ろころころ
2025-09-16 16:19:43
4081文字
Public
 

Love&Entertainment/pk擬

一部うちよそ及び共同創作の流れを含みます。


巡礼を終えた守り人ザシアンによって、長年ガラルを恐怖に陥れていた『メフィストフェレス』も姿を消した。彼らと対立し続けた者として、リグはザシアンのグロリアに、社会に馴染まず縄張り争いを続ける者たちの見張りを任されたのだ。


リグはこの弱肉強食の世界で生まれ、光の当たる世界で弟と共に暮らす道を自らの手で断ち切った。
この腐った世界が、楽しくて楽しくて大好きだった。失敗すれば死ぬ。失敗しなくても何故か死ぬ。死んだと思ったら生きていて、生きて帰れると思った時には死んでいる。

予想通りはつまらないし、予想外は面白い。

そんなことを言えば、きっとあの責任感の強いザシアンは「悪趣味ね」と顔を顰めるだろう。
それでも構わない。結局、どんな楽しみを知ったとしても……リグにとって一番楽しみはそれだった。

もしも『ファウスト』を含めた争う者達がこの世から消えると言うならば、リグもその時は一緒に消える道を選ぶだろう。
ただでさえ生き物には生まれてくる意味なんてないのに、一番の快楽すら味わえないのであれば、それこそ生きるメリットもないからだ。


さて、そんなリグだったが唯一"人間らしい"趣味を持っていた。それが、音楽を聴くこと。
リグのお気に入りのバンドグループは、ポケモンだけで構成されていた。彼らの曲を車のラジオで流したのは数知れずで、覚えの悪いシャモですら歌詞を口ずさむようにすらなっていた。
ライブに行った回数も数え切れないほどだ。エオス島の選手になってからは、変装をして一般人に混じった上でライブ会場へ向かった。観客の馬鹿騒ぎは耳の奥がキンキンするのであまり好きではなかったが、彼らの奏でるギター音はどんなにデカくたって心地よく聞こえた。

さて、そんな憧れのバンドの元ボーカルを「お友達だぞ!」などとほざきつつ連れてきたシャモには、流石のリグも目を疑った。"元"というのは当時、既に例のバンドは解散しており、メンバーの行方もわからずになっていたからだ。

そして立て続けに、リグはベースを担当していたストリンダーの青年にも出会った。彼に近寄ったのはちょっとした好奇心だった。例のバンドに何があったのかを聞き出すためと、あわよくば再結成してくれないかなと言う淡い期待。
そんな出会いが、今の関係性を紡ぐ第一歩になるとはリグは予想もしていなかったが。

結論からいえば、リグと彼アリルは世間一般的に言う『恋人関係』になった。まぁこれが恋人だと言えるかは正直怪しいが。互いに推しでありファンである関係性でありながら、何せどちらも他人に対する執着心が少ないもので。
成り行きと興味でこんな関係性にまで持ち込んだは良いものの、リグも扱いに困っていたのは嘘では無い。彼に好意があるのは確かだが、それが推していたバンドの一員だからなのか、一匹のポケモンとして正しく愛せているのかはわからなかった。
きっと彼も同じような立場にあるはずだと、彼の反応から答えを見出そうとこともある。好意を伝えても適当にあしらわれ、スキンシップを取れば邪魔だと言われる始末なので、そもそもこれは『恋人関係』として成立しているのか?と疑問に思い始めたのもすぐだった。お互いによくわからぬままノリでYesを述べただけかもしれない。何せ、愛とか恋とかわからぬ者同士なのだから、こればかりは仕方ない。

そんなふうに思ってある時、いわゆる別れ話を切り出した。
結果、ものすごく怒られた。どうやら彼は正しい愛の形で、リグのことを定めていたらしい。同族だと思っていたのも勘違い甚だしいということだろうか。アリルさんに負けたリグはそう思い、どうすれば良いかもわからなかったので、この時ばかりは謝るしか無かった。

とはいえ悪いことばかりではなく、あの時から、彼の方からリグに愛情を伝えて来る機会も増えた。リグが好意を伝えて素っ気ない態度を取るのだって、ただ照れているだけだということもわかった。彼がリグに対して抱いている愛情は嘘では無いのだ。

──────ならば、自分は?
リグには、愛とかなんちゃらはいまいちわからなかった。例えば、弟のことは守らなければならないと思うが、それが愛ゆえかと言われるとこちらもまた難しい問題だった。家族は守らねばならないという動物的な性が、リグにそうさせていたと言っても過言では無かったからだ。人間は感情で動くが、動物は定められた性質と本能で動く。生き物として長い年月の間生き残り、如何に子孫を繁栄出来るかが、その本能を作り上げる基準になっているのだ。

この違いをリグは理解はしていたものの、自分が今、どちら側にいるかはさっぱりだったのだ。ツガイになってしまえば彼は動物の本能的に守るべき存在になるわけで。そうなると、どの部分で自分が彼のことを愛せていると判断すればよいのか、わからなくなってしまった。




さて、一方的に与えられるのは死んでもお断りなのがこのリグテレオンだった。借りを作ってはならない。借金と一緒で、返すまでが長引くほど何倍にもなって跳ね返ってくるからだ。

しかし、そんな話を真面目に相談できる相手なんていない。ルビーに話せば笑われ、ルチェに話せば青いヤツは来んなと言われ、グロリアに話せば本気で心配された上にポケセンにでもぶち込まれるに違いない。そもそも、他人につけ込まれるような弱みを見せてはならない。これはらワイルドエリアの掟、15条目に記された事項である。


そんなことを考えていたある日、リグが自宅に帰ると珍しく恋人がいた。合鍵なんて渡した記憶はないので侵入経路は不明だが、とりあえず紛れもない恋人が毛布にくるまったままソファーでいじけていたので、カメラに収めたあと何事も無かったかのように事情を尋ねた。
彼は何も言わず、リグのことを思ったより強い力で引き込む。バランスを崩して彼の上に覆い被さる形で倒れ込んだリグを抱き枕のように抱きしめると、そのまま動かなくなってしまった。

さて、どうしたものか。まず第一に彼が自宅にいる前提が無かったので、部屋は汚いし身体も血や埃で汚れている。普段であれば早くシャワー浴びてきてと言われそうだが、そんな余裕すらないのはやはり問題があるのではないか?
「体調が悪いならポケセンにでも行きましょう」、と声をかけるも反応は無し。彼の腕から抜け出そうにも、全くもって抜けない。こんな力をどこに隠していたんだか。インテレオンとストリンダーでは、種族的にも力で勝つことは出来ないのだが。悲しき運命なり、こっちはギャングなのに。

結局、彼の抱き枕になったままリグも眠ることになった。どんなに慣れているとはいえ、戦った後は身体も神経も疲れているので、普段と異なる環境であってもすぐに眠りについた。
いや、彼の重みと温かさは、ひとりじゃない安心感を与えてくれていたのかもしれない。
リグが次に目を覚ます前ぼんやりとした意識の中に、穏やかな顔で優しく頭を撫でる彼の記憶が残っていた。





さて、この日から定期的に訪れる彼の『メンヘラモード』がリグの疑問の解決の糸口に繋がったことは間違いではないだろう。
彼はメンヘラモードに入るとまず、リグのことを毛布の毛皮で捕食し抱き枕にして動かなくなる。暑い日にはリグの尻尾を枕にするという明らかに理性がありそうな行動を取ってくるので、本当にヘラっているのか疑っているのは言ってはならない。
そして、リグを解放したかと思えば今度は食料を求めてくる。スイーツを捧げれば無言でむしゃむしゃと食し、たまに面白半分でダイキノコとかを入れたりするとぶっ飛ばされる。最高に面白い。あとは撫でろだとかキスしろだとか、望んでくるものは可愛らしいものだった。臓器じゃなくていいんですか?と問えば、お前の臓器なんて使い道ないしいらないと言われた。酷くないですか?私は貴方の恋人なのに!

こんな感じで、彼がメンヘラモードに入るとリグはそれはもう一日中愛しい恋人に付き合ってなきゃならないわけだし、自由を愛する身としては好きなことも全く出来ないわけだ。
それなのに、それが全く嫌じゃなかった。むしろ普段はスキンシップですら照れて拒否する彼が自ら望んできたり、口の端に思い切りクリームが着いているのも気にせずただスイーツを頬張る姿を見ているのは、全く飽きない。
リグは人に尽くすタイプでは無いし、どちらかといえば平等で自立した関係を好むが、彼ばかりは養っても良いかと思えるくらいには可愛らしい存在になっていたのだ。





この辺りで、ようやくリグは自分の愛の形についてを認識することが出来たのだ。おそらく、リグが普段から彼に囁いている愛の言葉は嘘では無いが、傍から見れば信ぴょう性に欠けるものであることもリグはよくわかっている。
愛とかなんちゃらっていうのは多分そういう表立って見えるものじゃなくて自分の好きな物ややりたいこと、大切なものを全て投げ出しても、優先したいと思えること。それが快楽主義リグテレオンに置ける、一番の愛の形なのだ。

その証拠に、少し前までは一番の楽しみだった生きるか死ぬかのチキンレースも、今では絶対に死んではならない24時間スペシャルに変わりつつある。戦いの最中も、危険な任務を遂行する際も、割とガチめに危なかった時も……死んだらきっと彼が悲しむ、だから死んではならない。そんなふうに思えるようになったのは、大きな成長なのだろう。




結局、リグはどこまで行ってもスリルと想定外の中毒者なので、この楽しいワイルドエリアから抜け出すなんて正常な真似はしないだろう。
けれども、ようやく快楽を得る以外で『人生の意味』を見つけることが出来た。



その"意味"だけは忘れずに、胸の内に刻んだまま、こうして修羅場の中に飛び込んで行くのも悪くないと思うのだ。




Fin.