三毛田
2025-09-13 22:18:54
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14 014. 駆け引きもできない

14日目
駆け引きできずとも、まあいいかと。

 俺が好きなあの人が、俺のことを好きだったらいいのに。
 そんな不純な気持ちで、今日も彼の元を訪れる。
「丹恒先生。今日もお願いします」
「昨日の続きからだ。共感覚ビーコンで会話は出来ても、文字が読めなければ意味がない星もある。昨日はそこまで話をしたな」
「はい」
「比較的覚えやすい言語を揃えた。まずはこれからだ」
 俺の雑な駆け引きに気づいているけれど、気づかないふりをして。
 彼は、こうして己が持つ知識を与えてくれる。
「まずは、この基礎的な単語から。覚えたら、挨拶の言葉へと進む」
 単語の書かれた紙と、ノートを渡される。つまり、書いて覚えろということだ。
「覚える言語が増えれば増えるほど、知識も増える。現地の書物をアーカイブに収録するときも、整理整頓が楽になるんだ」
「丹恒。丹恒は、こうして学ぶことは楽しい?」
「楽しい。とは、また違うのかもしれない。だが」
「だが?」
「今まで、列車に乗るまではそんな暇も時間も与えられなかった。他の星の言語を知り、その地の歴史や生態系を記した書物を読めるようになるのは……そうだな。さっきは否定したが、きっとこれが〝楽しい〟なんだろう」
 気づきを得た。
 それが嬉しい。
 声色から、そんなことが読み取れて。
 俺も嬉しい。とは、まだまだ言えないけど。
「そっか。丹恒が、印象に残った言語を俺にも教えて。お前の楽しいを、俺も知りたい」
 そう告げると、灰緑の瞳を丸くして。数回瞬き。
「今の言語を、覚えてからだ」
「はーい」
 きっと一日じゃ覚えきれない。きっとそれは、彼もわかっている。
 だからこその提案。
 だと勝手に思っている。
「うーん……
「そろそろ休憩しよう。パムが持って来てくれた、ティーセットがある」
「わーい! 今日のおやつは何だろう」
 大きく伸びをしていると、丹恒がそう提案してくれて。
 首を回し、肩も回してから丹恒を手伝う。
「お前は椅子に座っていろ。俺は布団でいい」
「いやいや。お前が座れよ」
「俺は飲み物だけでいい。だから、俺の分もお前が食べろ。食べるなら、テーブルの方がいい」
 そう言って、ティーカップを手に布団に腰かけ。
 さっさとそうされてしまったら、俺は椅子に座るしかなく。
 唇を曲げながら彼を見たけれど、デザートを口へ入れたら不満な気持ちはどこかへ行ってしまう。
「美味しい! 丹恒も、一口どうぞ」
「いや……貰うか」
 差し出したフォークへ顔を近づけパクリ。
 彼の口から見えた真っ赤な舌に、ドキッとしたのは秘密だ。