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💫🌟(クラルタ)
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【クラルタ小説】ねじまき人形とふたごのはなし
人形化した🌟と妖精のままの💫のはなし/モブ・主あり/メリバ気味&全体的に暗めなので大丈夫な方のみどうぞ
僕の朝は、ルタのねじを巻くところからはじまる。
きりり、きりり、と彼のうなじが音を立てれば、綺麗な薄紫色の瞳が少しずつ見えてくる。
「もう朝?おはよう、クラーク」
柔らかい声がして僕は大好きな彼に笑いかける。
「おはようルタール。今日も目覚めてくれてありがとう」
今朝のルタの占い結果を、国のあちこちに設置してある「占い結果表示マシン」に送信する。きっとマシンの前にはたくさんの国民たちが集っていて、占い結果に喜んだり気合いを入れたりしているだろう。ちょうど今の僕みたいに。
今日の占い結果は、”大切なものをもっと大切に”。僕にとっての大切な存在は主とルタだから、今日は3人のためにうんと頑張ろうと思う。そうだ、夕飯は僕が作ってみようかな。
そんなふうに考えているうちに、ルタは朝ごはんであるトーストとサラダとスープを食べきっていた。
「ごちそうさま」
手を合わせて丁寧に頭を下げる姿は小さな頃から変わらない。僕は流れるように彼の後ろへ行き、シルクの服の隙間から手を差し入れる。
ぱたん。
突起に指をひっかければ、ルタの背中が開いて中の歯車やコードが露出する。すっと自動で持ち上がってきた袋を取り出して新しいものと交換する。袋の中にはさっきの朝食が入っているのだ。
再び自動でお腹側に行く新しい袋を見送ってから、僕はルタの背中を閉じる。今日もルタは壊れずに動いている。それが分かるだけで僕はひどく幸福な気持ちになった。お皿を全自動食器洗いマシンに突っ込んで、キッチンの小窓から空を見る。いい天気だ。
「こほ」
ルタの咳が聞こえて、僕はにわかに慌てる。さっき歯車を見た時は噛み合っていたのに。喉のあたりだろうか。
「大丈夫?どこが辛い?」
「平気だよ。さっきのサラダが胸のあたりに引っかかってたみたい。今はもう大丈夫」
そう、と僕はほっとする。調子が悪いときのルタは、妖精が風邪を引いたときの症状を出すことが多い。熱くなったり、咳をしたり。メンテナンスは怠らないようにしているのだけれど、いかんせん複雑な作りなのと旧式のパーツが多いので不調もたびたび起こる。
(本当は最新のパーツに入れ替えてあげたいんだけど)
けれどそれをしてしまってルタがルタでなくなることが僕は怖い。どんなルタでも愛せる自信は確かにあるけれど、兄が望んでいたのは変わらない存在であることなのだった。
自分の願いを優先して兄の望みを反故にしてしまうことは、僕の本意ではない。けれどもしもルタが壊れてしまったら。一瞬ぞくりとする想像をしているうちに、ルタは鼻歌交じりにランドリールームへ行ってしまった。
☆☆☆
翌日は、ひどい雨だった。
占い結果は、”できる限り慎重に”。そんな日に限って僕は遠方の会議に出席しなければならなかった。
「もしも何かあったら工房へ行ってね」
朝から何度目かになる言葉を言えば、ルタは「分かっているよ」と笑ってくれた。
工房には僕以上に腕利きの職人がいる。ルタを人に任せるのは嫌だけれど、ルタの調子が悪くなってしまうのはもっともっと嫌だった。彼らにも出かけることは伝えてあるので、ルタのことを気にかけてくれるだろう。
朝一番にルタが壊したトースター(同じ機械同士なのにルタは機械の扱いがめっぽう弱い)を直してから、僕は外出の準備をはじめる。今回の会議の議題は、国中のあちこちにある天文台のデータを上手くまとめるためのシステムについて。もっと効率的にデータを共有して、ルタの占いに役立てたり、流れ星の被害を防いだりできるようにしたい、というのが趣旨だった。
「えっと
…
資料は持ったし
…
計測ツールと、念のための雨具と
…
」
大きなトランクの中を確認している僕を、ルタは興味深そうに見ている。それから小首をかしげて僕に問う。
「ずいぶん荷物が多いね。持ち歩くの大変じゃない?」
「う
…
でも、心配だから
…
」
トランクの中には、列車の中で食べるためのお菓子から常備薬、ブランケットまで詰め込まれている。確かに入れすぎかもしれない。足りないものなら向こうで買ったって良いんだし。けれど。
悶々と考えていればルタは笑う。
「クラは昔から変わらないね。小さい頃旅行に行ったときにも、自分の背よりも大きなトロリーケースにおもちゃや本を詰め込んでいたっけ」
「さすがにもうおもちゃは持っていかないよ」
「ふふ」
ルタの笑顔に後押しされて、僕は結局トランクの中身を減らさないことにした。”できる限り慎重に”と占いでも出ていたのだし、お菓子も薬もブランケットも馴染みのあるものの方が良い。
「そうだ、これ」
ルタが手のひらに乗るサイズの小瓶を渡してくれた。中には、淡い色の小さな塊がたっぷり詰まっている。
「金平糖?」
「うん。俺のお気に入りの」
旅先で食べてね、とルタが言ってくれて、僕はとっても嬉しくなる。ルタのお気に入りを持っていけるなら、ひとりのお出かけも寂しくない。
ありがとうと言えばどういたしまして、とルタが答えてくれる。
「あとはもういいかな」
トランクのベルトを留めて、鏡で服装や髪の乱れを確認する。大丈夫だ。
「じゃあ行ってくる。主とお城をお願いね。それから何かあったら
…
」
「工房でしょ。分かっているよ」
にっこりと笑ったルタの頬に軽くキスをして、僕は家を出た。唇をあてた頬はつるりと綺麗で、ひんやりしていた。
「
…
これはちょっと無理ですね」
朝から続いた雨は止むどころかどんどんと酷くなっていた。既に日が沈んだ藍色の空からは暗い色の雨がとめどなく降り続いている。屋根に落ちる水音は止む気配もなく、ずっとずっと続いていた。視界不良を原因に列車も運休が決まっている。ここのところ晴れの日が多かったせいか湖や河川の水位は問題ないようだったけれど、できれば城に帰りたいと思った。ふたりの主やルタは、雨を怖がっていないだろうか。
「車も無理?」
「ここのあたりは土砂崩れが起きやすい地域でして
…
。もう夜も遅いですしできれば日が昇ってからが良いと思います」
「
…
そっか」
ここでごねても仕方がない、と僕は気持ちを切り替える。自分のわがままでまわりを巻き込むわけにはいかない。
「分かった。どこか泊まれるところを手配してくれる?城への連絡は僕がするけど、他に家と連絡をとりたい人は?」
連絡用のタブレットを手に取りながら言えば、数人の同行者が手を上げる。
そんな風に諸々の手配をしてようやく宿にたどり着く。同行者たちの配慮で僕はいちばん広い部屋にひとりで泊めてもらえることになった。素朴だけれど清潔感のある部屋まで送ってくれたひとりが、ぺこりと頭を下げる。
「天気予報だと明日の朝にはやむようなので、朝ごはんの前にお迎えに伺いますね。列車の手配は別のものがする予定なので」
「うん、ありがとう。おやすみ」
ようやくひとりになってほっとする。タブレットを操作して確認すると、主からの返信が入っていた。「こっちはみんな大丈夫だよ☆クラくんも気をつけてね☆」そんな短いメッセージに顔がほころぶ。守るべき存在でありながら、時に親のような、はたまた友人のような彼が小さな手でタブレットに文字入力しているところを思うだけで、幸福な気持ちになれる。そして彼が「みんな大丈夫」というのなら、ルタも大丈夫なのだろう。雨の日は湿度のせいかときどき歯車が軋んでしまうから心配していたけれど、機械に関して真摯な主が大丈夫というなら安心だ。
さて、と改めてトランクの中から会議の資料を取り出して内容を再確認する。かなり大規模な事業になりそうだな、と思う。もしかしたらこんな風に泊まりで仕事をすることも増えるかもしれない。
(
…
ルタをひとりにさせちゃう)
ひとりきりで寂しがっているルタを思えば、胸がきゅう、となる。きっと主がねじを巻いてくれて歯車の調子を見てくれるけれど、ルタはきっと主に甘えたりはできないから。
僕よりもずっと丁寧に主に接するルタは、本当につらいときに彼らに寄りかかれるだろうか。
(ルタ
…
)
ばらばらと強く屋根を打ち付ける雨の音を聞きながら、僕はルタが今日安らかに眠れるかどうかを考える。たくさんの星々で彩ったベッドでルタは今何をしているだろう。似たような雨音を聞いているだろうか。それともねじが切れてもう寝ているだろうか。
お風呂に入って、パジャマを着て、それから僕はトランクの底に沈めていた金平糖を手に取った。ルタがくれた優しさの塊を口に入れる。強烈な甘さで顎の裏が痛くなって、思わず目をぱちぱちさせた。
「これ、こんなに甘かったっけ
…
?」
いつものお菓子屋さんで買ったルタのお気に入りの金平糖だと思ったのに、と僕はラベルを見ようと瓶をひっくり返す。
途端に、雨音が静かになった。
☆☆☆
「クラ、クラおはよう」
ルタの優しい声が聞こえて、僕はぱちぱちと目を瞬かせる。ルタが先に起きている?どうして?ねじを誰かがまいたんだろうか?
「どうしたの、お寝坊さんだね?」
ふんわりと笑ったルタは、朝ごはんにしようよと僕の頭を撫でてくれる。
「
…
あさごはん
…
」
「そう。朝からホットケーキを焼いたんだよ。クラ、ホットケーキ好きでしょう?」
ホットケーキ!と僕は思わず声を上げる。朝から僕の好物が食べられるなんて。そんな幸福な目覚めがあって良いんだろうか。
「じゃあダイニングに行こう」
「早くおいで」とルタに言われて、僕は慌ててダイニングへ行く。そういえばまだパジャマだし髪もとかしていない。でも良いにおいがする。お行儀が悪いような気がしたけれど、ルタがおいでって言ってくれるから今日は良いんだろう。
「召し上がれ」
目の前には、星の形をしたホットケーキが三段も重ねられていた。なんて幸せな光景だろう。「お代わりもまだあるよ」とルタに言われて、僕は嬉しくてぱくぱくとホットケーキを頬張る。優しい甘さのホットケーキ。ほんのりバターが香って、ふわふわで。
「美味しい」
「良かった」
ゆっくり食べてね、とルタはニコニコしてくれた。それからコーヒーメーカーに手を伸ばして、「あっ」と声を上げる。同時に、ぱちん、と何かがはじけたような音がした。
「どうしたの?」
「ごめん
…
」
ルタの手には、コーヒーメーカーのレバーが外れた状態で握られていた。どうやら壊してしまったらしい。
「大丈夫、あとで直しておくから」
僕がそう言うとルタは「ありがとう」と言って笑ってくれる。良かった。僕が機械いじりを好きになるのとルタが機械をよく壊すようになったのはどっちが先だっただろうか。卵と鶏みたいだねなんて笑ったことを思い出した。
(あれ、でもこんな壊し方をするんだっけ?いつもはもっと
…
機械同士が喧嘩をするような音がして
…
)
はて、と首を傾げた僕にルタは不思議そうな顔をして見せた。なんだかほっぺたが少しだけ赤味を帯びている気がする。
「どうしたの?クラ」
「
…
ううん。ねえルタ、少しだけ背中を見せて」
背中?と不思議そうな顔をしながらルタはそれでもくるんと回ってくれた。僕はシルクの服の隙間から手を差し込む。
「わっ、なに?くすぐったいよクラ」
「えっ
…
?」
そこには何もなかった。指をひっかけられる突起がない。慌てて僕は彼の首飾りを引っ張ってうなじを見る。あるはずのねじまき用の穴がない。
「クラ?どうしたの?」
「
…
ルタ、大変なことが起こってる。ルタがただの妖精になってる」
「クラ?」
「どうしよう、主に報告
…
ああでもその前に工房で一回全部確認したほうが良いのかも。ねえルタ、身体が変な所はない?辛いところや違和感のあるところは?ご飯は食べたの?食べたものはどこに行ってしまったの?」
「クラ、クラ落ち着いて」
そう言ってルタは両手で僕の頬を包む。僕はすんでのところでルタを突き飛ばしてしまうところだった。こんなのルタじゃない。だって手があたたかい。
「
…
どうしよう、ルタが壊れちゃった。これじゃだめなのに」
クラ、とルタが何度も僕を呼ぶ声がする。けれど僕の混乱はそう簡単にほどけそうになかった。頭の中がぐちゃぐちゃになる。
「このままじゃ、ルタが変わってしまう」
☆☆☆
ぱっと目が覚めたときには、雨音は静かになっていた。
まだ降っているものの静かな水音の中に、時折雨粒がぷつんぷつんと落ちる程度で、どうやら列車も動きそうだった。
時計を見れば早朝ともいえる時間で、僕はぼんやり窓の外を見る。
(おかしな夢を見たような気がする
…
)
夢の中身はなにひとつ覚えていないけれど、なんだか焦っていたような気がする。妙に心臓もばくばくして疲れている気もする。ルタの隣で寝なかったから、あんまり良くない夢を見たんだろうか。
タブレットを操作して、主とのメッセージアプリを立ち上げる。こんな時間にルタの様子を聞くのは、さすがに無礼だろうか。けれど主やお城の様子も気になる。
やきもきしていると、ぽん、とタブレットが音をたてた。
「おはよう☆今日は早起きがんばったよ☆雨もやんだみたいだね☆僕たちはみんな元気だよ☆ルタくんのねじもちゃんと巻いたよ☆早く帰ってきてね☆」
キラキラと輝く星の絵文字がいっぱいのメッセージに、僕はたちまち幸せをもらう。こんなに朝早く目が覚めているなんて。きっと僕が心配していると思って、早起きしてくれたんだろう。大切な主が寝ぼけまなこでみんなの様子を見てそれからメッセージアプリを立ち上げているさまを想像する。なんて愛しい風景だろう。
早く帰らなくちゃ、と思いながら荷物をまとめる。結局使うタイミングのなかったブランケットを畳みなおしているときに、それは転がり落ちてきた。
「金平糖だ」
そういえば昨日寝る前にかじった気がする。どんな味だったかはあまり覚えていない。覚えていないということはつまり、いつもの味だったんだろう。
(まあいいや。列車の中で食べようっと)
僕はポケットの中にそれを入れる。ざっとベッドメイキングをしたところで、同じ宿に泊まっている同行者が部屋の扉をノックする音がした。
昨夜から運休になってしまったせいか、列車は酷く混んでいた。デッキで壁に寄りかかって外の風景を見ていると、同行者がしおれたように話しかけてくる。
「すみません、お席の確保ができず
…
」
「いいよ。小さい子とかお年寄りを優先させてあげて」
気づかう同行者を適当にあしらって、僕はぼんやりと外の風景を見た。小さい頃は次々変わっていく街並みが楽しくて、窓ガラスにへばりついていたことを思い出す。
(そういえばルタは嫌がってたな)
建物がすぐなくなってしまうのが怖い、と兄は目をぎゅうっとつぶって小さくなっていた。主が気づかって、それから遠方での仕事は僕がひとりで行くことになったんだ。
(あの時はまだ、ルタは人形じゃなかったんだっけ)
僕と一緒に背を伸ばして、手足を大きくしていたころ。ちら、と僕は車内を見る。座席にはお年寄りが座っていて、隣にいる小さな子どもと何やら楽しそうに話していた。
(そうだ、ルタはあんなふうに年を取ることはもうない
…
)
そう思ったとき、僕はぽつん、と胸の中に何か寂しさが浮かんでくるのが分かった。これから先、僕の顔には皺が刻まれて、腰が曲がったりするんだろう。けれどルタは変わらない。人形なのだから。主がなにひとつ変わらないように。
「
……
僕だけが、変わる」
皺だらけの手で隣に座った子の頭を撫でているお年寄りを見て、僕は小さくつぶやく。同行者が「何か?」と問うてくるので頭を横に振った。
それからふと思い出してポケットに入っていた金平糖を取り出す。同行者に食べるか聞いたけれど遠慮されてしまったので、ひとりでそれを口に運んだ。
☆☆☆
「あれ?」
タタンタタンと軽やかな走行音がして、僕は列車の座席に座っていた。あれだけ混雑していた車内にはほとんど人影がない。
「どうしたのクラ」
「
…
っ?!えっ、ルタ?」
「ふふ、変なクラ。何かの夢を見ていた?」
ゆめ、と僕は小さくつぶやく。わからない。でもひとりで列車に乗っていた気がする。どうして?そうだ、ルタは乗り物があまり好きではないから。
…
そうだったっけ?
「僕、ひとりで列車に乗っていたような気がした
…
」
「なあに、それ。変なことを言うね。俺たちは主に拾われた時から、片時も離れず一緒にいるんだよ?」
僕はぽかんと口を開く。そうだったっけ。そんな気もする。だったら僕は悲しい夢を見たんじゃないか。ルタを置いてひとりで列車に乗っているなんて。
「それにしても今日はいいお天気だね。昨日の土砂降りとは大違い」
ルタがそう言って、僕は頷く。そうだった。昨日は列車が止まるほどの大雨だったんだ。その割に列車は空いている。みんなまだ眠っているんだろうか。
「あんなに雨が降ってしまったなら、お空のお星様たちもびしょ濡れかもしれないね。風邪をひかないと良いけれど」
「そうだね」
ふと列車内を見れば、斜め前にお年寄りと小さな子どもが乗っていた。小さな子どもの頭を、お年寄りが優しくなでている。
「素敵だね」
ルタが僕の方に身を寄せながら言う。
「俺も、いつかあんな優しいおじいちゃんになりたいな」
「
…
えっ?」
何を言っているんだろう。変わりたくないと言っていたのはルタだったのに。
「ねえ、俺たちずっと一緒に年を重ねようね」
そう言ってルタが僕の手を握る。
(あったかくて柔らかい
…
)
酷く嫌な予感がした。僕は握られていない方の手でルタの手首に触れる。間違いなく、僕と同じ血液の流れる感触がした。
「
――
待って、どうして」
「クラ?」
こんなはずはない。ルタの胸には歯車しか入っていないはずなのに。ぱっとルタの手を見れば、爪が少しだけ伸びていた。伸びるはずのない爪が。
「
…
ルタ、どうして」
「クラ、落ち着いて。どうしたの?」
「僕、失敗してしまったかもしれない。ルタに不変を贈ってあげたはずだったのに。どうして君は」
「クラ?」
何を間違ったんだろう。ねじを巻く回数?歯車の数?アームの強さ?
「どうしよう、君のただひとつの望みすら叶えてあげられないなんて」
☆☆☆
「
…
ラーク様、クラーク様」
「えっ
…
」
名前を呼ばれてはっと顔を上げる。
「すみません、お疲れのところ。ですが次が降車駅ですので
…
」
「あ
…
いや。
…
僕、寝てた?」
「はい。立ったままそれはもう器用に」
凄いですねえと妙な関心をする同行者に若干の居心地の悪さを感じながら、僕は軽く首を捻って鳴らす。ぽきぽきという音とともに、頭がさえてくるのが、わかった。何か夢を見ていた気もするけれど、頭の動きとともにその記憶は落ちてしまっているようだった。
そうしているうちに列車は駅に静かに滑り込んでいく。このまままだ列車に乗っていくという同行者に簡単に挨拶をすると、駅のホームに降り立った。
ふとホームにある「占い結果表示マシン」が目に入る。”愛する人へ贈り物を”。今朝もルタは占いをしてくれたらしい。マシンに送信してくれたのは主だろうか。
(贈り物か
…
)
確かに、期せず留守番をさせてしまった主とルタに何か買って帰るのも良いかもしれない。ルタが金平糖をくれたみたいに。
僕は鼻歌を歌いながら、ホームから改札口へと歩いていく。
変わらない3人の愛する存在の笑顔を思い浮かべれば、どんな困難でも乗り越えて行けるような気がした。
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