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ぐるさん
2025-09-13 22:59:43
1827文字
Public
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9.13 ふみりかワンドロ【ヴァンパイア】
ふみりかワンドロライ(@ fmrk_1draw)さんの2025.9.13 お題をお借りしました。
「理解って、ヴァンパイアっぽいよね」
こちらの肩口に頭を預けて、だらしの無い姿勢で本を読む恋人から、突拍子の無い言葉が放たれた。
「色白だし、つり目だし、あと背高いし
……
」
猫のようにぐりぐりと押し付けられる黒い頭を押しのけ、きちんと姿勢を正してやると、並んで座るソファのスプリングが軋んだ音を立てる。
「急に何ですか?藪から棒に」
改めてふみやさんに向かい合うと、彼は私に読んでいた本を差し出した。
受け取ると本の表紙には、今時の漫画やアニメのようなタッチで描かれた、青白い顔に鋭い牙を覗かせる人物が黒いマントを翻している。
タイトルを確認すると、最近映画化されて話題になった、古い怪奇小説の新装版だった。
「この間映画見たら面白かったからさ、原作も読んでみようかと思って」
「だからと言って、急に人間の生き血を啜る怪物に例えられるのは嫌ですよ」
「もしかして理解、この小説読んだ事ある?」
「ええ、学生時代に。ただあの頃の表紙は、もっとおどろおどろしい物でした」
「へぇ、そうなんだ」
しげしげと自分が差し出した本の表紙を眺めて黙ってしまったふみやさんに、今度はこちら声をかけた。
「
……
私がヴァンパイアっぽい、とはどういう事ですか?」
「えっ?」
「だって、肌の白さならテラさんや大瀬さんも白いですし、つり目なら猿や依央利さんもつり目です。身長なら天彦さんが一番高いでしょう?」
「見事に俺だけ当てはまらないな。ウケる」
「もう、話を逸らさない!とにかく、どうして私がヴァンパイア何ですか!」
「どうして、って言われても、何となくそう思ったからとしか
……
」
首を傾げてこちらを見つめるふみやさんの真意は分からない。どれだけ深い仲になっても、相変わらず何を考えているか分からない人だ。
「逆に理解は、何がそんなに気に入らない?」
「えっ?」
「理解はヴァンパイア、嫌い?」
吸い込まれそうな紫色の瞳が、こちらをジッと見つめる。
「
……
嫌いという訳では無いですが、物語の中とはいえ秩序を乱す怪物に似ていると言われるのはちょっと
……
」
「あー
……
成程ね。でもさ、こう考えられない?」
「何でしょう?」
「ちょっと格好良いかも、って」
「は?」
「人ならざる存在とか、永遠の命とか、何かロマンがあると思わない?」
「貴方にもそんな子供みたいな感性あったんですね」
「どういう意味だよ」
「そもそも百歩譲って私がヴァンパイアになったとして、そうしたら誰が皆さんを起こすんですか?私、太陽の光浴びたら灰になっちゃいますよ?」
「それなら皆で夜に起きようよ。月の光とか浴びながらさ」
「貴方がいつものカフェに行きたくなった時はどうすれば?ふみやさん一人だと信じられない量を食べるから、一緒に着いて行ってあげられないのは不安です」
「それなら、昼にスイーツをテイクアウトして、夜にお前の目の前で食べるよ。それなら安心じゃない?」
「
……
そうして日々を紡いだ先に、貴方が天寿を全うした後、私は一体どうすれば?」
「
……
えっ?」
「怪物として永遠の命を得た私は、貴方の居ない世界でどう生きたら良いのでしょう?」
私の言葉を聞いて、ふみやさんは考え込んでしまった。正直、自分でも大人げない質問だと思う。
でも、それをふみやさんに告げずに話を流してしまうのは、何だか嘘をついているみたいで嫌だった。例えこの会話が、他愛のない世間話だったとしても。
しばらく黙っていたふみやさんが、顔を上げて口を開いた。
「それならさ、一緒に生きようよ」
「それは、一体どういう
……
?」
「永遠に。ヴァンパイアならさ、出来るだろ?」
ヴァンパイアなら出来る
——
そう言われて昔読んだ小説の内容を思い出す。
「
……
そう言えば、ヴァンパイアに噛み付かれた人間は、ヴァンパイアになってしまうんでしたね」
「そういう事。まあ、本当に理解がヴァンパイアになったらの話だけどね」
「なる訳ないでしょう!」
「逆に俺がヴァンパイアになったら、真っ先に理解に噛み付くからそのつもりでよろしく」
私の首筋を服の上から人差し指で撫でるふみやさんの表情は、笑ってはいるけど真剣で、紫の瞳は私を捉えて離さない。
「
……
その時は、せめて優しくして下さいね」
「そういう所は人間の内に直してくれ」
「ハァーーッ!?」
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