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花月ゆき
Public
ゆる赤安ドロライ
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第12回お題「待ち受け」
遠距離恋愛中の赤安です。
赤井がアメリカへ発って一週間が経った頃。
朝、出勤の準備をしていると、降谷のスマホに赤井からメッセージが届いた。驚いたことに、届いたのはメッセージだけではなかった。『おはよう』の一言とともに、一枚の写真が添付されていたのだ。
映っているのは、ワシントンにあるFBI本部だ。時差も考えると今頃ワシントンは夕方だろう。写真には真っ赤な夕焼けの空が映っている。つまり、今、赤井はFBI本部にいるということなのだろう。降谷は『お疲れ様です』と返事を送った。
その後、降谷のスマホには、赤井から写真付きのメッセージが不定期に届くようになった。
写真は、ホワイトハウス、タイムズスクエア、ラスベガスにあるベラージオの噴水、シカゴのウィリスタワー等々、アメリカならではの有名スポットのときもあれば、自宅で撮ったと思われるものもある。
ただ眺めているだけではもったいなく感じて、降谷は赤井から届いた写真をスマホの待ち受け画面に設定するようになった。
赤井から送られてくる写真は、まるでプロのカメラマンが撮ったのかと思えるほどセンスがある。待ち受け画面としても映えるし、何よりスマホを見るたびに、“赤井が自分に送ってくれた写真”がすぐに目に入るので嬉しくなるのだ。
写真に映っている場所で、赤井はどのように過ごしているのか。降谷はたびたび想像し、メッセージのなかで問いかけた。
返事は二十四時間以内に届いた。赤井が日本にいたときよりも、メッセージを多く交わし合っているような気がする。
相手が恋人であっても、用事があるときにしか赤井はメッセージを送らないイメージだったが、どうやら違ったらしい。
赤井がアメリカへ発つ前。「さみしくなりますね」と、降谷がうっかり本音を零してしまったことがあった。赤井が珍しく驚いたような表情をしたので、そのときのことはよく覚えている。赤井なりに、自分をさみしがらせないようにしてくれているのかもしれない。
お互いの連絡が尽きることはなく、楽しいやりとりが続いた。
それは一見すると仲の良い友人同士のようなやりとりにも見えるが、ふとしたときに、赤井は“恋人らしい顔”を見せることがあった。
テーブルの上にバーボンのボトルと飲みかけのグラスが映っている写真とともに、『君一筋だよ』とメッセージが届いたときには、さすがに赤面した。
向こうは夜だろうが、こちらは真昼間である。隣にいた風見に、「熱でもあるんですか?」と問われて、雑に誤魔化したりもした。
その日の夜。降谷はライ・ウイスキーのボトルを撮影して、『僕も』というメッセージとともに写真を送った。翌朝、赤井から電話がかかってきて、顔から火が出そうになるほどの恥ずかしい言葉をたくさん浴びた。
赤井とはいわゆる“遠距離恋愛”をしている状態ではあるが、赤井の心が自分から離れてしまうのではないかという不安は、日に日にやわらいでいった。
赤井が
この国
日本
からいなくなって、半年が経った頃。
コナンしか客のいないポアロで、作業の合間にスマホを見ていると、コナンが問いかけてきた。
「
……
その待ち受け画面、もしかして赤井さんから送られてきた写真?」
その写真には、赤井を連想させるようなアイテムはひとつも映っていない。なぜ、赤井の送ってきた写真だと、コナンにはわかったのか。
「どうしてわかったんだい?」
「最近、頻繁に待ち受け画像を変えているでしょ。写真はアメリカで撮られているものが多いし、安室さんがわざわざ写真素材を探して差し替えているとも思えないし
……
今アメリカにいる赤井さんから送られてきている写真って考えるのが自然かなって」
一般的に、スマホの待ち受け画像はそう頻繁に変えるものではない。
赤井から写真が届くたびに変えているので、特別な意図があることをコナンは悟ったのかもしれない。
「いったいいつから気づいていたのか
……
さすがだね、コナン君」
しかし、そこでコナンの追究は終わらなかった。
「その写真、ちょっと気になることがあるんだけど」
「気になること?」
コナンが指しているのは、昨晩、遅くに赤井から届いた写真だ。
ガラス越しに飛行機が複数並んでいるので、写真の被写体は空港である。FBIは支局も複数あり、支局間を移動するとなれば飛行機を使うこともあるだろう。写真は移動の最中に撮ったものかもしれない。そう思いながら、この写真を待ち受け画面にしたのだ。
「うん、その写真の中心に、日本の航空会社の飛行機が小さく映って
――
」
コナンが言い終えぬうちに、降谷のスマホのバイブ音が鳴る。
噂をすれば何とやら。赤井からメッセージが届いたことを知らせる通知が画面の上部に現れた。
こちらの時刻は午後四時を回っている。時差を考えると、向こうは真夜中だ。この時間に届くのは珍しい。
「もしかして赤井さんから?」
なぜそんなことまでわかってしまうのか。もしかして表情に出てしまうのだろうか。赤井のことになると表情が露骨に変わってしまうのだとしたら、今すぐ改めなければならない。今更かと思いながらも、降谷は表情を引き締めた。
「そうみたいだね」
「これまで送られてきた写真って、赤井さんが今いるところを映しているの?」
「たぶんそうじゃないかな。こちらが朝のときには、夕焼けが映り込んでいる写真がよく届くよ」
「じゃあ
……
早くそのメッセージ、開いたほうがいいかも」
「ん?」
この時間帯に届くことに何か意味があるのか。コナンは何かを察しているようだった。
少し考えて、降谷はふと気がついた。先程コナンが言いかけたように、よく見ると、写真の中心には日本の航空会社の飛行機がある。これまで送られてきた写真には、アメリカの航空会社のロゴが目立つ機体ばかりが映っていたが、今回は国際線を匂わせるような写真を送ってきている。
およそ十四時間ほど前にこの写真を送ってきたということは、赤井は国際線の飛行機に搭乗し、今頃“どこか”に着いている
――
ということになる。その“どこか”に思い当たる場所はひとつしかない。
どきどきと高鳴る自分の心臓の鼓動を聞きながら、降谷はコナンに言われた通りメッセージを開く。
そこには、成田空港の写真とともに、『今すぐ君に会いたい』とメッセージが入っていた。
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