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望月 鏡翠
2025-09-11 23:02:32
936文字
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日課
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#1839 願い事
#毎日最低800文字のSSを書く
話を続ける前に、彼女はたっぷりと時間をかけてお湯を沸かし、お茶を入れた。
その茶はいったいどこから来たなんのお葉なのかもわからない。初めて嗅ぐ匂いがした。
意外にも器は三つ用意されていた。客人をもてなすという考えが、一応存在しているらしい。
器を受け取るとき、近づいた賢女からは花と蜂蜜の匂いがした。指先と、その瞳を見て彼女は見た目よりも、若いということを確信した。
年老いて見えるのは、日が焦がした肌に皺が深く刻まれ、焼けた髪は色が落ち乾いて水分を失っているからだ。日に当たらぬ声だけが若々しい。
それは彼女が夏の間のほとんどを、野外で過ごしていることの証でもあった。外には、獣と水と苔。あとは岩と夏でも溶けない氷しかない。
「さて。あのおせっかいのお人好したちが、どうしてそこまでアンタを嫌うのか、聞かせてもらいたいね」
なぜか、楽しそうであった。
それが良き徽なのか、悪しき前兆なのか知らないが、ともかく語るより他なかった。
ここは彼女の家であり、いつだって私たちを虫の湧く荒涼とした大地に追い返すことができたのだ。
「世界を渡りたいのです。私は旅人に会いました。その人が言うのです。ここ以外にも世界がある。彼はそこから来たのだと」
案内人は私の旅の目的は知らない。
故に初めてこの話を聞いて、胡乱そうにこちらを見やった。その視線は、私の支払い能力に対する不安である。夢と現実の境目がわからない者の手元に金が残るのかと、そう言う類の懸念だろう。
しかし、金は私のような者のところにこそ貯まるのだ。それは四人の賢女の全てを訪ねることを可能にし、貢物を用意して、案内人を雇い、とうとう北の極地まで押し上げた。
その上で、私はここよりももっと別のところに行きたいのだ。神秘のなくなったこの世ではなく、全く異なる理の支配する世界に飛び立ってみたいのだ。
北の賢女は眉間に皺を寄せた。
「はあ、なるほどね。分かった分かった。理解したよ。アンタがどうやって他の三人に嫌われたのか」
「嫌われたわけではないです」
頼み事を断られただけだ。賢女を頼って聞き入れてもらえない人など、たくさんいる。
しかし北の賢女は、呆れたように首を横に振った。
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