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もちこ
2025-09-18 22:16:14
6544文字
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人妻キラーズ結成秘話【諏訪】
諏訪とオタクの夢漫才。結成秘話。
オタク: 性別不詳 年齢は諏訪と一緒 非喫煙者
大学でお笑いサークルに所属し活動していたオタク、いつかお笑いのショーレースで優勝して日本一の漫才師になることを目標に、日々ネタ作りに励んでるが、相方に恵まれない。ある日、アマチュア枠で応募した漫才コンテストのオーディション前日に当時の相方が音信不通になり、代わりにオーディションに出てくれる相方を急遽探すことになる。
キャンパス内をうろついてピンとくる人を探してる時、喫煙所で目つき鋭い柄悪そうな金髪の兄ちゃんを見かけて、ピーン!ときて、「一緒にお笑いやりませんか」自己紹介すっ飛ばしていきなりスカウト。お兄さんはこちらを一瞥した後、すぐに顔背けて煙草ふかしながら「
…
やんねーよ」「え!?」「『え!?』じゃねーわ。断るだろ普通」「こんな機会一生ないと思うけど?」「なんでちょっと上から目線なんだよ」テンポよく返してくるこの人ならきっと大丈夫だと確信。無理矢理食堂まで着いて行って一緒にご飯食べて、漫才にかける情熱を語り「もう隣で立ってるだけでもいいから!」しつこく誘った末、「だぁー!もうしょーがねぇなぁ!」喫煙所で出会った諏訪くんをなんとか口説き落としてオーディションに連れて行く。
翌日は早朝5時に公園に集合して緊急ネタ合わせ。「まず、前に出たら諏訪くんから『人妻キラーズです』ってコンビ名を言ってもらって、」「うーわ。どんな名前だよ
…
言いたくねぇな」「よろしくね。持ち時間3分だけど、気にせずこっちに合わせてくれればいいから」「はいはい。結局立ってるだけじゃ済まねぇわな」「えへへー」「えへへじゃねぇよ」ノリ気じゃないと言いつつも、一応真面目に付き合ってくれる。
本番前ギリギリまでネタ合わせした後、オタクが諏訪の方を見て「これで落ちても諏訪くんのせいじゃないからね」と言うと、呆れた顔を向けて「あたりめーだろ」「でもちょっとくらいは呪わせて貰うね」「帰っていい?」なんだか不思議と、昨日初めて会ったとは思えないくらい息が合う。
オーディション本番、前に出て一発目、「どうも〜人妻キラーズでーす」「お前が名乗るなや。打ち合わせ通りやれ」いきなりアドリブで場を掴む。ネタのテーマは【口説き文句】
「ナンパって成功したことあります?ちなみに自分はあるんですけど」「それ、こんな大勢の前で言わねー方がいいぜ」「今日の相方もナンパで捕まえました」「言うな言うな」本当のことだけどこの時点で二人の息ぴったりだから誰も信じてない。「実は、ナンパで大事なのが『オリジナルの口説き文句』なんだよね。今日は諏訪くんにこのテクニックを伝授するね」「はいはい
…
あ、俺が足止めしてる間に全員逃げてください」話し続けるオタク(バケモノ)からみんなを庇って犠牲になる諏訪の構図。声色を若干変えて女性審査員たちをメロつかせるセコ技まで使う。「具体的に言うと、『可愛い』とか『かっこいい』ってそのまま言うんじゃなくて、遠回しな表現をするのがロマンチックで効果的だと思うんだ」「ふぅん。例えばどんな?」「諏訪くんをポケットに入れて持ち歩きたいな♡」「急になに?怪談?」「口説き文句だよ」「ゾッとするわ。だいたい俺はポケットサイズってツラじゃねーだろ」「じゃあ、スーツケースに入れて持ち歩きたい♡」「ただの犯罪じゃねーか。他のアイデアねぇの?」アイデア出してはツッコミ入れて、の定型作ってテンポ良く展開していく。ネタ終わった後に、審査員から「掛け合いのテンポ感がいいね。何年目?」と聞かれて「昨日知り合いました」と答えその場をざわつかせる。
その日の別れ際、「諏訪くん、本当にありがとう」改まってお礼を言うオタクに「まぁまぁ楽しかったぜ」と返す諏訪。そこで初めてオタクが、力の抜けた顔で笑って「自分も!諏訪くんとの漫才すごく楽しかったよ!」喜んでぴょんぴょん飛び跳ねるから、諏訪は(こいつ嬉しい時跳ねるのかよ
…
)と心の中でツッコミ入れつつ、オタクのこと、ちょっと目が離せない面白い存在として位置付ける。
一週間後、オタクが跳ねながら喫煙所にやってきて「諏訪くん!一次審査通過したよ!」と報告に来た時は「うお〜!マジか!おめでとう!」ついつい手合わせてハイタッチして喜び分かち合う。「このまま二次審査も来てくれたら嬉しいんだけど
…
駄目かな?」わざと可愛こぶってお願いしてきてるの丸わかり。面倒くさいけど不思議と断る気になれずに「他に用事なかったら行ってやるよ」と答える。断られるだろうと思ってたオタクは意外にもあっさり受け入れられて大喜びする。「二次審査いつだよ」「金曜日!」「ッア〜〜よりによってその日か
…
」「都合悪い?」「しくった。超暇だわ
…
」「諏訪く〜ん♡もー!ポケットに入れちゃお♡」「やめろお前。お〜い、引っ張んな」喫煙所にいる他の人達には(どっか行けや
…
)と思われてる。
金曜日。気合い入れて新しいネタ作ってきたオタクとまた早朝ネタ合わせして、一旦喫茶店のモーニングで休憩挟む。「お前の今までの相方ってどんな奴だったの?」「諏訪くんだけだよ♡」「うるせーよ。俺はヘルプだろ」時々突っ込みがすごく鋭い諏訪くん。オタクもふざけるのはやめて、ドリンクのストローをくるくる回しながら答える。「今まで5〜6回相方変わってるんだよね」「何年で?」「たった1年で」「カブトムシの脱皮より多いんじゃね」「他に表現なかったの?」いつもはボケ役のオタクが諏訪の例えに突っ込みを入れる。「自分と同じ熱量で続けてくれる人に出会えなかったんだよね。いつもコンビ組む代わりにネタ全部お前が書けとか、飯奢れとか、体の関係迫られたりするんだけど、みんな舞台に立つとイマイチなパフォーマンスしか出来ないんだ。無駄に自己評価だけが高い人って、自分が何も出来ないってわかった場所からは逃げ出したくなるんだろうね」話し始めたらだんだん止まらなくなる。そんなオタクを見て、「お前、人の悪口とか言えんだな
…
」謎に感心する諏訪。「諏訪くんって聞き上手の反対、聞き下手?」「あ?なんだよ。お前落ち込んでんの?」「全然。今まで落ち込んだ瞬間が一度もない」「だろうな。それでいいんだよ」交わした言葉は少ないけど確かに気持ちは通じ合って、顔見合わせて笑う。「諏訪く〜ん♡」「なに」「ふふ〜」機嫌良さそうにニコニコしてるオタク、ちょっと可愛いな
…
と思って「
…
なんだよ」って言ったのに「携帯鳴ってる」冷静に切り替えて指摘される。「ちょっと出るわ」オタクに断りを入れてその場で電話取る諏訪。本部に緊急招集され「はい、了解。すぐ行く」癖で即答。通話切った後にハッとして、マズイ!とオタクの方見たらちょっと残念そうに「しょうがないよね。いってらっしゃい」と送り出される。まだ何も説明してないし、そもそもボーダー隊員だということすら話してないのに、後から入った予定を優先させることを許されて驚く。「本当にいいのか?」「もともと、用事が無かったらって約束だったし。オーディションはまた受ければいいよ」やっと掴んだチャンスで、新しいネタまで作ったのに、他人の都合を最優先して迷わず機会を手放すその決断に、オタクのこと掴めない奴だって思うと同時に、強い心の持ち主だと感じる。諏訪は「悪い。また今度会って話そうぜ」とテーブルに二千円置いて去る。
そこからなんとなくタイミング合わなくて会えないまま数ヶ月が過ぎる。大学の学祭でお笑いサークルが漫才すると聞いて、諏訪が準備の時間に学内のホールへ行ってみると、客席の椅子並べる手伝いしてるオタクを発見。一人で折り畳み椅子四脚えっちらおっちら運んでるところを捕まえて、椅子二脚取り上げて「この後ヒマ?」聞くと「諏訪くん!」嬉しそうに顔上げたオタクに、つい無意識に(可愛い〜)と思っちゃう諏訪。
準備が終わった後、大学近くのファミレスでランチ。諏訪が行けなかったオーディション、あの後どうなったのか聞いてみると、「一人で漫談したよ」「前から思ってたけど
…
お前度胸やべーな」わざわざ俺が心配しなくても結局コイツ一人で何とかやっていく奴だよな〜、と納得。そして諏訪は、人が本気でやってることを曖昧に手伝うのはやめようと覚悟を決める。
「俺、実はボーダーやってんだ。だから、授業中だろうがなんだろうが、召集されたら行かなきゃなんねぇ」フォークに山盛り巻き付けたたらこスパゲッティを頬張るオタクを見つめて、「前みたいに迷惑かけるのは嫌なんだよ。だからお前もう、俺じゃなくて他の相方探せ」「へぇ〜諏訪くんってボーダーなんだ。どっちかと言えばネイバー顔だよね?」「悪役顔みたいに言うんじゃねぇよ」諏訪は、オタクが『わかった』と言わず誤魔化したことに気付いたけど、そのことをあえて指摘せずに話を合わせる。
諏訪の奢りだとわかってデザートを追加注文したオタク、パフェ半分くらい食べたところで、カサ増しのコーンフレークを長いスプーンでザクザク突きながら、「高校生の頃、大好きなおばあちゃんがいてさ」と唐突に話し始める。「病気で余命二ヶ月って言われてたんだけど、毎日病院に会いに行って、学校であった面白い話したり、当時流行ってた芸人さんのネタ真似して笑わせてた。そしたら、おばあちゃん一年半も長く生きてくれたんだ。人って、笑ったら本当に寿命が延びるんだよ」最初に漫才やってるって聞いた時は、変わった奴もいるもんだな〜くらいにしか思ってなかった。でも一緒にやり始めてすぐに、コイツ本気なんだってわかった。「この街には、大事なものを失った人がたくさんいる。だから、その分みんなをたくさん笑わせたいよね」虹の袂を見つけた時みたいな、少し不思議な感覚で腑に落ちる感覚。全然違う人種だと思ってた奴が実はそうでもなかったことがわかって、気が付くとオタクの頭を撫で回してる。「なんだよ諏訪く〜ん」「お前のこと初めて心から応援したいって思ったわ」「あーそれはもう後戻りできない感情だよ?」「うるせぇ、一時的なもんだよ」「あははは!じゃあ今のうちに諏訪くんから融資を頂こう」「百倍で返すなら考えてやるよ」この時点で諏訪はもう結構かなりオタクに惹かれてる。
学祭当日、オタクが他の人とやってる漫才を諏訪は(もっとうまく突っ込めよ)(あーせっかく最初のボケが伏線になってんのに何で気付かねーんだよ)とかヤキモキしながら見てる。「あいつら結構面白いじゃん」「は?あんなもんじゃねーだろ」「諏訪厳しくね?関西出身?」「ちげーよ」イライラしてるのを友達に揶揄われながらも最後まで見届ける。
その後、しばらくしてオタクに新しくイケメンの相方ができる。イケメンは漫才オーディションで一人漫談を披露したオタクに惚れて自ら相方に立候補。オタクのことあからさまに好きっぽくて、ツッコミの勢いが弱い。オタクは、(コイツ全然おもしろくないけど顔がかっこいいから女性客増えるな〜)と考えて売名に利用してる。諏訪は二重の意味で(面白くねぇな
…
)ってイラついてる。
イケメンとコンビ組んで二ヶ月、年末のショッピングモールで開催されるアマチュア漫才コンテストに出場する際に、「このコンテストで優勝したら僕と付き合ってください」とイケメンに迫られ「(それでやる気になるなら)いいよー」とあっさり約束したオタク。そのことを知った諏訪が、色々あって木崎とコンビ組んでコンテストに飛び入り参加し、お笑いで戦いを挑む。オタクは諏訪の参戦に驚きながらも「諏訪くん何してんのww」めちゃくちゃツボに入って笑ってる。コンテストはオタクコンビと諏訪コンビが決勝二組に残る。緊張することもなく淡々と台本通りの隙の無い漫才をして会場の笑いを掻っ攫った諏訪コンビに対し、オタクコンビは、イケメンが決勝の舞台で緊張して噛みまくったりネタを飛ばしまくる。でもその度にミスを指摘してネタに昇華して、オタクが完璧にフォローする。最後はお客さんを自然に笑わせたオタクコンビが優勝する。諏訪は木崎とヤケ酒するため夜の街に消えていく。
コンテストの後、イケメン相方は、本気でやってるオタクの足を自分が引きずってしまってる自覚があるから、オタクに解散を申し出て「貴方に見合うようになってからもう一度、隣に立たせてください」って関西にお笑い修行の旅に出る。オタクは(また相方いなくなった
……
)と落胆。諏訪に電話かけて「諏訪く〜ん!また相方消えた!ご飯奢って〜慰めて〜」とお願い。会場付近の居酒屋で木崎と飲んでた諏訪、「よっっしゃあ!!」飛んでくる。
その後、居酒屋で諏訪に「やっぱり諏訪くんじゃないと駄目だよぉ〜」とシクシク泣きながら肩にもたれかかって絡む。頼られて内心めちゃくちゃ嬉しいけど、「オレンジジュースで酔っ払うんじゃねぇ」と押し返すことしかできない。「諏訪くん
…
何でもあげるから人生半分ちょうだい
…
」「シラフでよくそんなこと言えんな、オメー。ビビるわ」「本気で言ってるんだよ」本当はいいよって全部許して受け止めたいけど、相手のことと自分のことを真面目に考えれば考えるほど簡単には言えなくなる。
諏訪とオタクの関係は縮まることも遠ざかることもなく一定の距離を保ったまま続く。翌年、卒業間際の大学四年。年末のショッピングモールで今年も開催される漫才コンテスト。丁度相方がいなかったオタクに「隣で立ってるだけでいいから!」とお願いされた諏訪。「立ってるだけじゃねーだろ」「へへー」「へへーじゃねぇよ」どうしてもって頼られたら断る気になれなくて、久々に二人でコンビ組んで出場することになる。「やるなら本気でやるぞ」「さすが諏訪くん!」クリスマス返上で二人で念入りにネタ合わせして新しいネタ作って臨んだものの、結果は僅差で準優勝。去年は優勝したのに、今年は自分が相方になって優勝できなかったこと、諏訪にとってはかなりショック大きくて、でもこれでコイツも俺のこと必要としなくなるよな、と心のどこかで無理矢理区切りを付ける。
帰り道、駅まで送った時に、オタクが改札の前で立ち止まって「これ、本当は優勝したら、自信満々に言おうと思ってたんだけど
…
」諏訪の両手をぎゅっと掴んで、真剣に目を合わせる。「諏訪くん。相方になってください」「
………
お前、こういうのは優勝した時だけ言えよ」心の中で喜ぶ自分を抑え込んで、ツッコミ入れる。「負けるっていうのは、まだ越える壁があるってことだよ。自分は、諏訪くんと二人で乗り越えたいと思った」好きな人からこんな風に信頼されて求められてるっていうのは、正直死ぬほど嬉しい。けど、中途半端に首を突っ込んで何もかも壊してしまうのが怖いから頷けない。「今日、負けたけど今までで一番楽しかった。諏訪くんが『本気でやる』って言って沢山練習してくれたのも嬉しかった。これからも二人で漫才やりたい。お願いします。相方になってください!日本一の漫才師になろう!」人目も憚らず、外のコンクリートに土下座してお願いするオタク。諏訪も慌てて地面に膝ついて、オタクの肩掴んで顔上げさせて「お前やめろ。こんなとこで
…
」「こうしたら流石に断われないと思って!!」「おい!全部正直に言うんじゃねーよ!」思わず笑って突っ込めば、オタクもようやく顔上げて「えへへー」「だからえへへじゃねーんだって
…
」断るつもりだったのに、もう完全に相手のペースに呑まれてる。「つーかお前、俺のこと好きすぎるだろ」「それほどでもないよ!」にこにこ笑いながらしれっとムカつくこと言ってるけど、(クソ〜可愛い
…
)どうしても憎めなくてじっと睨む諏訪。何も察してくれず、ニコニコしてるオタクの頬を優しくぺちっと叩いて「まだ時間あるだろ?喫茶店でも入って話すか」立ち上がるために手を差し伸べる。「やったぁ〜!諏訪くんならそう言ってくれると思ってたよ!」手を繋いでぴょんぴょん跳ねるオタクに「おい跳ぶな、落ち着け」って言葉では止めながらも、自分も楽しそうに笑ってる諏訪。数年後に日本一の漫才師となる人妻キラーズの結成秘話。
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