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饗李
2025-09-22 00:59:35
1754文字
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惚れ直し
跡部夢、名前変換有。
跡部景吾に惚れ直している話をする話。
饗李
饗李
饗李
カチカチ、とリモコンを弄る。流石に液晶を見すぎただろうか? と伸びをした。まだ見終わってないし
……
なんてもう一度リモコンを手に取れば、後ろから抜き取られていく。
「
……
何見てんだ」
「景吾さん!」
さっきまでお風呂に入っていた景吾さんが後ろに居た。洗面所でスキンケア含めて全て終わらせてきたのだろう、首にタオルはかかっているが、髪は乾いていて。私の手から抜き取ったリモコンはそのまま、隣に座ってくる。
「景吾さんの過去の試合を見てたんですよ」
「お前は毎回観に来てるだろ」
「そうなんですけど、見返したいので」
「
……
見返したい?」
少しだけ空いていたソファーの隙間を埋めるように座って、私の髪を梳く。意味もなく彼の指が髪の隙間を縫って、離れて
……
を繰り返す。最近気付いた、景吾さんの癖。リラックスしているときにしがちな事だ。
「そうです、見返したいんです」
「見返すにしては、随分と時系列も無作為だと思うが」
「んー
……
それはそう、なんですけど」
不思議そうに首を傾げる景吾さんに、なんて説明すればいいだろうか。
……
別に、まあ、時系列とかは正直関係ないのだ。私が見ているものはひとつだけだから。理由も変に隠す必要は、ないのか。
「
……
景吾さんに、惚れ直しているので」
「
……
惚れ直している?」
「はい。テニスしてる景吾さんを見ると、初めて景吾さんがテニスをしているのを見た時
……
好きになった時を、思い出すので」
小さく頷けば、じ
……
とこちらを真っ直ぐ見てくる景吾さんを、見つめ返す。少し
……
かなり照れくさいけれど、ここで逸らしたら負けたような気がするから。何秒見つめていただろうか、ふっと景吾さんが目を細めて、緩く笑った。
「そうか
……
そうか、俺に惚れ直してるのか」
「
……
な、なんですか、おかしいですか」
「いいや、違う。逆だ」
「ぎゃ、逆
……
?」
「
……
愛おしくて、たまらなくなったんだよ」
私の髪を梳いていた手が止まれば、ひとつ掬ってキスを落とした。突発の行動で、顔が熱くなる。
「せ、せんぱ
……
」
「昔の呼び方が出てるぞ、
饗李
」
「あ、あの
……
」
咄嗟に口から出た言葉は、学生時代の呼び方で。卒業してから暫く経つけれど、慌てていたり照れてしまうとつい出てしまうのだ。
久し振りの呼び方でご機嫌になったのかは知らないが、先程までの困惑は見えない。向こうのペースに、なっていく。
「いつでも、お前は俺しか見てねーな」
「い
……
まさら、じゃ、ないですか」
「それもそうかもな。
……
ああ、そうか、お前が昔の俺の試合を見返す時。大抵は直近に俺の試合があったな?」
「
……
そう、ですが」
「
……
最後まで言われたいか?」
「結構です!」
ふいっと顔を逸らす。あそこまで言ったのだ、多分景吾さんは私がかっこいい彼を見たくて見返しているのはわかっているのだろう。それこそ、得意の
眼力
インサイト
で。
「先に寝てますからね!」
「おいおい、拗ねてくれるなよお姫様」
顔を逸らした勢いでソファーから立ち上がれば、景吾さんも私を追いかける様に立ち上がる。まぁ、結局同じベッドで寝るから先に寝るも後に寝るもないのだが。
寝室に入り髪留めをベッドサイドに置けば、ベッドに入り込む。後に入ってきた景吾さんが私を向かい合うように抱き締めてくれば、表情が見えないように景吾さんの胸に顔を押し付けた。頭上で笑い声が聞こえるが、知らないフリをする。
……
素直に惚れ直していると言わなきゃよかった、自業自得だ。
「昔に比べれば、随分と素直になってきたな?」
「
……
心読まないでもらえますか」
「読むまでもねぇよ、見てれば分かる。分かりやすいからな、
饗李
は」
「分かりやすくて悪かったですね
……
」
「隠されるよりは有難いが」
抱き締めていた彼の手が、そっと私の頭を撫でる。優しい手つきのそれに、心臓がどきどきしてしまう。よく、頭は撫でてくれるのに。今回はやたらと心臓がうるさい。
……
昔のことを、思い出していたからだろうか?
「
……
もう寝ますからね」
「嗚呼。
……
お休み、
饗李
」
髪にまたキスを落とされる。
……
そういう、キザな事をすぐするのは、昔から変わらない。そういうところも、好きなのだけれど。
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