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usagipai
2025-09-19 03:38:05
1213文字
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昔話
ウィスモパ
最初は、自分のことを話す勇気なんて持てなかった
けれど
――
育った故郷の風景だけは、この子に見せたかった
僕にとって何よりも愛おしい場所を、ただ知ってほしかった
だから「デート」という形をとって、彼を連れてきた
街は昔と変わらず、活気に満ちていた
行き交う人々の笑顔、胸に響く祭囃子の音色、色とりどりの飾り。
その光景の中に、隣を歩く彼
――
モパモパくんの姿がある。
それだけで、胸がひどく熱くなる。楽しくないはずがなかった。
懐かしい空気に包まれながら、僕は彼の手をしっかりと引く。
出店には甘い菓子や香ばしい料理、きらめく雑貨が並び、僕たちは夢中で開拓して回った。
射的や輪投げに挑戦し、時には僕が即興のパフォーマンスを披露して彼を笑わせる。
無邪気に楽しそうに笑うその横顔を見ていると
――
胸がいっぱいで、言葉が出てこない。
本当は、まだ何も打ち明けられていない。
それでもこのひとときだけは、隠した想いすら優しく照らすほどに輝いていた。
そうして歩いているうちに、約束していた劇場の開演時間が迫っていた。
そこが、今日最後のデートの行き先だ
初めてこういう場所でデートもするためドキドキする胸を落ち着かせながら指定された席に座る
舞台の上に現れたのは、美しく気高い歌姫
――
オランピア
最後に見たときはまだ幼い少女だったのに、今は堂々と舞台に立ち、観客の視線を一身に集めている
そして彼女の口から紡がれた歌声は、幼き日に家族と共に耳にしたあの音色のまま
懐かしく、変わらない響きが胸の奥を揺さぶり、失われた日々をありありと思い出させた
まだ家族が生きていた頃
…
幸せだった頃
気づけば、頬を伝うしずくが一粒、また一粒と落ちていった。
劇場を後にする頃には涙も止まっていたが、目の赤さは隠せなかったらしい
モパモパくんはそっとハンカチを冷やし、僕の目元に当ててくれる
「ははは!君にバレるなんて
……
僕を余程見ている証拠なんじゃないかな?」
いつもの調子で軽く返せるはずだった
けれど、横目に映ったモパモパくんの表情は
――
心配を滲ませた、真っ直ぐな眼差しだった。
そんな顔をされたら、何も言えなくなってしまう
しばらくのあいだ、沈黙が続き肩を寄せ合ったまま、言葉の代わりに静けさだけが二人を包み込んでいた
そして口を開いたのは僕からだった
「
……
君、僕が泣いてるところを見たんだろ
…
はは
…
情けなー
…
でも君になら
…
」
「モパモパくん
…
少し僕の昔話に付き合ってくれるかい」
そう言って、彼は静かに夜空を仰ぐ
遠い記憶に沈むように、どこか懐かしげな瞳で
その声は震えていたけれど、どこか救いを求めるように温かくもあった
隣にはモパモパくんがいて、逃げ場のない想いをただ受け止めてくれるだろう
言葉にならなかった想いが、ようやく語られようとしている
――
そんな予感だけが、静かな夜に深く刻まれていった
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