usagipai
2025-09-19 02:48:48
555文字
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カゲメル

小説

生まれ落ちた時から、運命には逆らえないものだとメルミーは知っていた。
変わり映えのしない日々は重く、自由など贅沢な幻想にすぎなかった。
だからこそ――双子の片割れ、ウェルミーがそばにいてくれるだけで十分だと、そう思い込もうとしていた。

けれど、外の世界に触れたその瞬間から、確信は音を立てて揺らぎ始める。
カゲ――月夜を思わせる瞳を持つ青年に出会ったとき、メルミーは初めて「心が奪われる」という感覚を知った。

彼に手を引かれ、初めて歩いた土の感触
夜風が頬を撫で、遠くで灯る町の光が星屑のように瞬く、ただそれだけのことが、眩しくて、胸を詰まらせるほどに幸せだった
カゲが笑うと、自分の胸の奥まで光が差し込んでくるようで、思わず笑みがこぼれる。
人の手の温かさが、こんなにも震えるほど尊く、涙があふれるほど嬉しいものだと、その時になってようやく知った

そうして過ごした時間は、まるで夢のように柔らかく、ひどく短い
気づけば白い光に塗り潰され、鉄の匂いのする場所へと引き戻されていた。
腕を掴まれ、連れ戻される最中、メルミーは振り返る
伸ばした指先の先は虚無しかなく

心に残ったのは、消えない温もりと、二度と戻らぬ日々を渇望しながら、永遠に閉ざされた檻の中で生き続けるしかないという絶望だけだった。