癒羽琉(ユウル)/由羽(ユウ)
2017-04-22 19:52:57
10664文字
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届かない声

ほとんど文字のみからの、それぞれのキャラ視点というなかなかめちゃくちゃな構造ですが、読んで頂ければ幸いです。
プロローグとは…?(笑)
無駄に長くてすみません(*_*)

バージル…(;_;)

【Prorogue】

ダンテの双子の兄であり、スパーダのもう一人の息子、バージル。
彼は数年前、自身の双子の弟の手によって完全に消滅したとされていた。
しかし、彼の形見である閻魔刀と、現在その閻魔刀の所有者の魂が共鳴しあったのか、奇跡は起きた。
空から突然、かすかな光が降り注ぐと同時に、本来の閻魔刀の持ち主である彼が、城塞都市フォルトゥナに姿を現した。
街の片隅で目を覚ました彼は記憶がなく、本能のままにフォルトゥナの街を彷徨い続けた。
そんな時、自身と同じ銀髪で、青い瞳を持つ一人の青年、ネロとすれ違う。同時に、ネロの右腕からは突如閻魔刀が現れた。
ネロの意思とは関係なく、閻魔刀は青いコートを身に纏う男、バージルの元へと向かう。
現在の閻魔刀の所有者であるネロは、なぜ閻魔刀が目の前にいる男の元へと向かっていったのか分からず、その男が閻魔刀をどう扱うかを確かめるように、その様子をうかがっていた。
一方、本来の閻魔刀の持ち主であるバージルは何の躊躇いもなく、自身へと向かって来たその刀をそっと手に取った。
そして、どこか懐かしく感じながら、暫くその刀を握りしめている時だった。
突如、彼の脳内に様々な光景が思い浮かんだ。
目の前には自分と顔がよく似ていて、赤いコートを身に纏った男がいた。少し離れた場所で、自身が愛用しているであろう大剣を握りしめ、俯きながらもこちらへと走りながら向かって来ている。
一方、自分自身も大剣を握りしめ、視界に映る赤いコートを身に纏った男に全力で斬りかかろうとしている。
暫くすると、二人の距離は段々と近付いていき、お互いを切り裂こうと同時に大剣を掲げた。
結果は、赤いコートを身に纏った男の勝利だった。
そのあとの記憶は、自分自身が深い闇へと飲み込まれる情景ばかりが思い浮かんだ。
次に思い浮かんだのは、少し服装が変わったが、やはり目の前に赤いコートを身に纏った男がいる光景だった。
一方、自分自身は冷たく重い鎧を身に纏っており、目の前にいる赤いコートを身に纏った男と再び剣を激しくぶつけ合っていた。
その戦いは三度行われ、結果はやはり、自分自身が闇へと飲み込まれる結末だった。
その事を思い出した彼は、何かが力尽きたように地面へと倒れこみ、意識を失った。
その様子をずっと側で見ていたネロは彼を抱えると、慌てた様子で自宅へと運んで行った。
そして、自身のベッドへと寝かせると、この男に見覚えがありそうな人物、“ダンテ”へと急いで連絡をした。

ネロの話を聞いたダンテは、まさか……という様子で、慌ててネロの自宅へと駆けつけていった。
息を切らしながらネロの自宅へと辿り着いたダンテは、その自宅に一緒に住んでいるネロの彼女である“キリエ”の挨拶に見向きもせずに、一直線にネロの自室へと向かった。
そして、ベッドで静かに寝かされている青いコートを身に纏っていて自身と同じ銀髪、青い瞳を持つ彼の姿を確認した。
そう。その彼の正体は、間違いなくダンテの双子の兄だった。姿は、最後に決別した時と変わらないまま。何故、彼が今目の前にこうしているのか、一体何が起こったのか理解出来ずに、ダンテは頭の中がずっと渦巻くばかりだった。
そんな時、ベッドへと寝かされているダンテの兄、バージルがゆっくりと目を覚ました。
バージルは重たくなった身体を起こし、ここはどこだ?というように、ネロの部屋全体をキョロキョロと見渡した。
そんな時、ふと視界に入った赤いコートを羽織った男……“ダンテ”。
最後に見たときと姿、年齢も変わっているため、最初は誰か分からなかったが、やはり同じスパーダの血を引く者同士。
ましてや双子であるため、その男が直ぐに自分の弟であるダンテだとバージルは気付いた。
その瞬間、バージルは手元にあった刀を鞘から抜くと、目にも止まらぬ速さでダンテに斬りかかっていった。
ネロは突然の出来事により、声をわっ!とあげて、バージルから勢いよく溢れている殺気を避けるので精一杯だった。
ダンテは、バージルが振りかざした閻魔刀を何事もないように片腕で受け止めた。
それと同時に、バージルはダンテの力に跳ね返されるように、後ろへと吹き飛ばされた。
ダンテは、バージルの閻魔刀が腕にぶつかる瞬間、その一点に集中的に力を込め、その攻撃の威力を自身へと蓄積したのだった。
その事によってバージルは、今目の前にいる弟の力に及ばない事を確信したのか、黙って閻魔刀を鞘に納めると、ネロのベッドへと静かに腰をかけた。
バージルが自分自身との力の差に気付き、もう攻撃してこないことを確信したダンテは、どこか遠くを俯いているバージルを横目に、ネロに青いコートを身に纏っている男が自分と、ネロとどういう関係であるかを話し始めた。

ネロは、大体の事は予想がついていたが、改めてその男が自分の“父親”と言われると、やはりどこか戸惑いを隠せなかった。
何せ、生まれた時からネロには本当の家族が既にいなかった。
それに、今まで家族同然と過ごして来たのは、キリエとクレド、その両親であった。そのため、今更目の前にいる男、バージルを父親……それこそ、キリエやクレドの両親と同じように接する事が出来るのか……。ネロは様々な不安に駈られた。
しかし、やっと出会えた本当の家族、誰よりも血が濃く繋がっているその存在に、ネロは自然と喜びが勝っていることに気が付いた。
そして、震える声で小さく、ゆっくりと、「父さん……」と呟いた。
その言葉を聞いたバージルは、一瞬ハッとなり、目の前にいる自身の息子、ネロをゆっくりと見上げた。そして、腰を掛けていたベッドから立ち上がり、ネロの元へゆっくりと近付いた。
一方ネロは、父親であるバージルが自分の目の前に歩み寄ってくる度に、鼓動が早く高鳴っていくのを感じた。
次は何と声をかければいいのか、自分の名をきちんと名乗るべきなのか等、少しばかり緊張感が走る表情を浮かべながら、冷徹な表情を浮かべたままの父親の瞳の奥をジッと見つめ続けた。

バージルは、唇を噛みしめ微かに冷や汗をかいているネロの様子を見て、ネロが色々な不安や緊張感に襲われている事を察した。
その気持ちを和らげようという想いが無意識に芽生えたのか、バージルは自身の手をゆっくりとネロの頭の上に添えた。
その行動にネロは驚いたのか、目を見開いて更にバージルをジッと見つめた。
バージルはそんなネロの様子にお構い無しに、頭の上に置いた手を下へと滑らすように動かし、そのままネロの頬へと添えた。
ネロの頬は暖かかった。その温もりが堪らなかったのか、バージルはネロの頬にしばらく手を添え続けた。時には親指で頬を回すように撫で、ネロの存在、温もりを確かめるように触れていた。

一方、ネロは冷たすぎる父親の手の感触を、ジッと何かを噛みしめるように感じていた。
こんなにも冷たい手に触れられた事が今までなく、ネロはその冷たさに心が凍りつきそうになる。
そんな冷たい手をどうにか暖めたい気持ちが芽生えたのか、ネロは自身の頬に触れる父親の手を、包み込むようにそっと触れた。
その瞬間、ネロの右手は暖かく光った。それと同時に、バージルはネロの手から自分自身の手を伝ってくる温もりをトクントクン……と鳴り響く鼓動と共に感じた。
今まで、こうして人の温もりを感じたことのない彼。
もちろん、幼い時は両親から愛情をたくさん注がれていたが、それとはまた違う。
あの頃、自分は“子供”という立場だったが、今は父親という立場として家族に接している。世間一般的に、一家の大黒柱とも言われる立場だ。
その事をふいに意識した彼は、自分にはまだ守るべき存在があった……という事を感じた。
母親を亡くしてからは、大切な者というのが何か分からなくなり、ただ、もう二度と何かを失わないように、力を必死に求めていた彼。
しかし、今目の前にいる自分の息子の存在によって、あの時、誰もが意味のない物と思っていたであろう“力”の使い道がやっと、バージルは分かった気がした。
この力は自分の意志を継ぐ者……そう、目の前にいる息子という存在を守るためにあるのだと。
その事を確信したバージルは、ふいに自身の息子、ネロの事がどこか愛しくなったのか、ネロの頬に触れていた手をそっと離すと、今度は優しくギュッと抱き締めた。
その事に一瞬目を見開いて驚いたネロだが、力強く、しかし、どこか弱々しい父親の温もりを感じ、その事に様々な感情が湧いてきたのか、声にならない叫びをあげながら自分自身も震える身体で、バージルを抱き締め返した。

一方ダンテは、微笑ましく、どこか寂しげな表情を浮かべながら、その光景を直ぐ横で見ていた。
丁度その時、ネロの同居人で恋人であるキリエも駆け付けるようにネロの部屋へとやって来て、ネロとバージルが互いに固く抱き締め合っている光景を目撃した。
何故こういう状況なのか?と首を傾げながらダンテに訪ねたキリエ。ダンテは訳が分からないとばかりにあたふたしている彼女の肩をそっと抱くと、そのままネロの部屋を出ていき、そっと扉を閉めた。そして、そのまま廊下で今までの出来事を話し始めた。
簡単にだが、青いコートを身に纏っている男の名は“バージル”といい、自分の双子の兄、そして、ネロの父親であるということ。どうしてバージルが現世に突然現れたのかは分からなかったが、ダンテの推測では、ネロの所持している閻魔刀の魂があの世のバージルの魂と共鳴したのだろう、という事だった。
それを聞いたキリエは、やはり何が何だか分からないと目を泳がすばかりであったが、ネロが本当の家族と会うことが出来たという事に対しては嬉しく思った。
そして一通りキリエに状況など説明し終わったあと、ダンテとキリエは再びネロの部屋へと戻って行った。

部屋に戻った二人の目に飛び込んで来たのは、ネロとバージルがベッドに並んで腰を掛け、談笑している光景だった。
歳が近いせいか、親子というより兄弟のように見えるネロとバージル。そんな二人の姿を見てどこか微笑ましくなったのか、ダンテとキリエは互いに顔を合わせると二人して笑い合った。
その様子に気付いたネロとバージルは、何をそんなに笑っているのだろうと互いに思い、二人してキョトンと首を傾げるようにダンテとキリエを見つめた。
そんな二人の様子や仕草に、またしてもダンテとキリエは可笑しくなり、お互いに笑い合った。まさか、首を傾ける方向、ましてやタイミングまでほとんど一緒だったため、流石親子だな……という想いからだった。
そして暫く笑い合ったあと、ようやくダンテは隣にいる女性、キリエをバージルに紹介した。
彼女はバージルの息子、ネロの同居人で恋人であるということ。かけがえのない大切な人であるということ。
簡単にだが、一通りキリエの事を紹介したあと、ダンテはキリエの背中を押すようにバージルの前へと立たせた。
キリエは緊張のあまり、目線を泳がせながらも、ネロの父親であるバージルに向かって軽く会釈をすると、自分の名前などを自己紹介した。するとバージルはゆっくりと立ち上がり、キリエの頭を軽く撫でたあと、抱き締めるように彼女の事を引き寄せた。
まさか、バージルがそんな行動をするとは思わず、ダンテとネロとキリエは共に、目を見開いて驚いた。
バージルが言うには、「久しぶりに母さんのような温もりを感じたかった」との事だった。
しかし、バージルがどこかネロをからかうような表情をしているのをダンテは見逃さず、それが可笑しくなり再び笑いだした。
ネロは、いくら父親でも歳が近いから尚更なのか、かなり焦った様子でキリエの腕を引っ張ると、そのままキリエを自分の胸へと引き寄せた。
そんなネロの行動に、またしてもキリエは驚いた。

バージルは、ネロの行動や焦っている様子を見て、軽く微笑むと「彼女を大切にな」と一言呟いた。
ネロはどこか照れ臭そうに、分かってるよと言うように、静かに頷く。
そんな親子のやり取りを、ずっと近くで見ていたダンテ。
最初は、お互いがお互いを心から受け入れられるか、正直不安でたまらなかったが、今目の前で行われているバージルとネロの親子のやり取り見ているうちに、そんな心配や不安は徐々に消えていった。
そのことに安心したのか、ダンテは未だに他愛ない会話などをしているネロとバージル、そしてキリエを眺めるように見つめてフッと笑うと、三人に声をかけないままネロの自宅を後にした。



ーーーーーーーーーー



それからというもの、バージルはそのままネロとキリエの自宅に身を置くことにした。
本来、弟であるダンテと共に暮らす方がいいのではないか?という意見もあったが、ダンテ自身がその事を断った。
「自分より過ごす時間が断然少なかったネロと一緒にいて欲しい」という願いからだった。
それこそ、バージル自身も最初は弟であるダンテの元に身を置こうと考えていたが、ダンテの想いなどを受けとると、息子であるネロとその恋人であるキリエの自宅を選んだ。
しかし、二人の事を気遣ってなのか、もう少し色々と落ち着いたらこの家を出て一人で暮らそうという事も考えていた。ネロ達は別にずっといても構わないという感じだったが、バージル自身がその事に対してやはり抵抗があったため、ネロは少し寂しい気持ちを押さえつつ、バージルが出ていくまでは精一杯親子との時間を大切に過ごそうと決めた。

バージルにとって、ネロとキリエと共に過ごす時間は今まで感じた事のないくらい幸せなものだった。
どこか母親のような面影を持ちながら優しく接してくれるキリエ。
そして、幼い子供のように無邪気に自分に笑いかけてくれる息子のネロ。
世間一般的には、どの面下げて父親と名乗っているんだと言われても当然だということに、バージル自身も分かっている。
昔、罪のない人々を巻き込もうが、己が力を求めるばかりに数々の犠牲を出してしまったバージル。
その出来事に関してはネロもキリエもダンテから聞いており、分かっていた。
しかし、今のバージルの本当の姿を見ているネロは、過去の事なんてどうでもよかった。それは、キリエも同様。
今、こうして家族への愛に満ちている彼の姿が本当の彼の姿だと分かっているからこそだった。
そんな二人の優しさに包まれているこの空間があまりにも居心地がよく、バージルは日に日に自分自身の表情が柔らかくなっているのを感じた。
ずっと忘れかけていた家族との絆、温もり。
その事を思い出させてくれたネロとキリエ、そして、ダンテに対して湧き上がってきた少し照れ臭いが感謝という気持ちを胸に、何気ない普通の日常を暫く過ごしていた。
ネロが依頼がなく暇をもて余している時は共に手合わせをしたり、逆に依頼で家を空けているときはキリエの話し相手をしたり、自分が魔界に堕ちてからどんな出来事があったのか等を聞くためにダンテの自宅兼事務所へ訪れたり、そんな事をしたりして過ごしているうちに、数ヶ月の時間が流れていた。
自分がどうして、今になって現世に甦ったのか未だに分からないままだったが、平和で本当に何気ない日常を暫く過ごしているうちに、バージルはそんな事はどうでもよくなっていた。
そしてこのまま、これからもずっとこんな日々が続くと思っていた。



しかし、彼が現世に留まれる時間は限られていた。
幾日、幾月、何気なく過ごしていた生活の中で、バージルは違和感を感じ始める。
ふいに鏡を覗いて見たとき、彼の姿が透けるように映っていたのだった。
それからというもの、彼は毎日鏡を覗いてみては、己の身体が段々と映らなくなっているのを確認していた。
嫌な予感がした。
しかし、その予感に気が付いた時はもう遅かった。
自身の息子のネロも、その様子に気が付いた時、父親であるバージルの身体はもう既に鏡に全く映らなくなってしまっていた。それどころか、現実の彼の身体も透け始めた。
ネロは慌てて自身の父親の弟、叔父であるダンテに連絡をし、同棲している彼女のキリエも呼び出した。
何が起きているのか分からないままだったが、父親をどうにか助けたいという焦る気持ちが動いたのか、ダンテに急いで用件を伝えたあと、ネロはバージルの手を引きながら勢いよく玄関を飛び出した。

その時、タイミングがよかったのか、ダンテが丁度駆け付けに来ていた。
ネロは、ダンテなら何とかしてくれると思い、父親をどうにか助けてくれるように必死にせがんだ。
しかし、ダンテはとても悲しそうな表情を浮かべ、静かに首を横に振るだけだった。
ダンテのその様子を見たネロは、それなら……という想いからなのか、キリエの元へと駆けつけた。
正直、この事に関してはキリエでは頼りにならないことは誰もが分かっていたが、ネロはそれでもキリエにさえしがみつき、どうにかしてくれと必死にせがんだ。
しかし、やはり結果は一緒。キリエも静かに首を横に振るだけだった。
誰も何も出来ない状況に、血の気が引くのを感じたネロ。
一方、ネロの父親であるバージルの身体は徐々に透けていくばかりだった。
その事に気が付いたネロは、どうすればいいんだというばかりに泣き叫びながら、自身の父親の胸にしがみついた。



ーーーーーーーーーー



【Vergil side

消え行く己の身体で目の前にいる我が息子を、精一杯俺は抱き締めた。
やっと出会えたというのに、やはりこの世界の決まりなのか、死者は現世に留まってはいけないらしい。
(泣くな……)
いくら俺がそう言っても、我が息子はただ泣くばかり。
何かを必死に泣き叫んでいるが、俺にはお前の声どころかもう、周りの音も何も聞こえないんだ。
おまけに、俺自身の声も。
(すまない……)
何とか声に出して言葉を発しようとするが、感じるのは己の唇が動いているという事だけだった。
息子は、相変わらず泣き叫んでいる。
何も聞こえなくても、お前が今どんな想いで俺にしがみつき、泣き叫んでいるかがよく伝わってきた。
こんな俺でも、家族を失う辛さは痛いほどよく分かる。それは、我が弟も同じだろう。
何故、俺達は大切な者を失ってしまう運命なのだろう。
これは、“悪魔”としての定めなのか。
命ある者がいつか終わりを迎えるのは、当たり前の事だ。しかし、そうだとしても、俺達は余りにも悲しい運命を背負いすぎなのではないか。
今までそんなこと考えた事なかったが、自分のためにここまで泣き叫ぶ奴を目の前で見て、俺は生まれて初めてこの運命を恨んだ。
しかし、今更この運命を恨んだり後悔しても仕方がない。
それにもう、そんな時間はない。
(そろそろ、お別れだ……)
俺は、我が息子がしがみつく感触がだんだんと消えていくのを感じた。
(さようなら……)
もし生まれ変わったら、またお前の父親になりたい。
その時は……きっと……
(元気でな……)
最後に、せめて最後に……
精一杯笑おう。
大丈夫。また会えるさ。


(ネロ……)





【Nero side

「父さん!父さん……!」
やっと、やっと出会えたというのに……
誰よりも血が濃く繋がっている家族に……
父さんに……
「何……でだよ……!何でなんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!……っ!」
俺は今にも消えそうな父さんの身体に必死にしがみついた。
「俺……まだ…………父さんと話したいこと、やりたいこと、たくさんあるの………………何でだよ……何で…………ぅうっ……うわあああああああああああああああ!!!!!」
誰が見ても情けないと思うくらいに俺は泣き叫んだ。
そんな俺を見て、父さんはどこか辛そうに、だけど優しく、微笑んでいた。
「もう……家族を失うのは…………なんだよ……っ!なのに、どうして……何で……何でなんだよおおおおおおおおおおおお!!!!」
俺が“悪魔”だからなのか?そのせいで、神様はいつも味方してくれないのか?
「父さん……!逝かないで……逝くな……逝くなあああああああ!!!……嫌だ……嫌だ…………!父さん……ぅうっ……ぁあっ……!うわあああああ……!!っ……
俺は胸が、息が苦しくなる中、更に父さんにしがみついた。
それと同時に、先程より父さんの温もりが消えているのを俺は感じた。
それは、別れの時が近づいている証拠だった。
「父……さん……
何故、俺達はこんなにも家族を失う目に遭う運命なのだろう。
「っ……
俺はたくさん泣き叫んだせいか、もう涙が枯れ果ててしまった。
そして、襲いかかる脱力感。それを何とか堪えようと、俺は更に父さんに強くしがみついた。
「父さん……
今にも消えそうな父さんの感触を確かめながら、俺は父さんの瞳をジッと見つめた。
「最後に……俺の名前……呼んでくれよ……
父さんの過去も未来も、しっかりと心に刻みつけるから。
「なぁ……父さん……
俺の声……聞こえる……
「っ…………さん……
なぁ……
「父………………
最後に名前……
「っ……父さ……
呼ん……
「ぁ…………

そして、俺の家族がまたいなくなってしまった。



【Dante side】

どうして兄貴というものは、儚い存在なんだろうな……と考えながら、俺は今にも消えそうな兄と、その兄に必死にしがみついている甥の姿を横から眺めていた。
それにしても、泣きすぎだろ坊や。俺だって泣きたいのに、二人して騒ぐ訳にもいかないしな。なんて。
やっと、坊やにとって一番血が濃く繋がっている家族に出会えたというのに、こんな結末は余りにも酷すぎないか?
なぁ?神様?
……
何故、俺達“悪魔”は救われない運命なのだろう。
どんなに人としての心を持っていようと、“悪魔”であるということに変わりがないのは分かっているが、そうだとしても、悲しすぎる結末だ。
別に、父親である“スパーダ”を恨む訳ではないが、もし人間として生まれて来たなら、世間一般で言う普通の暮らしというものが出来たのでは?と、考えてしまった。
逆に言えば、スパーダの息子、悪魔の血を引いて生まれたからこそ、こうして俺達は出会えたのかもしれない。
無理矢理だがそう思わないと、何の罪もない父親……ましてや母親まで本当に恨んでしまう。
そんな事はしたくないからな。
何て、いろいろと考えているうちに、兄、バージルの身体は先程よりもかなり透けていた。
あぁ……そろそろ別れの時が近付いて来たか。
それにしても、少しくらい俺の方を向いてくれたっていいんじゃないか?兄貴よ……
まぁ、そんなに自分の息子にしがみつかれて泣かれては、そんな余裕ないだろうけどさ。
俺だって、お前の家族なんだぜ?
最後に一言くらい、何か交わしたいもんさ。
せめて、名前くらい呼んでくれよ。
なぁ……
「バージル……
俺が兄貴の名前を小声で呟くと、それに気付いたのか、バージルは息子のネロを抱き締めている腕を片方ほどき、その腕を俺に向かって伸ばした。
「っ……!」
俺はその瞬間、バージルが伸ばしたその腕、せめて指先に触れようと、バージルと同じように必至に腕を伸ばした。
しかし、あと少し、本当にあと少しで触れる……という所で、バージルの身体は光の粒と共に指先から消えていった。
「ぁ……
俺は慌てて、バージルの顔を見る。
……
バージルは笑っていた。優しく、暖かい眼差しで。そして、唇をゆっくりと動かしていた。
もう、声を発する事が出来ないバージルが何を言っているか分からなかった。
分かった事は、発している言葉は“三文字”ということだけだった。
「ったく……
言いたいことがあるなら、はっきり言いやがれ。
ズルいんだよ、いつもいつも。
最後には笑って俺に別れを告げて。
逝くときはいつも一人で……
……。双子、だってのにな……

俺はまた、自分の家族を救う事が出来なかった。


【Kyrie side

ネロが自分のお父様にしがみついて泣いている姿、ネロの叔父様がそれを横から眺めている姿。
私は、その光景を少し離れた所から見守ることしか出来なかった。
ネロのお父様が光の粒と共に消えたあと、力なく地面に蹲る二人を見ても、私は本当に何も出来ず、ただ立ち尽くすだけだった。
駆け寄ってネロの事を抱き締めてあげるべきなのか、叔父様の背中を優しく擦ってあげるべきなのか……
だけど、そんな事をしても、二人の心の傷を癒す自信がなかった。というのも、あんなに泣いたネロを私は見たことがなかった。
そんな姿を見てしまっては、内心戸惑う気持ちの方が勝ってしまった。
もちろん、地面に蹲っている叔父様の姿も見たことがない。
かすかにだが、肩が震えている叔父様。
ネロはもう涙が枯れ果ててしまったせいなのか、泣いている様子はなかったけれど、叔父様は今になって声を押し殺すように泣き出していた。
その様子に気付いたネロは、ゆっくりと叔父様の側に近寄ると、蹲っている叔父様の背中を優しく撫で始めた。
その瞬間、叔父様はネロの胸元に飛び付くようにギュッとしがみつき、先程ネロが自分のお父様の胸で泣いたように、声をあげて泣き出した。
まさか、あの叔父様がこんな風に泣くなんて、思いもしなかった。
だけど、ネロは優しく微笑むと、叔父様の背中を包み込むように抱き締めた。
相変わらず私は、その光景を黙って見守ることしか出来なかった。
何故、貴方たちはそんなにも苦しみや悲しみを背負う運命なのだろう。
それをしっかり支えてあげるのが私の務めなのかもしれない。
だけど、私は本当に今、どうすればいいのか分からない。
何て声をかければいいのか分からない。
本当に、何も……分からない………

……っ」

私は声にならない叫びをあげることしか出来なかった。



ーーーーーーーーーー


【Epilogue】

届かないそれぞれの想い、声……

それでもいつか届いて欲しいと、今は願うだけ……




END