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Public ノンカプ
 

【ノンカプ双子ss】なんのだか分からないリモコンとふたごのはなし

メリバっぽい+🌟が病んでいて💫がかわいそうなので本当に本当に何でも大丈夫な方向けです。

「なぁ、これって何のリモコンなんだ?」
クロードの声に、僕は解体していたタブレットから目をうつす。タブレットの調子が悪いから見てほしいと言われたのが半刻前ほど。待っている間暇ならそのへんを片付けておいてと頼めば、「修理代がわりだな」と笑って引き受けてくれた。そしてクロードが手にしているのは、いつかルタが壊してしまった何のものかわからないリモコンだった。
「それはその辺に置いといていいよ。よくわかんないから」
「そんなんで良いのかよ。大事なリモコンだったらどうすんだ」
クロードの言葉に僕は「だったらまた作るからいい」と短く答えた。呆れたような声を聞きながら、タブレットに再び向き合う。どうやら基板周辺にホコリがたまっていたのが不調の原因ではないかというのが僕の見立てだった。羽根箒や綿棒でホコリを丁寧に取り除いて再び組み直す。
「これでどうかな」
電源を入れると素早くホーム画面が立ち上がった。クロードに渡せば画面をサッとスワイプしてあれこれ操作する。
「あ、いい感じ。前はメッセージアプリを立ち上げるだけでもすげぇ時間がかかったから。しかもすぐ熱くなったし」
良かったと僕は答えて、それから棚の上にぽつんと置かれたリモコンに目をやった。いつか、ルタが壊してしまったリモコン。直しはしたけれど(ボタンが割れてしまっていたのだ)まだ試運転はしていない。
「そこのリモコン、取ってくれる?」
クロードは僕の言葉に「やっぱり気になるんだな」と笑いながら手渡してくれた。
国に帰るというクロードを見送った僕は、改めて城の中を見回す。思ったよりはやくタブレットが直ったこともあって、次の仕事までにはまだ時間があった。せっかくならこの空き時間でリモコンと対になる機械を探そうと思ったのだった。
裏を見れば何か文字が書いてあるけれど、上から深い傷が入っていて何と書いてあるのかは読み取れない。工房名か商品名が読めれば何のものかはすぐにわかるのに、と思う。
薄桃色のつるりとした本体に、紫、黄色、水色の星形ボタンがみっつ並んだなんともファンシーなリモコン。対になるものもこんなデザインなのだろうか。おもちゃのようにも見えるそれだけれど、修理の際に中を見たときはだいぶ複雑な作りになっていた。ボタンを長押ししたときや複数回押したときには違う信号が出るようになっていて、数十種類の動作ができそうだった。
(本当に何のものだろう
結局次の仕事の直前までうろうろとお城の中を見たけれど、これというものには出会えなかった。


「今日はずいぶんお城の中を歩いていたみたいだけれど、何かあったの?」
夕食時にルタに聞かれた僕は、ポケットに入れておいたリモコンを取り出した。これの対になる機械を探していたと説明する。
「あぁ、前に俺が壊しちゃったリモコンだ。そっか、結局何かはわからずじまいだったんだっけ」
「うん。いろいろ見たんだけど何だか違いそうで
そっか、とルタは少し思案するようにリモコンを見る。それから、にこ、と笑って僕を見た。
「ねぇ、しばらくこのリモコン、借りてもいいかな」
「え?いいけど何に使うの?」
「見た目がかわいいから、スケッチでもしようかなと思って」
ルタはつるつるした表面を撫でながらそう言う。なるほど、と僕は納得して「もちろん」と答える。色味といいフォルムといい、確かにルタが好みそうなものだった。
「結局何のものかわからないし、好きなだけ持っていてよ」
僕の言葉にルタは「ありがとう」といって笑った。



☆☆☆


俺は黄色いボタンを3回連続で押す。俺とおそろいのパジャマを着た彼は一瞬止まってから、ふらふらと自室のベッドへに潜り込んで目を閉じた。スリープモードに切り替わったのだ。
「やっぱり予備があったほうが安心だよね」
夕食時に彼から受け取ったリモコンとそっくり同じものをポケットから取り出す。予備のリモコンを壊してしまったとき、俺は自分の機械の弱さを呪った。彼自身のリモコンを本人に直させるのは不安もあったけれど、素直な彼は果たして綺麗に直してくれた。そのうち何らかの口実をつけて取り戻そうと思っていたけれど、こんなに早くすんなり手に入れられるとは。
「おやすみ。また明日」
ベッドの中で規則正しく寝息を立てている彼にそう声をかける。健やかに眠る彼の水色の髪をかき分ければ、異国の工房の名前が刻まれていた。メンテナンスや修理のためには近い工房を選んだほうが良かったのは分かっているけれど、細心の注意を払うべく遠い遠い工房に依頼したのだった。おかげで気軽にリモコンの修理も頼めず、やきもきしていたのだけれど。
眠る彼をもう一度見た俺は自分の部屋へと向かう。
「ただいま、クラ」
俺だけが自由に出入りできる結界の中には、彼によく似た弟がいた。弟ーークラークステラは疲れた顔でこちらを見る。
「ルタ
「良い子にしてた?」
問えば「してた」とクラは弱々しく答える。
「してたから、ここから出して。主に会いたいし、騎士としての仕事もちゃんとしたい」
俺は首を傾げる。そんなことは『彼』が全部してくれているから大丈夫なのに。それともそれは口実で、どこかへ行ってしまうつもりだろうか。
「いいんだよ、クラは俺のことだけ考えていたら」
「ルタ、僕は
「それとも、俺から離れたいの?」
ちがう、とクラは泣きそうになりながら答えた。クラをここに閉じ込めてからどのぐらいたっただろう。主にもしばらく会わせていない。顔を見れば、少しやつれたかもしれないなと思う。それでもそのくらいの変化は俺の許容範囲だった。俺から離れてしまうより、ずっとずっといい。
「どうして泣くの?俺がいるのに」
ついに涙をこぼし始めたクラを抱きしめる。かわいそうに。あとでホットケーキを焼いてあげなくちゃ。そう思いながら。


泣きつかれて眠ってしまったクラの頭を軽く撫でて、ポケットからふたつのリモコンを取り出す。クラも彼のようにこのリモコンで簡単に操作できるような存在だったらいいのに、と俺は思う。そうしたら俺から絶対に離れていかないようにできる。
例えば俺の持つ魔力を全部注ぎ込んだら、そんなことが叶うだろうか。そんなふうに思った俺は、魔法書を探しに書庫へと向かった。