癒羽琉(ユウル)/由羽(ユウ)
2016-12-21 23:37:36
2999文字
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女神の怒り

ダンテとネロの会話を誤解してしまい、キリエちゃんが怒ってしまったお話。

ある日の午後の出来事。
ここ最近依頼がなく、退屈な日々に痺れを切らしたダンテは自宅兼事務所にいるのが嫌になり、久しぶりにネロとキリエが住んでいる家へとお邪魔していた。
リビングにはダンテとネロの二人。特に何かをするわけではなく、二人してソファーに腰かけて他愛ない話を繰り返すだけだったが、ダンテにとってはいい暇潰しになっていた。
最近の悪魔の状況や武器などについて話したあと、ダンテは急にリビングをキョロキョロと見渡すように首を動かした。
「そういや、あの嬢ちゃんは?」
ダンテは姿が見えないキリエを気にかけ、ネロに問いかけた。
「部屋にでもいるんじゃないのか。読みたい本がある……って、最近籠りっぱなしだし」
「そっか」
そう言うと、ダンテはネロが用意したコーヒーを口に含んだ。
……
男同士、二人きりの空間。ダンテはネロに聞きたいことが山ほど積もってきた。
「ところで、あの嬢ちゃんとは上手くやってるのか?」
「ん?」
真っ先に気になったのは、やはりネロとキリエの関係だった。
会う度に関係が進展しているのかしていないのかよく分からず、いつまでも初々しい雰囲気が漂う二人だったため、色んな意味でダンテは心配していた。
「まぁ、何とかな」
「ふーん……
ネロのその返答に、ダンテはどこかもどかしい気持ちになった。というのも、いつもこの手の質問をすると期待している答えが返って来ない。
はぐらかされている訳ではないが、ダンテの中のちょっとした好奇心が二人の仲を少し知りたっがっていた。
(そういえば、坊やって口下手だよな)
そう思ったダンテは、ネロのことをジッと見つめた。
……何だよ」
そんなダンテの視線を感じ、ネロは嫌々な態度を見せつけた。
「いや、ちょっと気になることがあってな」
「ん?」
「お前とあの嬢ちゃんのことで」
またそれか……と思い、ネロは軽くため息をついた。
「だから、特に何もねぇって」
「そうじゃなくて」
「じゃあ、何だよ」
「お前の愛情表現方法だよ」
……は?」
一瞬ダンテが何を言ったか理解できず、ネロは唖然とした。そんなネロにお構いなしに、ダンテは話し続けた。
「女ってさ、言葉で伝えなきゃ分からないもんだぜ」
「何が言いたいんだよ」
「だから……
ダンテは軽くため息をついた。
「キリエちゃんに「好き」だの「愛してる」だの言ってるのかって」
「は?!なんだよ急に……!」
ネロはダンテのその言葉に飲んでたコーヒーを吹き出しそうになったが、それでもダンテの勢いは止まらなかった。
「どーせお前のことだから、ろくに告白もせずに付き合って今に至ってんだろ?「言わなくても伝わる」なんて、甘いんだよ♪」
「何で楽しそうなんだよ……
ネロは思い切り呆れ顔でダンテに話したが、こうなってしまうとダンテはもう止まらなかった。
「ほらほら♪言ってやれよ♪「キリエ、好きだよ」って♪」
「そんなこと、言えるか……
「ったく、照れやがって♪ほら、本当は言いたいんだろ?♪言ってやれよ♪」
……やだ」
「「やだ」じゃねえよ♪男だろ♪」
……
「「キリエ、愛してるよ……」とか♪」
……
「「今夜は君と過ごしたい。ずっと離さないよ……」とか♪」
「~っ!」
上手くはぐらかそうと考えていたネロだが、あまりのしつこさに照れてる気持ちとダンテへのイライラなどがたまってしまい、ついにネロの中の何かがプツンと切れてしまった。
ネロはバン!と思い切り机を叩くと、ダンテを睨み付けた。
 「うるせーな!キリエに「好き」だなんて、言うわけねぇだろ!」
そして、部屋中に響き渡る声でそう怒鳴り付けた。かすかにだが、息を切らしながら肩を上下に動かしていた。
まさか、ここまで感情的になると思わなかったダンテは、少しばかり唖然としてしまった。
「ったく、からかうのもいい加減に……!」
ネロがそう言いかけたとき、リビングの扉が静かに開く音が聞こえた。
扉が開いた先を二人して振り向くと、そこには……

……
「ぁ」
「キ、キリエ……

そう、キリエがいた。

「っ……
ネロとダンテの会話というより、ネロのその言葉を聞いてしまったキリエは、今にも泣きそうな顔で自室へと戻って行った。
「あ……!そういう意味じゃ……!っ……クソ!」
誤解を解かなければならない。
そう思ったネロも、慌ててキリエの自室へと向かった。

「こりゃ大変だ」
一方、ダンテは他人事の用にポツリと呟くと、内心愉快になりながら二人の後をゆっくりと追って行った。

***

ダンテが階段を登り二階の廊下に辿り着いた頃、ネロがキリエの部屋の前で必死に彼女を呼び掛けている姿があった。
「キリエ……!誤解だって……!」
「っ……うるさい……!あっち行って……!」
「キリエ……
どうやらキリエは、二人の会話、ネロの言葉を変に誤解してしまったらしく、ネロがどんなに呼び掛けても聞く耳を持たなかった。その上、扉はしっかりと鍵がかけられており、どんなにドアノブを動かしても開かなかった。
ネロの力なら扉なんて簡単に壊せることも出来るが、そんなことするわけにもいかず。
おまけに、部屋越しからキリエの泣く声が聞こえる。そんな状況に、ネロは扉の前で頭を抱えていた。

「なんだよ。可愛い彼女に苦戦中か?」
そこへ、タイミングがいいのか悪いのか……ダンテがネロに声をかけ、ネロをどかすと扉を静かにノックし、キリエに話しかけた。
「なぁ嬢ちゃん、落ち着いて聞いてくれ。」
ダンテが話しかけると、キリエの泣く声が少し落ち着いた。それを確認したダンテは、キリエに話し続けた。
「俺がちょっとネロをからかっただけなんだ。ネロが嬢ちゃんのこと嫌いな訳ないだろ?誤解させて悪かった」
ダンテがそう言うとシーン……と静まり返る空間。
部屋越しに泣いていたキリエの声も、ピタリと止んだ。
「ふぅ……これで大丈夫だろ」
「ならいいけど……
ネロは内心不安だったが、キリエが泣き止んだのを確認すると、ジッと扉を見つめた。
そして、しばらくすると扉の鍵が外された音が聞こえた。
「キリエ……
 ゆっくりと扉が開かれると同時に、ネロは心配そうにキリエに呼び掛けた。
「嬢ちゃん、すまなかったな」
……
ダンテはキリエの前に立ち申し訳なさそうに謝ったが、キリエは俯いたままで顔を上げなかった。
しかし次の瞬間、キリエは目の前にいるダンテをキッ!と睨み付けた。
「じょ、嬢ちゃん……?」
「キ、キリエ……?」
そして、右手に握り締めていたクッションを思い切りダンテの顔面へと叩き付け、扉をバタン!と強く閉めて、再び部屋へと籠った。

……
……
再び静まり返る空間。
キリエの想像もつかない行動、見たこともない表情に、二人してその場に硬直してしまった。

「あれは、相当怒ってる……
「そうだな」
「そうだな……じゃねぇよ。お前のせいだぞ」
「すみません……
男二人、その場に力なく座り込むと、二人して頭を抱えた。

女性の扱いに慣れてない若きデビルハンター。
女性の扱いに慣れているつもりで生きてきたベテランのデビルハンター。
そんな二人に女神の怒りを静めることは、悪魔を退治することよりも難関だった。




END