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望月 鏡翠
2025-09-21 00:38:18
1014文字
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日課
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#1852 赤い丘
#毎日最低800文字のSSを書く
人の噂が、どうやら故郷で何か起こったらしいということを知らせた。
橋が流されたなら橋が流された、地滑りであれば地滑りと、遠からず明らかになり、元に戻るまでどのくらいだという目処も立つはずだった。
しかし何が起こったのか杳として知れぬまま、日はすぎた。
何かがおかしかった。とても良くないことが起こっているという予感は強まりつつあった。何もわからない時間が長引くとともに、村に残してきた家族のことが心配になっていった。
村の入り口に死体の山があったらしいという話が届いたとき、父は最低限の荷だけ持って村に向かって出発していた。
もちろん、まだ幼かった彼もついていった。そのときの父親は急いでいて、息子のことなど眼中になかった。街を出てしばらくしてから、息子をどうするべきなのか思い至ったようだった。しかし一人で返すわけにもいかない。
結局村に向かい、その光景を目にすることになったのだ。
最初に感じたのは匂いだった。狩人からするような悪臭。生臭い。
村の入り口に自分が知らない丘ができていた。川が地面を赤く染めている。それを発見した途端、父は半狂乱になった。
息子に絶対にその場から動くなと言いつけて、人でできた丘に向かって走って行った。その中に、妹や弟や、母が混ざっているかもしれなかった。それを確かめに行ったのだ。
動かないようにとわざわざ言いつけられずとも、その場から動けるはずがなかった。
いあっまでに見たことがない濃厚な死の気配に、その場から動くことができず腰を抜かして震えていた。父は荷物の全てを投げ出して、走って行った。
そして、それに捕まった。
空から飛来した。カワセミの翼のように深い青い色をした輝く鱗をもっていた。地面に影がさし、急速に拡大した。
その姿が見えるようになった頃には、もう遅かった。
鋭い爪が、目の前で父親を引っ掛けた。そのまま天高く飛び上がり、やがて悲鳴が上から徐々に近づいてきた。
父親は、死体の山に加わった。
その生死は確かめなかった。
近くにいた彼が襲われなかった理由は、推測することしかできない。丘に近づかなかったからか、逃げることも叫ぶこともしなかったから空かは見えなかったのか、ともかく、蕎麦屋の主人は生き延びた。そのあとは村に向かう狩人に助けを求め、物資を分けてもらいながら街まで引き返した。すれ違った人間は、誰一人帰って来なかった。
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