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物村
2025-09-14 23:00:53
1569文字
Public
全年齢
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【全年齢】任務後の乾杯と、番犬剣士のちょっとした牽制
本編:『【R-18】愛されているのに気づかない魔術師と、ずっと隣にいたい番犬剣士の話
https://novel18.syosetu.com/n4924ku/
』前、二人の関係がまだ動き出す前のひとコマ
任務の完了報告を冒険者ギルドで済ませたあと、二人はギルドからほど近い飲食店に入った。
店内は賑わっていたが、カイルが選ぶ店はいつも治安がよく、居心地がいい。
木製の長テーブルに腰を下ろすと、セフィナがいつも頼んでいる度数の弱い酒を、カイルが当然のように注文してくれる。好みを覚えてくれていたのが嬉しく、胸の奥がほどけるように和らいだ。
ほどなくして料理も届く。香ばしい肉とハーブの香りが漂い、自然と肩の力が抜けていった。
「おつかれ。
……
ほら、乾杯な」
「うん、おつかれさま」
カイルがジョッキを掲げ、セフィナも小さく頷いて合わせる。
琥珀色の液体がぶつかり合い、軽い音を立てた。喉を潤し、一息ついたその瞬間。
「やあ二人とも、奇遇だね。任務終わりかい?」
背後から声がかかる。
振り向くと、黒髪を後ろに流した端正な顔立ちの男が立っていた。濃い色のロングコートに身を包み、すらりとした体つき。腰には長剣を提げ、洗練された印象が漂っている。落ち着いた声色には人当たりのよさもあり、誰にでも好かれそうな雰囲気をまとっていた。
見覚えがあったが、名前は思い出せない。せいぜい挨拶を交わしたことがあるくらいだ。
……
もしかすると、以前どこかの任務で一緒だったのかもしれない。
「ああ、乾杯中だ」
笑顔でカイルが応じる横で、セフィナは控えめに会釈を返す。
「そういえば聞いたよ。セフィナさん、この前の魔法、すごかったらしいね。仲間がみんな驚いてたよ」
「ああ、それか。複数の中型をまとめて封じたやつだな」
横からカイルがすぐに返す。
自分が現場で受けた補助だから、詳細までよく知っている。
「
……
カイル君。きみ、やけに詳しいな」
「そりゃあ、その場にいたからな。あれはすごかったぜ。重力に押しつぶされるみたいに、魔物が一斉に動けなくなったんだ。俺も本当に助けられたよ」
当時を思い返すように、笑みを含みながら穏やかに答えるカイル。
「
……
それは私も、ぜひ見てみたいものだ」と、男が静かに言葉を重ねる。
二人のやりとりはそのまま続いていき、口を挟むタイミングを逃したセフィナは、ただ静かにその様子を眺めていた。
「そういえば、この間の北の洞窟での討伐。あんたのパーティーも参加してたよな? ずいぶん手際がよかったって聞いた」
「
……
ああ、まあ、そうだな」
「討伐報告で隊長として名前が出てたろ。張り紙見たぜ? さすがだよ。俺もそうなりたいもんだな」
軽く笑いながら自然にカイルが身体を傾けられ──セフィナの視界から男の姿がすっぽり隠れてしまう。
目の前にあるのは、生成りのシャツに包まれたカイルの背中。軽鎧を脱いだぶん輪郭がよくわかる。細身ながらも無駄のない筋肉が形を作り、頼れる剣士のそれだと感じさせる。
まるで個室に入ったみたいに安心できて、セフィナは思わず酒をもう一口、口に含んだ。
美味しさに、ほう、と小さく息が漏れる。
「
……
そろそろ行くよ。邪魔したな」
その言葉のあと、気配がすっと離れていく。カイルも朗らかに返す。
「おう、次は街道警護だろ? 気ぃつけろよ」
「ああ、そちらも」
背中越しに男が手を振りながら去っていくのを、セフィナはただぼんやりと目で追った。結局、名前も思い出せないまま。
そうこうしているうちに、テーブルの上には熱々のシチューが運ばれてきた。
取り皿を受け取り、カイルの分からよそっていく。カイルはまるで何事もなかったかのようにスプーンを手に取り、セフィナへ向かってにかっと笑った。
「美味そうだな! 冷めないうちに食べようぜ」
「そうだね。
……
ふふ、お腹空いちゃった」
特に深く考えることもなく、セフィナもスプーンを手に取った。
ただいつものように、安心できる隣の席で。
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