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花月ゆき
Public
赤安かけた
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あと三十秒
降谷さんが赤井さんへのチョコに盗聴器を仕掛けちゃってます、が……赤井さんは何でもお見通し。
相変わらず、赤井さんがかかわるとグダグダになる降谷さんがいます。
こういうことで降谷さんは盗聴器を仕掛けないかもですが、創作ということでここはひとつ…。
n番煎じだったらすみません。捏造多し。なんでも許せる方向けです。
赤井と恋人同士になって初めて迎えるバレンタインデー。
何日も前から試行錯誤して準備してきたチョコは、自分でも納得のいく味となり、降谷の胸中は早く赤井に食べてもらいたい気持ちでいっぱいだ。
しかし、いくら恋人同士になったとはいえ、赤井に手作りのチョコを手渡すのはどうも気恥ずかしかった。いったいどんな顔で、何と言って渡せばいいのか。降谷は答えを見つけられないまま、バレンタイン当日を迎えてしまった。
悩んだ結果、降谷は本人不在の赤井のデスクにチョコを置いて立ち去ることを選んだ。盗聴器をつけておけば、赤井の反応も知ることができる
――
実に良い案だと降谷は思った。
お互いの機関の連携をはかるため、今FBIのメンバーは警察庁の一室に常駐している。降谷はその部屋に出入りする術を知っているので、赤井のデスクにも容易に近づくことができるのだ。FBIのメンバーが全員ランチに出かけている時間を見はからって、降谷は誰もいないその部屋に入り、赤井のデスクに近づいた。
赤井のデスクの上に、包装紙とリボンでラッピングしたチョコを置く。そこでふと、贈り主の名前を書き忘れていることに降谷は気づいた。ラッピングに使用した赤色のリボンに超小型の盗聴器を取り付けるのは忘れなかったのに、まさか自分の名前を書き忘れるとは。これでは、誰からの贈り物なのか、赤井に伝わらない。
降谷はポケットから慌ててペンを取り出した。しかし、廊下が急に騒がしくなり、降谷は泣く泣くそのペンをしまった。FBIの一部のメンバーがランチから帰ってきたのだ。彼らが部屋に入って来る前に、降谷は素早くその場から立ち去った。降谷は誰もいない小会議室へと入り、入口のそばにあった椅子に座る。心臓がいつになくドキドキしていた。
深呼吸を繰り返し心を落ち着かせてから、ワイヤレスイヤホンを耳に差し込む。チョコを手にした赤井の反応が知りたくて盗聴器を取り付けてしまったのだが、自分の望んだ反応は聞けないだろうと降谷は思った。贈り主のわからない手作りのチョコなど、きっと捨てられてしまうに違いない。
『
……
今日のランチ、美味しかったですね』
キャメルの声が聞こえる。赤井は『ああ』と相槌を打ち、『だが、この前降谷君が作ってくれたサバの味噌煮の方がうまかった』と言った。自分のいないところでこんなことを言っているのか。嬉しい気持ち半分、恥ずかしい気持ち半分で、降谷は身悶えた。
かすかにキャメルの苦笑する声が聞こえる。そこに、カサカサと包装紙に触れているような音が混じった。
『あら、何なのそれ?』
『
……
それ、ランチに行く前はなかったですよね?』
明らかに不審がるジョディとキャメルの声。自分がデスクに置いたチョコに、赤井は気づいたようだ。しばらくカサカサとした音が続く。包装紙を外しているのだろう。
音が止むのと同時に、耳をつんざくようなジョディとキャメルの声が聞こえてきた。
『あ、赤井しゃん?!』
『ちょっと、シュウ! そんな得体の知れないチョコを食べるなんて!』
二人はまるで、赤井が毒入りのチョコを食べているかのような反応をしている。失礼な、と心の中で呟きながら、降谷は赤井の行動に驚かされてもいた。あの赤井秀一が、贈り主が誰かもわからないものを口にしたりするだろうか。バレンタインデーを利用して赤井を毒殺しようとする人間がいないとも限らないというのに。
慌てる二人をよそに、聞こえてくる赤井の声は冷静で、どこか嬉しそうだった。
『
……
これの贈り主には心当たりがあってね』
『『
……
へ?』』
降谷は目を見開く。続けて聞こえてきたのは、確信を持った赤井の声だった。
『聞いているんだろう? 降谷君』
呼吸が止まる心地がした。イヤホンから聞こえてくる音に雑音が混じる。赤井が盗聴器を撫でているような気がして、ぞくぞくとした震えが背中を伝った。
『チョコの感想は君に直接言いたいんだが
……
俺と会ってくれないか?』
低くて甘い、まるで自分の耳に直接囁くような声。盗聴器にそっと言葉を吹きかける赤井の息遣いに、降谷の心臓が暴れ出す。
かすかに微笑む赤井の声に重なるように、ジョディやキャメルをはじめとした他のFBIメンバーの声も聞こえ始め、だんだんと騒がしくなってくる。自分が赤井に贈ったバレンタインチョコの話で盛り上がっているようだ。盗聴器付きの。
居た堪れなくなり、降谷はイヤホンを耳から外した。胸はドキドキしていて、顔も熱い。赤井に直接チョコを手渡すよりも、きっと今の方が何百倍も気恥ずかしい。こんな状態で赤井と会うなど、到底できそうにない。
今日一日、赤井と会わずにすむ方法を降谷は必死に考える。その間、耳から外れたイヤホンは、降谷のもとへ向かう赤井の足音を拾っていた。
赤井がこの部屋にやって来るまで、あと三十秒
――
。
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