癒羽琉(ユウル)/由羽(ユウ)
2017-05-10 21:10:19
10203文字
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あなたの色になる①

3ダンレディです。付き合い始め辺りかな?
珍しくR指定じゃないよ!←
まぁ、もしかしたら番外編で…(おっと、ここから先はry)

ある日の午後。悪魔退治の依頼がないレディは暇潰しにと、ダンテの事務所兼自宅へと遊びに来ていた。
もちろん、ダンテの方も相変わらず暇をもて余しており、急に訪れてきたレディのことを快く思った。
……
……
……
……
(静かね……
久しぶりに会ったというのに二人して特に会話をすることはなく、ダンテは事務所の椅子に腰をかけて雑誌を読み、レディはソファに寝転んでいた。
話しかけようにも、特に話題がない。そう思ったレディは、ダンテの様子を横目でチラチラとうかがいつつ、天井を仰ぐようにソファでゴロゴロと過ごしていた。

それから暫くすると、ダンテが雑誌をめくるページの音がピタリと止んだ。
ダンテは読み終わった雑誌をパタリと閉じると事務所のデスクの上に置き、ソファで横になっているレディのもとへと近付いた。
「ん?ダンテ?」
「お前さ、いくら何でも人の家で寛ぎだろ」
ダンテはそう言うと、ソファーに寝転んでいるレディの顔を覗き込むように、自身の唇を近付けていった。
「え、ちょっと……!」
しかし、レディはその唇を拒むようにソファに置いてあったクッションでダンテの顔をグッと押し返した。
「もう……!いきなりはやめてっていつも……!」
「だって、ちゃんとしようとするとお前、いつも逃げるじゃん」
今回も逃げられたけどな……とダンテはどこか残念そうな表情を浮かべ、彼女に押し付けられたクッションを片手で弄んだあと、ソファに置き直した。
「さすが、デビルハンター……ってか?何に対しても油断大敵。強くて人間離れしてる。キスする隙さえも作らない」
「それって、褒めてるの?というか、アンタに言われたくないんだけど」
「俺は人間離れしてるというか、それ以前に半分人間じゃねぇし」
「アンタねぇ……
何都合のいいときだけ半分悪魔であることに開き直ってるのよ……とレディは思ったが、これ以上ダンテの戯言に付き合うのが面倒になり、軽くため息をつくと横になっていた体を起こしてソファに座り直した。
(もう。せっかく久しぶりに会って、二人きりでいるのに……
女性の扱いに慣れているダンテだが、乙女心を理解する能力は欠けているといってもいいかもしれない。レディはそう思うと、再びため息をついた。今度はダンテにも聞こえるように大きく、わざとらしく。
もちろん、そんなふうにため息をつかれてしまえばダンテが気付かないはずがなく、ダンテ自身も大きくため息をつくとレディの横にゆっくりと腰掛けた。
……何だよ。今日はご機嫌ナナメ?」
そう言って隣にいる彼女の顔を覗き込むダンテ。そして、先ほどと同じように再び唇を近付けていった。
ダンテのその行為に気付いたレディは、またしても咄嗟にダンテの顔をグッと押し返した。
「ぅぐ……
しかも、今度は素手で顔面を軽く握られたせいか、ダンテは口ごもるように間抜けな声をあげてしまった。
「だから!いきなりはやめてって……!」
「っ……。てか、ガード固すぎだろお前……
「だって……
「まぁ、お前らしいけど」
ダンテはそう言うと後ろに仰け反るようにソファの背もたれに寄りかかり、天井を仰いだ。そして再び、大きくため息をついた。
そんなダンテの様子を、レディは横目にうかがった。
ダンテの積極的な行為が嫌な訳ではないが、まだ心の準備が出来ていない彼女は、少しばかり彼の行動には頭を悩ませていた。
思わず「ため息をつきたいのはこっちの方だ……」と言いたくなってしまい唇をモゴモゴと動かすが、こうなってしまえばほっといてしまった方がいいだろうと思い、レディは目の前のテーブルに置かれていた雑誌を手に取ると、暇潰しにとページをめくり始めた。
そしてそのまま、レディはその雑誌を読むことに没頭した。
……
一方ダンテは、今現在レディに放置されている状況にもどかしさを感じていた。
しかし、先ほど自分もレディをほったらかしにして雑誌を読んでいたため、レディにしつこく絡みにいける立場ではない。そうは思ったが、やはりジッと何もせずにいることは彼には出来ずに、雑誌に目を向けている彼女の様子をうかがいつつ、話しかけた。
「なぁ、暇なんだけど……
「アンタも、何か読めばいいじゃない」
「全部読み終わっちゃった」
……
「なぁ……
……
「レディ~?」
……
「おい……
……
「レディ……
……
何度話しかけても、レディはダンテの呼びかけに一切見向きもしなかった。
別に、ダンテのしつこさに嫌気が差している訳ではなく、ただ単純に今呼んでいる雑誌がなかなか面白く、集中して読みたいということだった。
しかし、ダンテにとってはどんな理由であれ無視され続けていることに変わりはなく、段々と寂しい気持ちが心の奥で少しずつ湧きあがってしまった。
……ハァ」
その想いが我慢できなかったのか、ダンテはまたしても大きくため息をついてしまった。
そんなダンテの様子に気付いたのか、レディは読みかけの雑誌を閉じるとテーブルの上にそっと置き戻した。そして、今度はレディがダンテの顔を覗き込むように近付き、人差し指でダンテの額を軽く突ついた。
「もう、そんなにため息ばっかりついてちゃ、幸せが逃げていくわよ」
「だってお前が……
「もう、悪かったわよ……。でも、私だってさっきは放置されていたのよ」
……悪かったよ」
「まぁ、別にいいけど……。アンタらしいし」
そう言うとレディは、近付けていた顔をダンテからそっと離し、再びソファーに座り直した。
「?」
そんな時、テーブルにダンテの私生活の中では見慣れない物が置いてあるのが視界に入り、レディは思わずそれをジッと見つめた。
「ねぇ、あれって……
レディはダンテに尋ねるように、テーブルの上に置かれている物を指差した。
「ん?あぁ、これ……?」
それは、白地の小さめの紙袋で、可愛らしいコスメのイラストが描かれている物だった。
ダンテはその紙袋を手に取ると、中身をガサゴソと漁り始めた。
中から出てきた物はラメがたっぷりのホワイトシルバーのアイシャドウ。そして、ピンクのチーク、ピンクベージュの口紅とローズレッドの口紅の計四点だった。
まさか、ダンテが化粧品を持っているとは思ってなかったレディは、少しばかり驚いてしまい目を見開いた。
「え、何……?アンタって化粧するの?」
……は?」
しかし、驚いたのはダンテも同様。
まさか、レディからそんなことを聞かれるとは思わず、先ほどとは違うため息が思い切り漏れてしまった。
素直な性格の彼女だが、いくら何でも天然すぎる。そう思ったダンテはレディの頭をコツンと軽く拳で突ついた。
「アホか。貰ったんだよ」
「へへ、ごめん。でも、何で化粧品?」
「この前、依頼してきた客が夫婦で経営している化粧品屋でさ、そのお礼に。まぁ、もちろん別に報酬も貰ったけどさ。数量限定の人気商品だから、良ければ貰ってくれ……ってさ。」
「ふーん。でも、いくら化粧品屋だとしても、男のアンタに女物のメイク用品を渡すだなんてね」
レディはそう言うと、ダンテの手のひらに置いてあるローズレッドの口紅を手に取った。そして、口紅の蓋を開けて実際の色味を確かめるように、自身の手の甲に軽く塗った。
「へぇ……。派手な色味だと思ったけど、塗ってみると案外落ち着いている色味なのね。意外と使いやすそう」
「よければ、いる?俺が持っていてもしょうがねぇし」
「え、いいの?」
「あぁ。というか、その化粧品屋の夫婦に言われたんだよ。「よければ、大切な人に使ってあげて」って。だから、やるよお前に。」
ダンテはそう言うと、どこか照れ臭そうに頭をかきながらレディから視線を反らした。
……え?」
一瞬、ダンテが何を言ったのか理解出来なかったレディ。しかし、ダンテから言われた言葉の意味を考え込んだあと、身体中が一気に熱くなるのを感じ、その火照る気持ちを誤魔化すように、レディもダンテから視線を反らした。
……ありがとう」
そして、照れながらもダンテに聞こえるか聞こえないかくらいの声で、お礼を言った。
普段、陽気で呑気で口が軽いくせに、ふとした拍子に女心を鷲掴みにするようなことを言うダンテ。もちろん、そんな彼の性格を分かっているレディだが、それでも不意に見せる彼の仕草や表情、そして、先ほど呟いたような言葉にはいつも鼓動が高鳴ってしまい、その度に彼への想いを実感してしまうのであった。
……。あ、そうだ……
そんな想いをどこか誤魔化すように、レディはダンテの手のひらに置いてある化粧品を指差すと、いまだに視線を反らしているダンテの顔を覗き込むように話しかけた。
「ねぇ、せっかくだし、ちょっとそれつけてみていい……?」
「ん?あ……これ?」
ダンテはそう言うとゆっくりとレディの方に振り向き、自身の手のひらにある化粧品を眺めた。
「そのホワイトシルバーのアイシャドウ、目元に少しつけるだけで華やかになりそうだし、使ってみたいなって……
「あぁ、いいぜ。ほら」
ダンテは、自身が持っていた残り三点の化粧品をレディに全て渡した。
レディはその化粧品を両手で受けとると、嬉しさから軽く微笑んだ。そして、ダンテから貰った化粧品を夢見る少女のような瞳で暫く眺めていた。
そんなレディの様子を見て、ダンテは素直に「可愛い」と思った。
普段、デビルハンターを生業とし、悪魔たちを華麗に倒していく彼女。そんな彼女がこういう時に見せる女の子らしい仕草や表情に、ダンテはいつも口元が緩んでしまっていた。
「あ……そういえば今、鏡持ってない。どうしよう……
「鏡?」
それなら洗面所に……と言おうとしたダンテ。しかし、あることを思い付いた。ダンテはレディが両手に持っている化粧品の中からホワイトシルバーのアイシャドウを手に取ると、彼女の顎をクイッと掴み、自分自身と向き合うようにした。
……ダンテ?」
そんなダンテの行動に疑問を抱くレディ。
ダンテはレディの様子うかがいつつ、手に持っているアイシャドウの蓋を開けると、指先にそのアイシャドウを付けた。
「なぁ、俺が塗ってやるよ。お前に。」
……えぇっ?!」
まさか、ダンテからそう言われると思っていなかったレディは、後ろに飛び跳ねるように驚いた。
「おい、動くなって」
そんなレディをダンテは自分の元に引き寄せるように、再び顎をクイッと掴むとそのまま固定した。
「ちょっと!ダンテ……!」
「いいから。ほら、ジッとしてないと上手く塗れないだろ?」
「でも……
「早く目、閉じろって」
「ぅぅ……
ダンテにそう言われたレディは、不安と恥ずかしい気持ちをグッと堪えつつ、ダンテに言われるがままに目を閉じた。
「ダンテ、あの……とりあえず、目元にほんの少しでいいからのせてってみて……。アイシャドウ、結構ラメ多めだから、あんまり付けすぎると……
「はいはい。任せろ」
ダンテは、人生の中で一番というくらいに力を抜いた指先で、レディの右の目元にそっと触れた。
「っ……!」
その瞬間、レディはダンテの指先が目元に触れたことに驚いたのか、一瞬だけキュッと目元に力を入れた。
目を閉じているせいか、今ダンテがどんな表情をしていて次は何をしようとしているのか分からないため、尚更彼の行動に敏感になるレディ。
しかし、余り目元に力を入れてしまえば、ダンテが自分自身にアイシャドウを塗りにくくなってしまうだろう。 そう思ったレディは、気持ちを落ち着かせるために軽く深呼吸をすると、そのままゆっくりと身体中の力を抜いていった。
一方ダンテは、レディが様々な不安や緊張感に襲われていることに対して気にもせず、彼女を自身の手で綺麗に仕上げることが楽しかった。
「うーん……とりあえずこんな感じか。よし、もう片方も塗るな」
ダンテの指先がレディの左の目元へと触れた。
先ほどと同じように、力を抜いた指先で優しくつつくようにレディの目元に触れるダンテ。その行為が少しくすぐったかったレディだが、むしろ、その感触がどこか気持ち良くて、快感へと結びついていることも感じていた。
暫くその行為が続いたあと。ダンテは指の腹で回すように優しくレディの目元を撫でた。恐らく、少し多く付けてしまったアイシャドウを伸ばすように塗っているのだろう。
目を閉じているから詳細は分からないが、そんなダンテのぎこちない姿を頭の中で想像したレディはその光景が微笑ましくなり、ダンテには分からないくらいの微笑みをこぼした。
……よし。レディ、ちょっと目開けてみて」
「ん……
ダンテにそう言われたレディは、気持ち良さで少しばかり眠くなっていた瞼をゆっくりと開いていった。そして、目の前にいるダンテをそのまま真っ直ぐと見つめた。
ダンテは目を開いたレディの目元を見て、アイシャドウが均等にムラなく塗れたこと、そして、華やかになった彼女のことを見て満足そうに頷いた。
……うん。綺麗」
「?ありがとう……
しかし、鏡がないためレディは自分自身を見る術がなく、今自分の目元がどうなっているのか気になるばかりであった。
ダンテは満足そうにしているが、ちゃんと適量のアイシャドウを付けられているのかなど、少しばかり不安になるレディ。
しかし、何事もセンスがある彼。そんな彼が満足そうにしているということは、きっと上手くアイシャドウを塗れたのだろう。
そう思ったレディはダンテのそのセンスを信じ、あとで自分の姿を鏡で見ることを今は楽しみにしておこうと決めた。
「さてと。うーん……次はどうすっかなぁ」
「え、アイシャドウだけじゃないの?」
「いや……何か、それも気になっちゃってさ」
ダンテはそう言うと、レディが手に持っている口紅を指差した。
「え?これ?」
「うん、それ」
「でも……
アイシャドウだけ塗られると思っていたレディは、まさか口紅にも興味を持たれると思っていなかったため、驚きと焦りであたふたした。
さすがに唇は恥ずかしいという想いからなのか、レディは唇を片手で覆うと、ダンテから視線を反らした。
(……どうしよう)
口紅もダンテに塗って貰うか悩むレディ。
しかし、先ほどアイシャドウを塗ってもらっている時に感じたどこか心地いい感覚を再び味わいたい衝動に駆られてしまい、レディは恥ずかしながらも手元に持っている口紅を二つともダンテに差し出した。
「ん?どっちの色、塗ればいい?」
「えっと、ダンテが好きな方で……
そう言うとレディは、更にダンテから顔を背けた。
何とも言えない恥ずかしさからなのか、顔も火照っていく一方だった。
「うーん……
しかし、そんなレディの様子を気にすることもなく、ダンテは差し出されている口紅の色に一人悩んでいた。
先ほど、ローズレッドの口紅は彼女が手の甲に試し塗りをしていたので、何となく塗った時の色は想像できている。しかし、肌色と色味がついている唇に塗るのとでは、恐らく発色が違うのだろう。ダンテは実際唇に塗るとどんな色味になるのだろうと気になった。
一方、ピンクベージュの口紅も可愛らしい色味だった。これはこれで彼女が本来持っている可愛らしさがより一層溢れ出すかもしれない。そう考えると、ピンクベージュの口紅も捨てがたい。だが、色だけでいうとダンテの好み的にはローズレッドだった。だけど、やはりピンクベージュの口紅も塗ってみたい。
「うーん、どうすっかなぁ……
ダンテは少しの間悩み続けた。
……ぁ」
その時、あることをふと思い出したダンテ。
ダンテはどこか嬉しそうに口元を緩ませると、レディに差し出されている口紅を二つとも手に取った。
「ダンテ……?」
まさか、両方とも手に取るとは思わなかったため、レディはダンテのその行動に少し驚き、ダンテから背けていた顔をゆっくりとダンテの方に向けていった。そして、ダンテが手に持っている口紅をジッと見つめた。
「ねぇ、ダンテ……どっちの口紅にするの?」
「塗ってからのお楽しみ……ってことで」
「そしたら、目……閉じてた方がいい?」
「そうだな」
「うん。分かった」
そう言うとレディは瞼をゆっくりと閉じた。そして、口紅が塗りやすいようにとほんの少し唇に隙間を作るように口を開いた。そんな彼女の様子を見ていたダンテは、選んだ色の口紅の蓋をカチッと開けると、左手でレディの顎をクイッと掴んで固定をした。
そして、口紅の先端を少し出し、レディの顔、特に唇付近に自身の顔をグッと近付けて、彼女の唇に口紅の色をのせていった。
一般的にいう口紅の塗り方なんてもちろん分からないダンテだが、自身もケアのために塗ることがあるリップクリームを塗る感覚を思い出しつつ、レディの唇の形に沿って慎重に口紅を塗り続けた。
……
レディの唇に口紅を塗ってるうちに、もともとふっくらと柔らかな彼女の唇にダンテは魅力を感じてしまい、自身の鼓動が高鳴っていくのを感じた。
……っ」
一方レディは、先ほどアイシャドウを塗ってもらっている時と同様、目を閉じているためダンテの行動にはまたしても敏感になっていた。
目には見えてないが、彼の顔が自分自身の顔、特に唇に近付いていることはよく分かっており、それがどれくらい近い距離かも大体想像がついていた。
(……っぁ)
そのことを考えると、凄まじい緊張感がレディに襲いかかってきた。それは、手に汗を握るくらいだった。
おまけに、ダンテの柔らかな前髪が時々鼻先に触れる。その度にレディは、軽く息を止めるように体を硬直させた。だが、そのことによって少しばかり呼吸が苦しくなったのか、小さく肩を上下に動かしながら、熱くなった吐息をうっすらと開いた唇の隙間から漏らしていった。

……よし」
しばらくすると、ダンテがようやく口紅を塗り終わった。 そして、使っていた口紅の蓋を閉めると、一仕事終えたかのようにゆっくりと肩を落とした。
そして、レディに口紅を塗り終わったことを告げようと思い、そっと彼女の顔を覗き込んだ。しかし、彼女の表情を見た途端、ダンテは声をかけるのをやめた。
目を閉じ、赤く染まった頬。そして、恐らく無意識だろうが、ほんの少し開いた唇の隙間から漏れ出している熱い吐息。そんな彼女の表情を真正面から見てしまったダンテは、何かがプツン……と頭の中で切れるような感覚に襲われた。
(ん?あれ……?)
レディは、とっくに口紅を塗り終わっただろうに、声をかけてこないダンテに疑問を抱き、閉じていた瞼をそっと開いていった。その時、思ったより近い距離にいる彼に驚いてしまい、レディは思わず後ずさりそうになった。しかし、ダンテがそれを阻止するかのように、レディの頭に右手をまわした。
「え、ダンテ……?」
ダンテのその行動に、レディは鼓動が強く脈打ったのを感じた。
ダンテは何も言わず、真剣な眼差しでレディのことを、特に彼女の唇をジッと見つめ続けた。
ほんの少しだが、彼女を欲しそうに目を細め、熱い吐息を小さくフッ……と漏らすダンテ。
ダンテは左の指先で彼女の唇をツー……となぞるように撫でたあと、そのまま彼女の唇に自身の唇をゆっくりと重ねていった。
「?!んっ……
まさか、ダンテが口紅を塗った自分の唇に口付けて来るとは思わず、レディは驚きのあまりに目を力強く見開いた。
一瞬唇が触れたかと思えば、角度を変えたり、彼女を求めるように口を動かすダンテ。そんなダンテの甘くて優しい口付けに、レディは段々と酔いしれていった。
「ん……
その快感に溺れてしまったのか、レディは恥ずかしい気持ちより、このままダンテに身を委ねたたいという気持ちになってしまい、ダンテの背中に手をゆっくりとまわそうとした。
その時、ダンテはゆっくりとレディから離れた。
レディはそんなダンテの様子に疑問を抱いて話かけようとしたが、先ほどの甘い感覚にまだ酔いしれているせいか、口をパクパクさせるばかりで言葉が上手く出てこなかった。
ダンテは、短い時間の口付けに物足りなさそうな表情を浮かべつつ、レディの頭を撫でると優しく彼女に微笑み、話しかけた。
「なぁ……
……?」
「口紅の色、知りたい……?」
レディはそう聞かれると、まだボーッとする頭の中で何とか理性を保ちながら、静かに頷いた。
ダンテは小さく息を吐いたあと、彼女の耳元に自身の唇を近付けていった。

「その口紅のキャッチコピー、ローズレッドが『大人のキス』らしいぜ。もうひとつは……『初めてのキス』」

ダンテは熱い吐息混じりの声でそう言うと、レディの耳元にフッと息を吹きかけ、頬に触れるだけの口付けをした。ダンテのその行為に、またしてもレディは酔いしれる感覚になりそうになった。
そんなレディの様子を優しい眼差しで見つめながらダンテはソファから立ち上がり、彼女に塗ってあげた口紅を手渡した。そして、もう一つの口紅は自身のズボンのポケットにそっとしまい込んだ。
「俺、シャワー浴びてくるから……。落ち着いたら、お前も……
そう言うと、ダンテはいまだにボーッとしているレディに微笑みをかけ、シャワールームがある奥の部屋へと向かって行った。

***

……
ダンテがシャワールームへと向かったあと、部屋には再び静かな空間が訪れた。
「『大人のキス』と『初めてのキス』か……
部屋に一人残されたレディは先ほどダンテが言っていたことを思い出すと、指先でそっと自身の唇に触れた。
……
まだダンテの唇の感触が残っている自身の唇。そのことを実感すると、レディは太股の間からムズッとするような感覚に襲われた。
……もぅ」
ダンテと交わした短い時間だけど甘い口付け。
レディは先ほどダンテに塗ってもらった口紅の色に気付いてしまい、胸の奥から込み上げて来る何とも言えない感情を、今はただ堪えることに必死になるばかりであった。
……
そんな時、ダンテがシャワールームに向かう際に呟いてた言葉をふと思い出したレディ。
「落ち着いたらお前も……って……
ダンテの言葉や誘惑に対して、レディは今日一番といってもいいくらいに、身体中が熱くなった。
……どうしよう」
正直、恥ずかしすぎてダンテが待っているであろうシャワールームへ行くことに、レディはかなり戸惑った。いくら何でも、今日一日でいろいろと進展しすぎている気がしたからだった。しかし、このままダンテが戻ってくるまてジッとしているのも、もどかしい。
レディはそんな想いを振り払うように一瞬ギュッと目を閉じたあと、ソファーからゆっくりと立ち上がり、シャワールームがある奥の部屋へと向かって行った。



***

 

……

洗面所の扉を開けると、ダンテが既にシャワーを浴びているであろう姿が、浴室の扉の影からうっすらと見えた。
レディは少しの間その姿を眺めると、自身が身に纏っている洋服のボタンに手をかけ始めた。
その時、洗面台に口紅が置いてあるのをレディは見つけた。先ほど手渡された色とは違う色の口紅だった。
「あ、そういえば」
レディは少し熱気で曇った洗面台の鏡を軽く擦ると、ダンテが化粧を施してくれた自身の顔をジッと覗き込むように見つめた。
(凄く綺麗……
自分自身の顔だが、思わずそう感じてしまうほど、ダンテが施したメイクのテクニックは綺麗なものだった。
ダンテとの口付けによって塗られていた口紅は少しとれてはいたが、それ以外は本当に申し分のないくらいの出来だった。
……
鏡越しに自分の顔をジッと見つめたあと、レディはあることに気が付いた。
ホワイトシルバーのアイシャドウはダンテの銀髪と似たような色味で、レディはそのこと意識すると、どこか気恥ずかしくなった。
(ダンテ色……なんてね)
レディは心の中でそう呟いたあと、洗面台に置いてあった口紅をそっと手に取り蓋を開けると、先ほどダンテが塗ってくれた口紅の上から塗っていった。
二種類の口紅を塗ってしまえば色が混ざりあってしまう。レディはそのことを分かっていながらも、元々塗ってあった口紅の上に更に色を重ねるように塗った。
(あら……?)
口紅を塗り終わった唇の色は、不思議なことにレディの足元に脱ぎ捨ててあるダンテが愛用している赤いコートの色と同じになった。
……っ」
そのことを意識したせいか、またしてもレディは身体中が一気に熱くなるのを感じた。

  • ローズレッドが『大人のキス』
  • ピンクベージュが『初めてのキス』

(それなら、あなたの色に染まったこの唇が持つ意味は……?)

レディはそう思いながら、震える指先で身に纏っていた衣服を全て脱ぎ捨てた。
そしてバスタオルを一枚体に巻き付けると、浴室の扉をそっと開いていった。


to be continued……




ここから先、二人がどう甘い時間を過ごしたかは、二人だけの秘密。