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幸希(ユキ)
2025-09-23 00:53:25
1281文字
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君は君
変に考え込んじゃったむっちゃんを見た肥前のお話。
兄やん頼りになる。
「肥前。」
「
…
やーっと離れたのか。」
いつもの明朗な顔はどこへやら。迷子のような顔をした弟分がいた。
「審神者は。」
「寝ゆう。」
「寝た主さまをほっといていいのかよ。」
「起きる前には戻るきに。」
「
……
。」
茫洋とした眼差しで返す陸奥守。審神者が病院から戻ってきてからどうにも様子がおかしい。数刻前にも審神者から「様子がおかしい」と言われていた。まぁ、その理由は、オレからすれば至極どうでもいいものだ。
「で?」
「
……
?」
「何考えてたよ。」
「
…………
主の事じゃ。」
ほらな。そんなこったろうとは思ったよ。
「わしは、主を苦しめちょらんろうか。」
「
……
あ゛ぁ?」
「わしに追いつきたいと願う主を支えてやりたい。けんど、何もしてやれん。慰めも今は出来ん。わしが主の手を取らんかったら、主は───」
「それ以上言ったら陸奥守、オレはおんしゃあをぶち回さにゃあいかんようになる。」
びく、と陸奥守の背が跳ねる。けど、そんな事はどうでもいい。
「陸奥守、お前はあいつか?」
「
……
。」
「お前1人があれの人生変えたなんて思うなよ。あいつの人生は、あいつが選んだものの結果だ。お前を始まりの刀として選んだのも、過去を捨てようとしたのも、お前に懸想をしたのも、自分を嫌悪するのも、あいつが望む望まざる関係なく選び取った道の結果に過ぎねぇ。」
琥珀がゆらゆら揺れる。
「自惚れるなよ陸奥守。支えてやりたいと思うのは勝手だが、あれの人生をお前のものにすんじゃねぇ。お前はお前で、審神者は審神者だ。あれの人生の中で抱える問題をお前のせいにすんな。」
「
………
。」
「大体、その話を主さまが聞いたらどう思うよ。」
「
……
『むっちゃんが悪いとか思ってない!』、かのぅ。」
「あれの目の前でお前の口さがない事言ってみろ。どれだけ怒るかなんて想像つくだろ。」
愚かな程に弟分を想う娘御。その執着に敵うものがどれだけいるのやら。
「だからそんな馬鹿な事考えてんじゃねぇよ。」
「
…
肥前は手厳しいにゃあ。」
「お前がアホだからだ。こんべこのかぁ。」
「馬鹿2回も言うた
…
。」
あぁ、馬鹿だよ。大馬鹿だ。どっちも大馬鹿者共だ。
「支えてぇっつーなら、今まで通り『好きだ』って言ってやれ。お前のその想いが揺らがねぇなら、主さまもブレたりしねぇよ。」
「ほうかの
…
。」
「あれは、【生きる理由】はお前にすれど、【生きにくさ】を“お前のせいにした事”は“1度もない”ぞ。」
「兄やんはよう見ちゅうのう。」
「はっ」
ようやくぎこちない笑みを見せた陸奥守から視線を窓へと移す。秋桜が夜風に揺られていた。
「おら、気が済んだらとっとと帰れ。」
「いられじゃあ。」
「うるせぇ。」
ぶーたれながら陸奥守が立ち上がって障子戸を開ける。
「肥前の。」
「んだよ。」
「おおきにの、兄やん。」
「
……
。」
ボスッと布団に身体を投げ出した。
「こんまい頃となぁんも変わっちゃあせんの。」
柔らかい笑みを瞼に残しながら、オレは目を閉じた。
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