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望月 鏡翠
2025-09-12 23:11:17
1040文字
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日課
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#1841 沼地の魔女
#毎日最低800文字のSSを書く
唾を飲み込み、口がカラカラに乾いていたことに気づいた。お茶はとうに冷め切っていて、一気に飲み干した。
「あなたも、そうなのですか? 私の望みを拒否し否定しますか?」
北の賢女は、器に新しいお茶を注いだ。近づくときに宝物を蹴散らしていく。
「アンタは最初からアタシのところに来るべきだった。ここ北の賢女にして恐ろしき沼地の魔女ケリアククリのところにね」
自称魔女は立ち上がり、胸に手を当てて朗々と語った。暗がりに蟠るようだった女は、天井に頭をぶつけそうなほど大きく見えた。
最初年寄りのようだと思った女は、語るたびに若返るようだった。
「アタシの権能を知っている? 北の賢女に碌な力はない。確かそれは常に米飯を生み出すことができるだけだ。
「いつでも炊き立てのご飯が食べられる」
「なんだいそれ。誰がそんなこと
……
いやアタシか。確かにそんなことを言った気もする。違う違う」
彼女は手を振った。
「本当はこれ。この家やお茶や薪。その辺全部だよ」
まさか魔法で全部作り上げたとでもいうつもりなのだろうか。私は案内人と顔を見合わせついでにその手がまた宝石を握り込んでいないか目を光らせた。
「別の世界からものを持ってくる。それがアタシの権能。だからこんなところで炊き立ての米が食べられるしお茶が飲めるし薪を用意できる」
そういう彼女の手に金属の筒が現れた。それがなんであるのか、私にはわからなかったがともかく何かをし、その権能は食事を取り出すだけではないらしいことは理解できた。
「つまり、あなたの権能は別の世界に移動することができるようなものだと?」
「理論上は十分に可能。アンタがそれを望むのなら」
じわり、と胸の内側に熱が広がった。温もりとは違う。胸の奥底を焦がし尽くすような熱情だ。諦めようと必死に鎮めた望みに火がついている。
こんなに簡単なことだったのだ。
私は初めから北の賢女を頼るべきだったのだ。役に立たない他の賢女などではなく彼女に。
私は膝で宝物を押し除けながら置いているようにも若く見える不可思議な女ににじりよる。
「お願いします。何を差し出せば良いのですか。何をすればこの退屈な世界から抜け出せるのですか」
北の賢女は鷹揚に笑った。
今や彼女は女神に見えた。
「アンタがここに来るまでに集め捧げ物の全部。それだけあればいい」
その程度で良いのなら、ここまでの旅路を思えばむしろ安い。私は喜んで荷物の全てを彼女に渡すことを約束した。
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