めめた
2025-09-15 02:38:08
2575文字
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シルセベ:20250915

短文リハビリ
部屋系の話書いたの初めてかもしれん

 目を覚ますとそこは何もない部屋だった。
 と言うと語弊がある。セベクの部屋にあるものが何一つ無い部屋、と表すのが正しいだろう。
 同室の者も居らず、そのベッドも無く、もちろん大切な主君の肖像画も無い。
 黒い壁紙に白いベッドが部屋のど真ん中にポツンとある。
 そして隣には見慣れた寝顔。
「な、なんだここは!?」
 辺りを見回すうちに頭も冴えてきて、セベクはようやく言葉を発することが出来た。
「シルバー! シルバー!! 起きろ!!」
 キングサイズはありそうなベッドで心地良さそうに眠るシルバーを揺さぶって、セベクは声を荒らげる。
 しかし、シルバーは表情を変えずに眠ったままで、起きる気配がない。セベクは一先ず一人で部屋を見て回ることにした。
 ベッドから降りて側にあったスリッパを履き、一度部屋の端まで歩く。角には何もない。金色のドアノブが輝く扉が一枚。
 外から見ればここが何か分かるだろう。そう考えて、セベクは一度扉の外に耳を澄ませてから、ドアノブを握る。向こう側に人の気配は無い。念の為蹴破ろうかとも思ったが、大人しくノブを捻ることにした。
 が、ガタガタと言うだけできちんと回らない。建て付けが悪いのかと力の方向を変えて見ても、固まったように動かない。
 セベクはドアノブから手を離し、扉から離れた。結局蹴破る事になるとは。
 勢いよく足を振って蹴りを繰り出した。ガァン、と音が響いたが扉には傷一つない。
「どういうことだ……!」
 手応えと扉の状態が一致しない。
「セベク? 何をしているんだ……?」
 後ろから声が聞こえて、セベクは勢いよく振り向いた。シルバーが起き上がっているではないか。先程の音で起きたのだろうその姿に胸を撫で下ろし、セベクはシルバーの元へと向かった。
「僕も先程目を覚ましたが……どうにも妙な空間だ……扉は開かないし、ベッド以外に何も無さそうだ」
……それはまずいな……このままだと飢えで倒れてしまう」
「何よりマレウス様のお側に居られない!!」
…………そうだな」
 今この瞬間にも、敬愛する大切な方の御身が危険にさらされてしまうかもしれない。セベクは居ても立ってもいられず足を動かした。
「シルバー! 貴様も起きたのなら打開策を考えろ!」
 反対側の壁はまだきちんと見ていないはずだ。セベクは早足にそこから離れて、壁に触れる。黒い壁紙の、ただの壁だ。手触りもツルリとしているだけでなんの変哲もない。
 怪しいものが無い、危険性が無いのなら良い事になるが、それがセベクを一層焦らせた。手がかりになるものが無いというのは、ここから出る術が見つからないことと同義だ。
 ふと、天井を見上げる。黒くて、天井がどこか分からなくてゾッとした。ベッドの上に照明はあるのに、それがどこから下がっているのかが見えない。
 明らかにおかしい空間だ。
 何かしら、魔法の影響がある空間なのかもしれない。だとして、わざわざ自分たち二人をここに閉じ込めた理由が思い当たらず、セベクは頭を悩ませる。
 共通点はマレウスの護衛であること、ならばやはり、マレウスに害をなす事が目的では無かろうか。
 そこまで思い至って、セベクは首筋に汗が流れたことにも気が付かないまま扉に駆け出した。
「セベク!?」
「クソッ!!」
 駆けた勢いのまま、扉に身体をぶつける。手応えはある。しかし身体がその先へ進むことは無い。
「セベク! 落ち着け!」
「落ち着いて居られるか! 若様に何かあったら僕は……! 何故だ! 何故開かない!!」
 マジカルペンは無いが、魔法を使うしかないと思った。オーバーブロットをしてでも、ここから出なければならないとすら思った。
「セベク!」
 腕を引かれてたたらを踏む。構わず引っ張られて、よろけた身体を抱き留められた。
「大丈夫だ。俺もいる。マレウス様はお強いし、お側には親父殿も居るんだ。落ち着いて、一緒にここから出よう」
 ドクドクドク、心臓が不自然に早くて落ち着けそうにもない。シルバーの背に腕を回して、強く衣服を握った。
 髪をくしゃくしゃに撫でられるその手つきに安心を貰い、揃わない鼓動のリズムに宥められ、セベクは深く息を吸い込んだ。
 シルバーが頭を引き寄せて、優しく唇が触れ合った。
 あやすような優しい触れ合いを繰り返し、熱を確かめ合うような深い口付けをしてからゆっくりと離れる。
「落ち着いたか?」
……ふん」
 セベクは気恥ずかしくなって、扉を睨みつけた。
「もう一度、扉を破ってみよう。二人なら出来るかもしれない……無理そうなら、なにか、からくりがあるんだろう」
 シルバーは一度、セベクの手を強く握ってから離した。それだけで、セベクは力が湧いてきたような気がして、今度は、明確に敵意を込めて扉を睨んだ。
「行くぞ!」
 さん、に、いち、の声に合わせて、足を振り出す。先程よりもうんと力が入った気がした。
 ドゴォン、と大きな音がしたと同時に白い煙が発生して辺りを包む。罠か、と思ったのもつかの間、シルバーとセベクは同時に意識を手放した。





…………ん、ん?」
 ぱち、と目を開いたセベクは辺りを見回した。もう見慣れた景色はディアソムニア寮の談話室のものだ。
 半身に重みと熱、不自由な片手。そちらを見ると、この景色よりも先に見慣れている姿がある。
「シルバー……
 何故か手を繋いで、談話室のソファで居眠りをしていたらしい。
 嫌な夢をみた気がするが、思い出せない。夢とは大抵がそんなものだと言うが、どうにも居心地が悪い。
「シルバー、起きろ」
 凭れている身体を揺らして起床を促すと、シルバーにしては珍しくあっさりと目を開いた。
「ん………セベク……?」
 間近の姿を認めたシルバーは急にセベクの胸ぐらを掴むと、唇を押し付けた。
「なん、な、っ何をするいきなり!!」
「あ、すまない……こうしなければいけない、気がして」
「ハァ? 妙な夢でも見ていたのか!? しっかりしろ!」
「そうかもしれない……もう思い出せないのだが」
 もう一度キスがしたい。そんな欲求の原因も分からず、その言葉を言い出すまでぎこちなく互いの手を握りしめたまま、思い出せない夢に首を傾げていた。