匣舟
2025-09-14 17:34:48
7552文字
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手の甲に誓うこと

転生して医者エリート家系の箱入り娘に生まれた乱(記憶あり)がお見合いにて金(記憶あり)と再会する話


 本当はずっと、誰かに聞いてほしいことがある。私のこの心の内を。生まれてきてから誰にも言ってこなかった私だけの秘密を。この秘密を素直に自分のことを生んでくれた両親に話したらきっと私のことを愛してくれている二人は、自分たちの子が気が狂った!と表立っては言わないだろうが、財力を駆使して津々浦々の病院へ連れていかれてしまう未来しか見えないので、言わない。
 だけど、本当は言いたいのだ。私は、生まれたときからずっと前世の記憶を持っているということを。
 前世、私は由緒正しきヒラ忍者の家系に生まれた男児だった。一流の忍者になるという目標を掲げて忍術学園に入学し、いつも落第スレスレで迷惑ばかりかけていたのにずっと私のことを見離さないで卒業まで育ててくれた先生、私たちのことをいつも可愛がってくれて時には私たちの前に立って色んな事を教えてくれた先輩、そして、楽しい時は一緒にはしゃいでつらいときは何も言わずにそばにいてくれて、何か間違えたことをすれば、目の前に立ちはだかって怒ってくれた、私のだいすきな級友たち。
 忍術学園で過ごしたあの六年間は、生涯の中で一番楽しくて、大切で、本当にかけがえのない日々だったように思う。
 私は俗にいう問題児で、落第スレスレじゃなかったときのほうが珍しいくらいで、みんなの健康を守ったり維持をする役割を担っている保健委員のはずなのに土井先生の胃痛を悪化させてしまっていたけれど、それでもなんとかあほのは組だと謳われていた私たちが全員六年生に進級できた時は、は組のみんな土井先生と、は組の実技担当の山田先生と泣きながら抱きしめあったっけ。
 まあ、そんな感動もつかの間授業になるといつも怒られてばかりだったけれど、それでも卒業試験でなんだかんだありつつも全員欠けることなく笑顔で卒業できたし、卒業してからも盛んに同窓会だってした。最初は全員集まっていたものの、途中からはだんだんと人が減っていって、最後に同窓会をしたときはもう、私含めて三人しか集まらなくて悲しかったりもしたけど、それも人間に生まれたのだから仕方がないね。なんて笑って解散して。
 それからすぐに私は寿命に抗えなくて、猪名寺乱太郎という人間の生涯を終えてしまったけれど、最期に目を閉じるときは自分の命が潰える恐怖よりも、あぁ、やっと自分の番が来たか!という素直な気持ちしかなかった。
 だって、自分のやりたかったことは全部やったつもりだったし、だから悔いなんて一つもなかったし。そんな健やかな気持ちで生涯を終えたというのに、もう開くことなんてないだろうと思っていた自分の目が開いて光が差し込んできて、はっきりと開いたかと思えば知らない人たちが私を見て泣いていたあの光景は、この先何があったとしてもずっと忘れることなどないと思う。
 で、この世に再び産み落とされたわけなんだけど、前世の記憶を持っていることより重要なことがあるから聞いてほしいの。あのね、私生まれ直したことで性別が男から女に生まれ変わったの。
 はじめてその事実を知った時の私は、もう泣きすぎてそのせいで高熱が出てしまい医者である両親を大いに心配させたものだ。まあ、そんな苦悩を乗り越えて今、普通に女性として生きているんだけど
「え。お見合い?」
「うん、乱には本当に申し訳ないんだけど、断れなくて。」
 第二の人生を女性として歩んで早十六年、猪名寺乱太郎もとい猪名寺蘭は自分が女性として生まれたことを知った時くらいの驚きを受けていた。いつも、仕事が忙しくて高校生に入ってからは特に会うことが少なくなっていた父から話がある。と書斎に連れられて、話って何だろう?と思っていたら唐突に謝られて、お見合いの話を持ち出されて今に至る。
 前世では、乱太郎の担任をしていた土井やは組のもう一人の担任である山田の息子である利吉がひっきりなしに来るお見合い話にいつも苦い顔をしていたことを思い出しながら、まだこんな時代にもお見合いなんてあるんだなぁ。とただ、純粋にびっくりしていた。まさか、自分がお見合いをする側になるなど夢にも思わなかったが。
 今世、蘭のことを産んでくれた両親は、父が医者で母が薬剤師で両親の祖父母も医学に携わった仕事をしていたらしく、その中での蘭の立ち位置といえば、エリート一家に生まれた箱入り娘というわけだ。両親は蘭のことを溺愛しており、礼儀や所作に対しては人前に出ても大丈夫なようにと厳しく躾けられたが、それ以外は蘭の好きなようにさせてもらえていて、蘭自身は自由にのびのびとした生活を送らせてもらっていた。
 そんないろんなことを自由にさせてくれた両親に感謝しかなく、蘭にとって両親は何よりも自分をここまで育ててくれて、自分のことを一番に愛してくれるいっとう大切な人たちなので、そんな両親が困っているなら助けてあげるのが娘としての責務ではないかと思うのだ。
 それに自分のことを溺愛している両親が見つけてきた相手なので、そこまで悪い人はいないだろうと蘭は父にわかりました。と返答した。
「いいのか?」
「はい。謹んでお受けさせていただきます。」
「すまない、ありがとう。」
 そう言って申し訳なさそうに頭を下げる父に蘭はやめてよ、お父さん。と背中をさすった。
「きっと優しいお父さんのことだから、断り切れなかったこと、私はちゃんと分かっているから。」
 優しい父親のことだ、先方に頼み込まれて断れなかったんだろうと思う。未だに娘に頭を下げている父に大丈夫だからともう一度背中をさすると、ようやく顔を上げてくれた。
 普段は凛々しい表情をしているのに、娘の前になると頬が緩みっぱなしだ。申し訳なさそうにしている父を見るのもなんだか会ってないからか久しぶりで新鮮だなあ。と思っていると、父親はおずおずと口を開いた。
「蘭、それで、日程なんだけど。」
「うん。」
「日程は来週の日曜日の十三時半からで、場所は。」
「え、あと三日後!?」
 父親から告げられた日程に蘭は驚くしかなかった。いくら優しい父とはいえ、これは多分私が了承してくれる前提で組んでいたのだろうな。と父のほうに視線を向けると、父の肩がほんの僅かに上がったし、目線も右往左往していて明らかに蘭の考えていることが図星だということが分かる。とんでもなくわかりやすい父の態度に蘭は大きなため息を零した後に笑った。
「こうやってお父さんと会って話すの今日しかなかったもんね。」
 先週はテスト期間で部屋に籠って勉強していたし、今週の今日までテストだったから蘭のことを待ってくれた結果が今日という日だったんだろう。父が多忙なのは分かっているし、何より父とこんな長時間落ち着いて話すことができたのは久々だったので、蘭はそれに免じて許すことにした。
「お見合いはどんな服を着るの?正装だから、制服とか?」
「いや、着物にしようと思っていてね。母さんにはもう言ってあるから、明日学校終わりに母さんが蘭のことを車で拾ってくれるみたいだから、一緒に選んでおいで。」
 お見合い相手のことは父さんも詳しくわからないから何も言えないけど、唯一わかることは蘭と同い年らしい。明日は多分帰るのも遅いし、蘭に会えないだろうから明後日きれいな着物姿の蘭が見られること、楽しみにしているね。と少し寂しそうにはにかんだ父に、蘭は笑って楽しみにしていてね、私の着物姿。と言って父の書斎を後にした。
 そして、お見合い当日の日曜日。蘭はうちの子本当にかわいい!と満面の笑みを浮かべる両親と一緒に高級料亭の門の前に立っていた。お見合い場所がこんなに敷居の高いところなのと、初めてのお見合いということもあり、両親たちのほわほわオーラに気づかないくらいに緊張している蘭。大丈夫よ、蘭はかわいいもの。という激励かフォローかよくわからない母の言葉に、う、うん。と言葉を返した蘭は、両親に手を引かれながら料亭の門をくぐった。
 昨日母親と一緒に選んだ薄緑の草花模様が描かれた着物を身に纏う蘭は、どこか儚げで美しかった。少し長く伸びた赤茶色の髪は、癖毛な彼女の髪のうねりや、広がりを生かしたハーフアップにしており、そこに金の水引をアレンジした髪飾りを付けている。
 普段、あまりメイクをしないので、メイクは母がやってくれて全体的に蘭の顔を際立たせるようなナチュラルメイクを施してくれた。メイクしてもらって自分を鏡で見たとき、鏡に映る自分が自分とは思えないほど綺麗だったので少しは自信がついたはずだったのだが、胸の中のドキドキは収まることはなかった。
 料亭に入って仲居さんに案内してもらいながら、母の手を握っていると私たちはここまでよ。と母の声が掛かった。どうやらここからはお見合い相手とふたりきりにならないといけないらしくそんなことを聞いていない蘭はぎゅっと母の手を握り続ける。
 そんな蘭を見て両親は笑いながら、セットされている髪が崩れないように蘭の頭を優しく撫でる。
「大丈夫よ、蘭。あなたは今、世界で一番かわいいお姫様だもの。」
「そうだぞ。自信を持ちなさい。」
「はい。」
  いってらっしゃい。と手を振る両親にぎこちなくなりながらも手を振り返し、両親と別れた蘭は仲居さんに案内されて、お見合い相手の男性がいるであろう和室の戸の前に立った。
 戸の前で深呼吸して心を落ち着かせる。深呼吸をして落ち着いたタイミングを見計らった仲居さんが、お客様がおいでになりました。と言うと、中からどうぞ。と声が掛かった。
 蘭は意を決して、襖の取っ手に手を添える。心臓がバクバクとビートを刻んでいるかの如くうるさいが、襖の前に座り、正座をしてゆっくりとした手付きで襖を開けた。
 幼いころから礼儀作法を厳しく教えられてきた蘭は、緊張しながらも完璧な動作をする。完璧な動作をして入ってきた蘭を見て、お見合い相手のひゅっという息の呑む音が聞こえた。その音に疑問を抱きながらも、襖を閉めてはじめて自分の視界にお見合い相手の顔を収めた瞬間。お見合い相手と同じ音が、蘭の喉から鳴った。
 目の前の相手は信じられないといった顔で蘭のことを見つめているが、それは蘭も同じだった。なぜなら彼女は、目の前にいるお見合い相手のことをよく知っていたから。
「き、金吾なの?」
 蘭がそう言葉を発しても目の前にいる金吾らしき人物は、ぽかんと口を開けたまま呆然としていて答えてくれなかった。また、蘭も前世の知り合いと突然引き合わされてことにより、混乱していた。
 なんでここに?とか前世の記憶覚えているの?とか、記憶を持っている誰かに会った?とか。たくさんの質問が蘭の脳内に浮かんでいくが、混乱している蘭の頭はそれを現語化することができず、蘭は目の前の相手をただ見つめるだけになっている。
 しばらく見つめあっていたふたりだったが、目の前の相手が我に返った途端に蘭をまた見つめゆっくりと口を開いた。
「ぼ、僕もきみに問いたい。き、きみはっ、乱太郎なのか?」
 震える声で紡ぎだされた目の前の相手の問いに、蘭はうん。と答えた。蘭の言葉に目の前の相手はぎゅっと唇を結んで、蘭のほうへ足を踏み出したと思った途端、目にも止まらぬ速さで蘭のことを腕の中に閉じ込めた。
「き、金吾!?」
 急に抱きしめられたことに驚いて蘭は声を上げるが、金吾は腕に力を込めてすすり泣くだけだ。何も言わない金吾にされるがままになっていたが、さすがにこの場面に誰かが入ってきたら恥ずかしいな。と思った蘭が、遠慮がちに金吾?と彼の名前を紡ぐと彼は蘭の顔を見て、涙声になりながら、会いたかった。と言ってまた蘭を抱きしめた。
「私も、会いたかったよ。金吾。」
 そう言って蘭も彼の背中に腕を回すと、またぎゅうっと抱きしめられてしまった。こんなに涙を流している金吾を見るのは初めてかもしれない。と思いつつも、六年間共に苦楽を味わってきた大切な級友の突然の再会に心臓がまたドキドキする。今度はさっきのような嫌なドキドキではなくて、歓喜の鼓動だ。
 その後暫く抱き合っていたふたりだが、ようやく落ち着いてきた金吾が蘭の体を離し、ごめん。と一言謝った。
「その……勢いで抱きしめてしまって……。」
「いや、私も嬉しかったから大丈夫だよ。」
 気まずそうに顔を赤らめてそう謝罪してきた彼に金吾らしいな。と思いながらそう返すと、金吾は安心したのかほっと息を吐いてから蘭に向かって口を開いた。
「遅すぎるんだけど、改めて自己紹介をしてもいいかな。」
「うん。私も。」
「僕は前世と何も変わらないけど、名を皆本金吾。剣道部に所属している十六歳。」
「私は前世、猪名寺乱太郎だったけど、今世は女の子になって名前も蘭になりました。私も金吾と同い年の十六歳だよ。」
 そう紹介するとお互い同時に笑い出してしまった。その笑いに蘭がどういう意味の笑い?と聞くと金吾が乱太郎が何にも変わっていないのと、こうしてまた会えたことの嬉しさがこみ上げてきちゃって。と答えた。
 答えに納得した蘭ももう一度笑い出すと、また金吾も釣られて笑ってしまい互いの笑いが部屋に響いた。暫く笑い合っていたふたりだが、漸く落ち着いたところで金吾が真面目な顔をしてこちらに向き直った。
「あの、乱太郎。いや……今は蘭か。」
「え?うん。」
も、もしよかったらこの縁談受けて貰えませんか。」
「えっ……。」
 目の前の彼からの突然の申し出に驚いて固まる蘭だが、金吾はそのまま話を続ける。その必死そうな眼差しと表情に自然と蘭も姿勢を正してしまう。そんな彼女を見た金吾は蘭のことをまっすぐ見据えながら言った。
「前世の僕は、きみのことが好きだった。きみの素直で真っすぐなところとか、僕が甘えに行ってもしょうがないなあ。って許してくれたところに惹かれたんだと思う。でもね、次期当主としてその恋心は邪魔で、きみに伝えたところでそういう関係になることはないと分かっていたから、前世の僕は捨てたんだ。その恋心を。」
 蘭は金吾の話に何も言わず、ただただ耳を傾ける。金吾は少しだけ瞳を揺らした後、覚悟を決めたように強く目を瞑ってから、また瞼を上げて話をつづけた。
「神様なんて前世も今世だって信じたことなんかなかったけれど。蘭がここに入ってきた瞬間に思ったよ。神様は本当にいるのかもしれないって。」
 金吾が蘭に向けた柔らかい微笑みに、蘭は胸の奥がきゅっとなった。自分がこれほどずっと前から金吾に想われているなんて知らなかったからだ。けど、自分のことを愛おしそうに見つめてくる金吾のまなざしには見覚えがあった。それは、金吾がいつも甘えてきて膝枕をしてあげた時に、よく見せてくれた表情と似ていたから。
 そのまなざしにくぎ付けになっていると、いつの間にか金吾が蘭の左手を掬い上げてそこにそっとキスを落とした。
「もう、自分の気持ちに噓をつくのは嫌だし、後悔したくない。だから、どうか。」
 前世みたいに友達からでもいい。でもゆくゆくは恋人を経て、夫になって、きみの隣にいることを許してほしい。もし、許してくれるのなら、僕のことを見つめて手を握り返して。嫌なら僕の手を振りほどいて、拒絶して。そこまでしてくれないと、諦めがつかないと思うから。そう懇願する金吾の瞳には溢れんばかりの恋情と、不安が入り混じっていた。
 その瞳を見てしまった蘭は反射的に頭を下げてしまう。でも、金吾の手を振りほどくことはなかった。金吾は振りほどかれなかった手に安心しながら、俯いたままでいる蘭が口を開くのを待った。そして数秒の沈黙が流れた後、俯いたまま、蘭は静かに口を開いた。
「わ、わたしなんかでいいの?」
  金吾には私よりいい人がきっといるはずだよ。と蘭は金吾に目線を合わすことなく、か細い声でぽつりと呟いた。しかし、そんな蘭の意見を否定するかのように金吾は首を横に振って、口を開いた。
私なんかなんて、言わないで。蘭。僕はきみじゃないとこんなに恋焦がれないよ。蘭じゃないと駄目なんだ。僕の隣にいるのは、きみであってほしい。」
 真っ直ぐで曇りのない瞳でそう訴えかけてくる金吾の言葉に蘭は胸がいっぱいになった。こんなに自分のことを好きだと伝えてくれる人はきっとこの長い人生の中で彼だけなんじゃないだろうか。と思うほどの愛の告白だった。
 それでも、蘭の胸の中には不安が残り続ける。この手を握って、金吾のことを見てしまったら。彼の人生を私が縛ってしまうんじゃないか。とか、金吾は本当にそれで幸せになるんだろうか。とか。自分のことじゃなくて、彼の未来について色んな事を考えていると、蘭。と目の前にいる金吾が自分の名前を呼んだ。
 反射的にさっきまで俯いていた自分の顔を上げると、そこにはとても優しい顔をした金吾がいた。そんな彼の表情に目が離せなくなっていると、彼は右手で蘭の頬を包み込むように触れ、そのまま手を滑らせて彼の親指が蘭の目元のメイクが崩れないようにそっとなぞるように拭った。
 そこで蘭ははじめて、自分の瞳から涙が零れていることに気づいた。そんな自分の考えに葛藤している彼女を見て、金吾は眉を八の字にしながら言葉を紡ぐ。
「蘭はさ、きっと何にも変わってないから自分じゃなくて、僕のことをたくさん考えてくれているんだろうね。でもね、蘭。」
僕はきみがいいんだ。きみじゃないとだめなんだよ。と自分の瞳を見つめながら、もう一度同じ言葉を紡いでくれた金吾。金吾の瞳には嘘偽りのない愛情が滲んでいて、その視線にとうとう射抜かれてしまった蘭はさっきまでの不安や葛藤が吹き飛んでいき、何も考えられなくなった。
 金吾の熱を孕んだ瞳に捕らえられてしまった蘭はそっと瞼を閉じ、ゆっくりと彼の手を握り返すと同時に口を開く。
「わ、わたしのこと。幸せにしてくれる?」
 自分の頬を包む彼の手に自分の手を重ねて、みっともない震えた声でそう彼に問いかけると、金吾はもちろんだよ。と微笑んで力強く頷いたあと、その言葉を誓うように蘭の左薬指に唇を寄せた。そしてもう一度蘭の瞳を見つめると、彼は穏やかに微笑む。その微笑みに蘭もつられて一滴涙を零しながら笑うと、金吾はその笑みを崩すことなく真剣な声色でこう言ったのだった。
「僕のこの命尽きるまで、きみを幸せにすると誓うから。だから蘭は、僕のそばでずっと笑っていてね。」