最近、オレはよくビデオカメラを回している。対象はダチである叶黎明。時間とかは特に決まっていない。二人で会っているとき、それから他の連中がいるときでも。オレの手が空いていればビデオカメラを回す。それが、この前叶と行ったギャンブルの賭け代だった。
銀行でするような大掛かりなものではなくて、友人同士のこれに負けたら夕飯奢りな、くらいの軽いもの。ただオレがよくつるむ連中には、夕飯奢りくらいのはした金は賭け代になるわけがなく。もっぱら買い出しやつるんで遊ぶ時の会場提供など、行動で示すものが多かった。だから叶にこれでオレのこと撮ってよ、と箱から出してすらいない新品のビデオカメラを差し出されても分かった、と二つ返事をしたものだ。オレが賭けをして負けたのだから、男に二言は無い。予め用意されていたってことは、オレに勝つ気満々だったのかよ、とは思うが、負けるつもりで勝負を受けるギャンブラーはいない。
その点オレは勝っても叶に何をさせるか決めてはいなかったので、この意識の違いが勝敗を分けたのかもしれないと今になって思う。
話を戻そう。オレは叶との賭けに負けて、叶を撮ることになった。それもただ撮ればいいというものではなく、オレが、一番好きだと思う叶をカメラに収めて欲しいというものだった。
「ガチ恋向け動画撮りたいんだよね、たまには。でも女の子に撮ってもらったら炎上するだろ?そこで敬一君の出番ってわけ」
「おう……うん?」
理解が出来るような、出来ないような。理屈が通っているような、通っていないような。それなら真経津や村雨、天堂でもよくねえか、とここまで考えてどいつもこいつも素直に撮ってくれるような奴らじゃないことに思い至る。なるほどだからオレとの賭け代に。まあ、よくは分からないが、とりあえずオレは叶を撮ればいいんだよな?
「うん。カメラを通してオレを見つめて。オレのことだけ考えて、オレのことで頭をいっぱいにしてよ、敬一君」
あー楽しみだな。敬一君はどんなオレが好きなんだ?
そう言ってオレに笑顔を向ける叶に、かつて試合で敵対した時の観測者としての叶が重なる。負けはしたけれど、得るものも多かった試合。
「……さあな」
観測者の叶をカメラ越しに見つめることで、きっと何かを得ることができる。
そう考えたオレは早速箱を開けて、カメラを構えた。
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