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花月ゆき
Public
赤安かきかけ
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糸電話
糸電話をする赤安
赤井が降谷の愛らしい一面を見たのは、大雪が降った日の翌日のことだ。
朝の十時から予定されていた会議があったが、定刻通りの開始は困難となった。交通機関が大きく乱れたことにより、会議の参加者の多くがまだ到着できていないためだ。
日本警察とFBIの合同捜査会議。参加者は選りすぐりのメンバーとはいえ、少なくとも百人はいる。朝の十時前に着席できていたのは、そのほとんどが昨日から警察庁に泊まり込んでいる者たちだけで、予定されていた参加者の三割程度しか揃っていなかった。
開始時刻変更の放送が流れるのと同時に、会議室に揃っていたメンバーが席を立つ。変更後の時間は未定、追って通知する、と続けてアナウンスがあり、会議室の出口には順番待ちができはじめていた。
喫煙室で一服でもしようか。赤井も退室の波に乗ろうとしたが、ふと会議室の最前列に目がとまり、歩みをとめた。
ひとたび会議がはじまれば、皆の注目を一身に浴びるだろうその舞台にいるのは、公安警察のエース──降谷零だ。
不思議と靴音がよく響く会議室を、赤井は遅くもなく早くもない速度で歩く。降谷が自分の存在に気づいていることは随分前からわかっていたが、降谷の視線がこちらに注がれることはない。
「降谷君、おはよう」
最前列でただ佇んでいる彼に声をかけると、降谷の指が一瞬だけ震える。こちらに意識を向けるあまり、過剰に反応してしまったようだ。
最近、降谷が自分に対して緊張の色を見せることが増えた。何がきっかけなのかはわからないが、以前のように、殺気立ち、ひりつくような緊張感とはまた一味違う色が、見え隠れするようになったのだ。
例えるとするならば、人前ではじめて発表する子どもが、緊張で落ち着きなく胸をドキドキさせているような感じだ。本人にはけっして言えないが、どうにも放っておけなくなるような空気感を、赤井は彼から感じとっている。
「
……
おはよう、ございます」
随分と間をおいて、挨拶が返ってきた。ぱっと宙に浮かんだ彼の手が、やり場を探すようにさまよう。その動きを追っていると、細くしなやかな彼の指は、机の隅に積まれた紙コップへと辿り着いた。
会議の開始前にコーヒーが注がれるはずだったそれは、会議の開始時刻が変更となったことにより、空のまま積まれている。
会議がはじまるまで、まだ時間はある。空の紙コップにコーヒーでも注いで、彼と少し話をするのも良いかもしれない。そんなことを考えていると、降谷がふいに口を開いた。
「
……
赤井、糸電話ってやったことありますか?」
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