表情を浮かべるとダンテに微笑みかけた。
「まぁいいわ。今日は私が奢るから、ピザにしましょ?」
「え、いいのか?」
「うん。ダンテが一緒にいるなら何でも嬉しいから。ほら、早く電話しなくちゃ、ピザ来るの遅くなっちゃうわよ」
そう言うとレディは洗面所の扉を開け、足早にダンテの事務所へと戻って行った。

***

……
一方、その場に一人残されたダンテ。
今さっき、レディが言ったことをジッと考え込むように立ち竦んでいた。
(俺が一緒にいるならなんでも嬉しいって……どういう殺し文句だよ……)
そう心の中で呟くと、レディが先に戻った事務所へと、自身も向かって行った。

(今夜は帰さねぇ……)



***


(その後……?特に何もなかったわ。二人で夕飯食べてそれから……)



……



(ごめん。やっぱり秘密。)



END