haruon1018
2025-09-19 21:54:01
8989文字
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婚礼(セクピスパロディー)

セクピスパロディーの長晋(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20994232)が鎧と白無垢で婚礼する話。
※原作の婚礼(蛇狸CPに登場したネタ)を色々弄ってます。
注意)へクマン、ぐだマシュ、龍以、川中島コンビ要素あり(前者ほど濃いめ)
tksgさんがmr君の槍(物理)を受け入れるマジック展開あります。
その他)ロウヒさん(三臨)が登場します。

「招待客のリストはこれで……よしこれを読み込ませれば一瞬で席次が決まるはずだ」
 見合いをして番、斑類式の結婚も済ませた森と高杉だが「勝蔵の花婿姿が見てみたい、いや見たけどネ、お色直し的な☆」という信長の一声で披露宴を行うことにした。
 確かに斑類の結婚では高杉は白無垢だったので、タキシードや紋付き袴で挑みたい思いもある。
 猿人と呼ばれる一般人には同性の結婚自体が珍しいが、同性でも番となり、子どもを宿すことの出来る斑類ではごく当たり前のことだ。
 そんな斑類だが籍は入れても挙式を挙げることは少ない。
 斑類はよくも悪くも性に対するモラルが薄い、種違い、腹違いは当たり前で夫と妻が共通の夫を持つなんて事もある。
 斑類にとって結婚とは子孫を残すことであり、そこに惚れた腫れたはあまり重要ではない。
 けれども二人はそんな斑類のモラルなど踏みつけるように互いだけを愛することを誓った。
 その辺りは斑類の婚礼、天上に築かれた橋を渡り、日本の代表である信長と欧州のロウヒが厳かに契約を行い、猫又から熊樫、はたまた翼主までの斑類立ち会い、二人が唯一無二の番であることを認められた。
 今回、披露宴に呼ぶ斑類も儀式に参加した人々だが、その番や縁の人物を呼べば両者ともざっと五十人は招待客を招く。
 提案者の信長に云わせれば「随分控えめじゃの、まぁ、そなたらがそうしたいなら良い」と云われたが、後日斑類専門の週刊誌に「格式あるホテルでセレブ挙式! 王族をはじめ一流スターが集結」という見出しの後に、いかにこの披露宴が桁外れかを書き綴ったあと、軽種である私も参加したかったと締めくくられたが、あの場に軽種がいれば一発で躯が持たないはずだと、高杉は週刊誌を丸めながらふと思ったのだった。
「おや? 可笑しいな、エラーだと、この僕が開発したのに?」
 斑類のヒエラルキーと政財界でのステイタス、友好、敵対関係などをこの日のために開発した高杉だが、何度操作しても「エラー」の文字が出る。
「席次なんてのは脇に身内を固めて、あとはざっくりと決めて動かしていけば良いんじゃねぇか」
「そのざっくりが大変なんだぞ、……これが式を挙げる前に喧嘩する原因か」
「何ごちゃごちゃ云ってやがる、名簿とパソコン少し借りるぞ」
「うん、」
 無駄な喧嘩はしたくないと高杉はパソコンを貸したが、内心難しいだろうとほくそ笑んでいた。
「これ、お前の方は吉田がスピーチするし、大食感だからこの列にしたがもし、」
「小一時間で作成して、尚且つ他のプランまで提案するとは仕事が出来る過ぎるにも程がある」
「あっ舐めてるのか、こんなもん仕事に比べればなんともねぇよ」
「惚れたぞ、森君」
「惚れてろ、で、こんなもんで良いのか」
「あっ、うん、もう少し読ませて、」
 式場側から用意されたテンプレートを元に配置された招待客の名前を眺め、確認した高杉は頷いた。
「うん、いいよ、あとは肩書きだね、今度は僕がやろう……藤丸君はどうする?」
「殿様はパン職人でいいんじゃねぇの」
 森と高杉の友人である藤丸は、彼のスキルや学歴では珍しくパン職人の道を選んだ。
「そうだけど、僕と君の友人だろ、」
「殿様は殿様だし、そこで詰まっていたら日どころか、延々と終わらないぞ」
「それもそうだ、それにしてもまさか藤丸君が森君とも友人で、しかも先祖返りなんて面白い存在になっているとは世の中何があるか分からないね、」
 先祖返り、猿人の繁殖能力と斑類の能力を引き継いだ奇跡のような存在はごくごく普通の男子中学生で高杉の同級生であったが、高等部に進級する春休み、脱線事故に遭い、先祖返りとして覚醒した。
 そもそも藤丸が出掛けた理由が高杉のお見舞いだったため、申し訳ないとすぐにでも謝りたかったが、当時は、春休み明けに「親の都合で転校した」とだけ聞かされ、メールでのやりとりは出来たが、脱線事故のことも先祖返りで森がいる学校に転入したことも伏せられた。
 これは先祖返りの貴重さ故、また藤丸が能力に慣れていなかったので、先祖返りに関連するワードを学園や彼の保護した団体以外に漏らさぬよう暗示を掛けられていたのだから仕方がない。

 そんな藤丸と高杉が再会した話をするには、高杉が白無垢を纏って厳かに結婚した話を語らなければならない。
 森から婚礼は、橋の上であげると聞かされた高杉は、へぇと返事をしたが、まさか本当に橋の上で、しかも文字通り雲の上でやるとは思っていなかった。
 さらに信長に「伴侶を迎える重要な婚礼で、欧州の斑類も喚ぶ」などと説明を受けたが、何もかも初めてでちんぷんかんぷんだ。
 それよりもウキウキで着付けられた白無垢に高杉は少しばかり、本当に少しだけだが男としてどうなのかと思っていた。
 橋の上に立つ、数週間前。いきなり衣装合わせじゃと信長が二人の住む家にやってきた。
「何の、」と聞くより先に車に押し込められた高杉はホテルの一室に軟禁されていた。
「型が決まっているからこそ工夫しがいがある」「ウェディングなら任せて」と部屋に入ると、待っていたとばかりに、上背のある赤毛の女性と小柄というより妖精のような少女が二人に取り囲まれ、衣装についてあれこれとしゃべり出した。
「結婚は良いがなんで、僕が白無垢なんだ」
「そういう決まりなので、」
 ピンクの髪の少女はにっこりと笑い、最高の衣装を作るからと更に張り切る。
「白無垢とは云っても、赤も入れる、でも綿帽子には入れずに、襟だけでもいいかもね」
「元の白さを生かすならこの白、打ち掛けは錦織もあり……
 いつまでも続く会話を高杉は諦めなが、ら眺めていた。
 そうして、二人の職人が腕によりをかけて仕上げた白無垢は、打ち掛けは錦織だというのに軽く、天女の衣というのはこのことではと思うほど真っ白で穢れがない。
 その下に纏う掛下は恐らく最上級の正絹だと分かる艶やかな光沢を持っている。
 衣紋掛けに広げられたときにしか拝めなかったが、裾には梅に鶴と縁起模様が刺繍されている。
 ピンクの髪の少女ーハベトロットが口にしたとおり、襟には赤い紅が差している御陰で高杉の赤い髪が一層、綿帽子の中で映えた。
 総額を考えただけで恐ろしいと高杉は珍しく庶民的な考えが浮かんだが、そんなことが軽く思えるほど森の仕上がりは素晴らしかった。
「おっ、大殿が当日までのお楽しみって云っていたがなるほど侘びてる」
……はわっ、」
 濃紺の上衣に空色の袴、その上に鎧装束を纏った森は花婿というよりは武将に見える。
「なんだよ、感想は?」
「おなか冷やさないでね……
 草摺と呼ばれる下肢に巻かれた鉄板と脇盾と呼ばれる同じく鉄板の僅かな隙間に露出された肌色を見て高杉が震えた声を出す。
「いつも腹出しているやつに云われたくねぇ……
「その似合っている、うん、これ以上聞かないでくれ、」
 綿帽子が合って助かったと顔を伏せたが、森は高杉の小さな顎を持ち上げまじまじと見つめる。
「なんだ照れてるのかよ」
「照れるさ、見蕩れるさ! もう……
うるうると瞳に涙を浮かべる高杉が妙に愛おしく、森は思わず、口づけしたくなったが儀式を中断するわけにもいかず、森はギュッと腹に力を入れて耐えた。

「どこから馬……いや、どこまで続いてるんだ」
 着付けを終え、扉をあければそこは神域だった。
 現から神域へ恭しく森に手を引かれれば目の前に婚礼を祝うように着飾った黒毛の馬がいた。
「百段って名前でオレの馬だ、婚礼の場はあの山を越えた先だな」
「丁寧な解説ありがとう……
雲の上に掲げられた橋よりも更に高い山をいくつか通り越した先に一際目立つ山がそびえ立っている。
「よ、お二人さん、本日はお日柄も良く。お喋りは良いが、そろそろ声は抑えておけ」
……オレはマンドリカルドに頼んだつもりだが、」
「あの子なら、露払いに行かせた、」
 茶色の髪と同じ色の髭を生やした男の名前は、ヘクトール。
 翼主の彼を知らない者はいないほど有名人だ。
「人類と俺が尊敬する」と付け加えてほしいという声が高杉達のはるか先から聞こえてきそうだったが、知らぬフリをしていれば、コホンと咳払いが聞こえた。
「護衛だったらワシ一人でも十分じゃき、けんどまぁ御寮さん守るんなら人が多い方がええか、」
 気づけば、派手やか羽織り袴姿に番傘と伊達な装いの岡田が立っていた。
「岡田君! 君まで何で」
「護衛じゃ、ワシも挨拶した方がええか、」
「近習だろ、他に配置の変更は、」
森がヘクトールと話している間、高杉は小声で岡田に訊ねた。
「仰々しい婚礼なのは分かってはいるが、なんだよコレ……
「諦めぇ、あの若造があちこち走り回って人呼んで来たんじゃ、」
「岡田君は良いとしてあの人翼主だぞ、よく呼べたな」
 岡田は森と高杉の共通の友人だが、ヘクトールは名前の通り外国の人間でそれなりに忙しい身でしかもやんごとない身分のはずだ。
「なんでも森の学友の知り合いらしいが、ワシにもよう分からん、最初は違うヤツと組む予定があっちが護衛やるとか言い出して、」
「オジサンの噂話するのは良いけど、控えめに」
「オレの花嫁に触れようとするな、」
 ヘクトールが高杉に触れようとすれば、森が咄嗟に胸元に隠し、そのまま馬に乗り込むと威嚇するように睨んだ。
「っ……!」
「やれやれ、口を封じておいた方が身のためだって教えようと思ったんだけどね」
「はん、見せつけおって、借金帳消しにされても割が合わん」
 同じく牽制された岡田はわざと悪態付き、用意された笠を被るとそのまま口を閉ざした。

 山をいくつか越え、橋の終わりが見えてると高杉が馬から下ろされる。
「森君、もう降ろしてくれ……
 近習の二人も退いたとは云え、人の気配を感じるこの場所で抱きかかえられたままと云うのはどうにも気恥ずかしい。
「花嫁ってのは馬に乗ったら大殿が来るまで地面に足を着けることは許されない、」
「地面なんてないじゃないか、雲の上なんだから」
「屁理屈云うな……指南役呼んでおけば良かったか」
 森は熊樫の重種だけありそれなりに婚礼の場に呼ばれていたが、高杉は森との接触もあってか呼ばれた経験がない。
 この先は神域となるのでろくに喋ることも出来なくなると森が考えていると巫女姿の阿国が舞うようにして二人の前に立った。
「森様、高杉様、本日はめでたい席にお招きいただきまして本当にありがとうございます」「阿国君、」
「森様が何を考えているのか阿国はピンと来ましたが、婚礼とは一世一代のセレモニー、頭であれこれ考えるよりも思いのまま振る舞った方が良いこともございます」
「人の頭覗くなよ」
「覗いてはおりません、お顔に出ているだけ、さてお二人に華を添えるべくこの阿国、渾身の舞を披露させていただきます、」
 ぺこりと頭を下げると派手やかな表情が一変して、場に相応しく清らかな巫女の顔になる。鈴の音が聞こえればその清楚さは震えるほど高まり、それと同じように場の空気も浄化される。
「それではお二人とも末永く添い遂げますように、」
 自分の役割は終えたと阿国が後ろに下がれば、高杉の後見となる武田が前に出る。
「この武田が後ろにいるのだから問題ない、安心しろ」
全身赤で統一した鎧姿の武田が前に出ると未だ主のいない椅子の前に、目録と御神酒が置かれる。
「この後は何を、」
「喋るな、ここからは何があっても口を開くな」
 呑み込まれるか戻れなくなると森が高杉の唇に「封」の印を付けた。
「~~~~!」
 立つことを許された代わりに、言葉を封じ込まれた高杉だが、結果的に良かったと数分も経たぬうちに思うようになった。
 それは武田の次に現れた信長の覇気が恐ろしく漲っていたからだ。
「今日の良き日を迎えられること、大変嬉しく思う」
 凜として立つ様はさすが二重魂元の申し子である信長である。
 普段は可憐な黒髪の少女だがここでは妖艶な赤毛の女性へと変貌してる。
 先ほどの武田は鎧姿であったが、信長は赤一式の三つ揃えスーツを纏っている。
 奇抜なと思う余裕などなく自然と頭が下へいき、森も高杉も信長の言葉を待つ。
「頭を上げろ、蘭丸。勝蔵に槍を」
 奇抜な格好の負けず劣らず兄と同じく青の装いだがほとんど布地のないドレス姿の蘭丸に高杉はぎょっとしたが、本人は何も気にせず黙って信長の指示に従い森に槍を渡す。
「頃合いか、」
 槍を持ち、毅然とした態度の森を見て笑みを浮かべた信長は呪文を口にし、北の大魔女ロウヒを喚んだ。
「モイ、ロウヒだぁよ、オッソとキャールメの結婚だと聞いてやってきたが、うん立派なオッソとなかなか面白いキャールメだ、それで二人とも覚悟は出来てるか」
 ヒラヒラと羽を飛ばしながらやってきた女性は、翼をしまうことなく、足も鳥のまま二人の前に立ち陽気に笑う。
「オレの槍をこいつに捧げる、そこにあるのはその鞘だ」
「そうだ、賢いオッソ、あとで飴をあげよう。キャーメルの方はどうだい、」
「ン……
「何もめでたい席で口を封じることないだろ、可哀想に、」
 ロウヒは空中で指を回すと高杉に触れることなく、封印を解いた。
「森君の槍を預かる……?」
「そうだ、オッソの槍を受け入れるかどうかはキャールメが決めること、ただし少しでも疚しいことがあればその槍がお前を切り裂く、出来るか」
「愚問だよ、僕が森君を拒むことなどない。ただ一つ不満があるなら僕は守るだけじゃなくて、森君を守りたいんだ」
 槍で貫かれるというのに高杉は速攻で答えた。
 微笑むようにけれど意志の強さを感じさせる台詞と息づかいにロウヒが歓声を上げる。
「ヒュヴァー! 上出来だ、良い番に巡り会えたようだね、ロウヒも嬉しいよ」
 うんうんと頷いたロウヒは暫く無言でいたが何かを閃いたのか、満面の笑みで二人に提案する。
「それなら、キャールメの持っている刀も出すと良い、オッソの中に入れてやる」
「オレは良いぜ、」
 オレも疚しいこと何もないと気張る森に高杉は、懐刀を取り出し照れ隠しに都々逸を詠う。
「おまはんの心ひとつでこの剃刀が、喉へ行くやら眉へやら」
「刺すならここにしとけ、オレも同じ所貫いてやる」
 刀を持っていない高杉の手を引くと森は、肌の露出している腹部に触れさせた。
「森君……
 準備が出来たとばかりに二人が刀先を相手に向ける。
 高杉の方は短刀だったがどういう訳か太刀ほどの長さとなった。
 深くは考えずに森の槍を受け入れることだけを考えていれば、森が真剣な目で高杉を見つめる。
 交合にも似た行為を人前でやる。羞恥の極みのはずなのに高杉は祝福に包まれながら、槍に貫かれる。
「あっ……
 血、肉、骨すべて通り越し魂まで潜り込んでいく槍が高杉の軸となるとどうしようもなく涙が流れたが、それはすぐと拭い取られ代わりに森の厚い口づけが降り注いだ。
 
「おお、さすが、既に馴染んでおる。めでたいの、これにておぬしらは正式な夫婦じゃ、」
 眩い光に包まれる二人を見て信長は高らかに笑う。
「一仕事終えたことだし、帰ろうか、近いうちにまた喚ばれそうだが本当に近頃は良くなったね。そうだ、サルミアッキをあげないとね、二人で食べるといい」
「彼女一体何者なんだ」
「北の大魔女って喚ばれてる、翼主? よく分かんねぇけどオレが小さい頃からあんなんだった」
**
「勝蔵、先鋒の奴らはおぬしらの晴れ着を見ておらん、見せてくるが良い」
「おう、さすが大殿」
……まぁ、挨拶はしといた方が良いよな、岡田君達がアレなら先鋒もコスプレ集団か」
「婚礼をコスプレとか云うな……
ではなんと言えば良いのかと聞けば、「コスプレだな」と森が答えた。

「本日はありがとうございます、高杉晋作です」
「マシュ・キリエライトです。本日はおめでとうございます」
 短いスカート姿だが白を基調とした清潔感のある薄紫色の髪をした少女が頭を下げる。
「マンドリカルドっす、おめでとうございます」
 なぜ黒束帯と戸惑いながらも着こなす三白眼寄りの青年に続いて、
「カイニスだ、なんか森に写真見せられていたから初めてって感じしないな」
 髪を逆立たせ、白と黒の着物に所々紅と金色で飾った着物を腰でまとめた翼主が高杉の方を見て笑う。
「オジサンも自己紹介いる?」
「あとは殿様だけど、おっ殿様、こっちだ」
「ごめん、あっ……
 マンドリカルドと色違いの赤い束帯を黒髪と碧い瞳の青年に高杉は思わず声を上げた。
「藤丸君!!どうしてここにと云うか君、斑類だったっけ、あれ……
「久しぶりだね、高杉さん、話せば長くなるけど、その前に話せる? あっ大丈夫、話せるみたいだ、実はね……
 藤丸は自分が先祖返りであることを話した。
「そんなことが、何というか」
「全然気にしなくていいよ、それよりずっと話せなくてごめんね」
「暗示のせいだろ、僕も掛けられていたから分かる」
「高杉さんに森君のこと話すと遮断されていたのそのせいか」
「なんだ知り合いか、殿様紹介しようと思っていたけどよ、流石はオレの殿様」

「おやおや楽しそうですね、高杉なにがしこの度はおめでとうございます」
 藤丸達と話しているとにこやかな顔で長尾が挨拶をしてきた。
「いい加減、名前覚えろ、しかしこれだけの婚礼はここ十年なかったから浮かれたいのは分かる、ん……どうした」
「イヤ、欧州じゃそこそこあったから、こっちとは形式が違うっすけど」
「お前さん、覗いたら入り込んだもんな」
「っす、あれはそのヘクトール様追いかけていたら偶然というか、俺なんかが急に入り込んでも迎えてくれる器のデカさ、流石は人類と俺が尊敬するヘクトール様」
「なんか余計なもんにツッコんだか」
「晴信、馬に蹴られちゃいますよ、困りますよ、今から川中島やるのに」
「なんでそうなる……
「神域に入って溢れる力を発散するには川中島、槍を仕込まれた高杉なにがしも強そうですが、流石に野暮なくらい分かりますよ、」
「槍を仕込む、日本の婚礼って物騒……
血なまぐさいことを考えているマンドリカルドに訂正しようと高杉が口を開こうとすれば、森にそっと耳打ちされた。
「欧州も同じだ、ただあのおっさん、どうやら知られたくないようだ、あとは分かるな」
「分かる、馬は乗るに限る、けど欧州の場合はまさかウェディングドレス」
「ウェディングドレスか、ハベトロットが張り切りそうだね」
 高杉の言葉を拾った藤丸が一人心地にしゃべり出す。
「藤丸君、僕の格好を見て思うことは、」
「あ、えっと似合ってる?、いや、違う……森君パス、」
 友人とは云え、花婿の前で花嫁を褒めていいのか迷う藤丸が森へ答えを投げた。
「褒め言葉を聞きてぇならオレだけにしておけ」
「どいつもこいつも浮かれやがって、まっ今日はそういう気分だよな」
「せ、先輩、あまりウェディングの話をすると、ほら」
「任せてくれ、マシュの花嫁衣装!」
「ドレスも良いですが、お色直しに白無垢もどうですか」
 後ろに控えていたハベトロットとミスクレーンがウェディングドレスという言葉を聞きつけ、やってきた。
「おい、なんかぐだぐだしてきたぞ、森君、まとめろ」
「あ~このあと焼き肉行こうと思ってるが良いよな、」
「婚礼の日に焼き肉? 森お前な……
 この中で比較的に巻き込まれていないカイニスがツッコむが森はそうかと首を傾げた。
「婚礼のあとって腹減るだろ、料亭でも良いと思ったがどうせなら盛大に騒ぎてぇしな」
「オジサンは……
「あ、あのよければ一緒に、じゃないと」
「川・中・島、おや? そこの翼主さんもなかなかに強い、どうです一戦、」
「他人を巻き込むな、分かった、こいつは俺が引き受ける、……森、ウチが後見ってことを忘れるんじゃねぇぞ」
「云われなくても、後見が誰だろうと俺の晋作は、花嫁だ」
ギュッと抱えられた森にああ幸せだなと感じながら高杉は賑やかに婚礼を終えた。

現へ戻り、焼き肉に行くのならと高杉は着替えた後、岡田を探した。
「岡田君、焼き肉パーティーするけど君も来るだろ。ただ酒だぞ」
「ただ酒……酒を浴びたい気分じゃが、用事があるで帰るわ」
「おや珍しい」
「おんし、ワシをなんじゃと、まぁええ、流石に婚礼出たくらいで棒引きは格好がつかんき、森に云うちょってくれ、ご祝儀分も含めて次会ったときに払うって、」
「義理堅いな、岡田君は、うん、岡田君、今日はありがとね」
「むず痒いこと云うちょらんと、はよ、行き、」

「以蔵さんその言い方は……お疲れ、高杉さん、」
 岡田と話しているとするりと坂本が話の輪に入ってきた。
「坂本君、君も来ていたのか」
「うん、以蔵さんは近習だったけど僕は御者、高杉さんたちよりも大分前にいたから、おめでとう、」
 いつも通り白いスーツでいる坂本に面白くないと思いながら高杉は素直な気持ちを伝えた。
「ありがとう、君の衣装も見たかったな」
「リョーマの衣装は凄かったぞ、お竜さんが保障する」
坂本と常に行動しているお竜がえっへんという表情で坂本を褒めるが、ならば尚更見たかった。
「二人は、」
「僕らも遠慮しておく、というかこの後後片付けがありそうだし……
「そうか……じゃあ、またな」

「娘を嫁に出すってこんな気持ちなのかな」
「娘より先に春猪が嫁に行くこと考えちょけ、お前が泣くところしか想像出来ん」
「以蔵さん、今その話はしないで、本当に」
「おいイゾー、龍馬を泣かせるな。龍馬、大丈夫だ、お竜さんがいるからな」
「いらん仏心じゃ、あの惚れた顔見ていたらなんも心配いらん、」
 とはいえ、岡田も高杉のことを可愛がっていたので思うところがある。
「素直じゃないね、以蔵さんも」
「おちょくるのも大概にせぇ」
 半笑いのまま、肘を突き合う二人をお竜がやれやれという表情で見守っていた。