しょうがやき
2025-09-14 22:22:11
1826文字
Public 一軍シリーズ
 

【一軍シリーズ】引っ越しの日

上手く話が進まず没になったものです。



顔合わせの日から2日。
いよいよ柊斗とそのお父さんが俺の家に来る日だ。
俺は朝からソワソワしていて落ち着かない。母親に「ちょっと落ち着きなさいよ」と言われる始末だ。
落ち着きを取り戻すために、自分の部屋やリビング、ダイニングなど、色々なところを掃除しているとインターホンがなった。


「は、はーい!」


急いで返事をして玄関に走る。
短く息を吐いて勢いよくドアを開けると。


「あだっ!?」
「うお、ごめん」


ドアを開けた勢いそのままに出てしまった俺は、ドアの近くに立っていた人とぶつかってしまった。
顔を上げると、柊斗と目が合う。


「い、いらっしゃい」
「慌てすぎ」


柊斗はそう言って、俺の頭に手を乗せる。


「今日からよろしく」


撫でながら言われ、俺はぎこちなく頷く。まだ会って2回目なのに柊斗に恥を晒しすぎだろ、と自分につっこむ。


「ど、どうぞ」


たどたどしく迎え入れると、「おじゃまします」と柊斗が家の中に入ってきた。


「理玖くん。こんにちは」
「あ、こんちは」


柊斗の後ろにいた柊斗のお父さんがニコリと笑う。
「どうぞ」と促して家の中に入ってきてもらった。
お母さんも慌てた様子で、玄関に来る。


「お疲れさま。荷物は引っ越しの業者さんにお願いしてあるのよね?」
「あぁ。もうすぐ来る予定だよ」


お母さんと柊斗のお父さんが話しながら玄関を上がり、部屋の中に入る。その2人を見ながら、俺と柊斗も部屋の中に入った。


「なんか家の中にこんなに人がいると変な感じ」
「俺も。でもこれからこれが普通になるんだな」


俺の言葉に柊斗が同意した。長い間母親と2人で過ごしてきたから、違和感がある。


「理玖〜!柊斗くんにお部屋紹介したら〜?」


母親に言われ、チラッと隣にいる柊斗に目をやると頷いたので、「分かった〜」と返事をする。
俺の家は一軒家で二階建てだ。一階には、リビングとダイニング、キッチン、お風呂場、和室があって、二階には3つの部屋がある。そのうち、俺の部屋、母親の部屋があり、残りの一つは使われていなかったが、そこが柊斗の部屋になる予定だ。ちなみに、柊斗のお父さんは俺の母親と同室だ。


「ここが柊斗の部屋。今はまだなんもないけど」


一階から紹介し始めて、二階の柊斗の部屋に入る。これで一通りは紹介したはずだ。


「理玖の部屋は?」
「え?」


柊斗は自分の部屋になる予定の場所を興味がない、というふうに見回した後、俺に向き直った。


「理玖の部屋。見たい」
「何もないけど……
「ダメ?」


首を傾げてこちらを伺ってくる。くそ、イケメンの破壊力は凄まじい。そんなの首を縦にふるしかないじゃないか。
緊張しながら、柊斗を部屋に招き入れる。あまり人を入れたことがないので謎に心臓がドキドキした。


「なんか、ザ・普通って感じ」
「だから何もない、って言ったじゃん」


分かっていたけど、いざ他人に言われると少し落ち込む。不貞腐れていると、その様子を見た柊斗が頬を微かに緩めた。


「理玖のこと知れて嬉しい」
「あ、そ、そうですか……
「なんで敬語?」


イケメンは顔がイケメンなだけじゃないということが分かった。言動がいちいちカッコいいのだ。男の俺でもドキドキするほど。俺が言えることではないけど、顔合わせの時の口下手な感じはどこに行ったんだ?


「理玖?どした?」


俺が黙りこくったからか、柊斗が俺の顔色を窺うように覗き込む。


「あ、いや、なんでもない」


慌てて誤魔化すのとほとんど同時に、「理玖ー!柊斗くんー!業者の方が来てくれたわよー!」という母親の声が一階から聞こえた。返事をして、一階へと階段を降りた。



ーーーー



柊斗とそのお父さんの荷物整理もあらかた終わり、俺はリビングのソファーに座ってくつろいでいた。
柊斗の部屋をつくるだけだったのだが、割と体力を消耗した。


「おつかれ。手伝ってくれてありがと」
「あ、いや。全然」


笑顔で返すと、柊斗は俺の隣に座ってポンと俺の頭に手を置いた。驚きでなのか、体が強張る。


「理玖、緊張してる?」
「そ、うかも柊斗と今まで話したことなかったし」
……たしかにな」


柊斗は俺の頭から手を離し、どこか深妙な顔で頷いた。
違和感を感じつつもあまり気にしなかった。