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roku
2025-09-11 08:42:54
1876文字
Public
イチ沢
ホワイトデー【イチ沢】
・バレンタインにチョコをあげてないのにホワイトデーにお返しをねだる沢北の話
ククvol.2に合わせて掲載したもの
pixivから移動(2025.4.12掲載)
「今日何の日か知ってます?」
朝からどこかそわそわしていた沢北がその日の夜一之倉に訊ねた。
「ホワイトデー」
「知ってたんだ」
即答した一之倉に対し沢北はどうやら知らないと思っていたようだ。
「そりゃね。ちゃんとお返ししたし」
お返しをした。その言葉にひっかかりおのずと眉間にシワが寄る。
「オレ、貰ってないんすけど!しかもイチノさん、お返ししたってことは誰かから貰ったってこと!?そんなのオレ知らないんすけど!どういうことっすか?ねぇ!」
捲し立てるように言い放つ沢北に、一之倉の目が丸くなる。
「色々わかんないんだけど」
「何がっすか?」
むすっと唇を突き出す。
「返したのはもちろん貰ったから。でもそれをお前に言う必要あった?」
言えば、それがどんな人なのか、受け取らないでほしかった、お返しはするのか、などと言い出しかねず、それが面倒なので黙っていた。ここに来て一之倉が事実を告げたのは、もう過去の話となり、さらにそういう流れになったからだった。
「それは
…
」
口ごもる沢北に一之倉は続けた。
「“オレ貰ってない”そんなの当たり前だろ。バレンタイン、お前はオレにチョコくれた?」
「え、あ、オレを
……
」
「ん?」とソファに座る沢北の顔を覗き込む。
『チョコレート準備できなかったんで、オレがチョコレートってことで食べてください!』
『何それ。クリスマスや誕生日の“プレゼントはわたし”と同じやつ?』
一之倉はバレンタインにそれをする人間を初めて見た、などと笑いながらも美味しくいただいた。
「あれ本気だったんだ」
「いや、違う
…
違わない
…
?というか、渡そうとはしました!!でも渡せなかったんですよ
…
」
意味ありげに言いまた唇を尖らせる。お得意の拗ねる仕草。
「どういうこと?」
「それは
……
その、」
「何隠してんの?」
この切れ長の瞳に捉えられれば、嘘も言い訳も通用しないことはわかっていた。
「あの
…
何ていうか
……
」
普段は後先考えず思ったことをすぐ口にする沢北にしては珍しく言いよどんでいる。
「それはあの日お前から甘い匂いがしたのと関係ある?」
「え、えぇっ!?」
まさかそんなことを言われるなんて思っていなかった沢北から大きな声が漏れた。
「あるんだ」
「
……
はい、まぁ」
事の発端は沢北がバレンタインに手作りのチョコをあげたいと言い出したことにあった。渡す相手はもちろん一之倉。相談を受けたのは元山王バスケ部メンバーで、料理もといお菓子作りなどとは程遠いところにいるメンツだった。
「無謀なことはやめて買った方がよくない?」
「オレもそう思う。今はどこでもそれなりのもんが手に入るだろ」
野辺と松本のもっともな意見に河田が「まぁ無難だべな」と相槌を打った。
「もぉ!だから嫌なんすよ!無難ってことは普通ってことでしょ?誰とも違うものをあげたいんす!!」
そう言った沢北に「これなら作れそうピニョン」と調べたレシピを見せる深津。
確かに材料は少なく、溶かしたチョコに生クリームを混ぜ合わせ固めるだけという簡単なものだった。
「えー!?こんな誰にでも作れそうなやつは嫌です!もっとこう
…
イチノさんがびっくりするぐらいすげぇやつがいいです!!」
わがまま全開の沢北に呆れ返ったメンバーは揃って溜息を漏らした。
結局これがいいです!と選んだ明らかに上級者向けのチョコレートケーキは見事失敗に終わり、その結果、甘い匂いだけが身体にまとわりつき、肝心のチョコレートは渡せずじまいとなってしまったのだ。
「ふっ
…
ははっ!何それ」
「もう
…
真剣だったんだから笑わないでくださいよ
…
」
「買ってくれればお返ししたのに」
「いや、なんか、失敗したからって適当に買うのは違ったんすよ
…
」
「ふーん。
……
沢北ってさ、本当にかわいいよな」
肩を抱き寄せた一之倉はそのまま沢北の唇を奪う。
「
……
っ!イチノさんっ!?」
「お返し、いるんだろ?」
目元がすうっと細くなり、緩やかに口端が上がっていく。身の危険を感じた沢北は慌てて一之倉から距離を取ろうとするがそんなことが許されるはずもなく、そのままソファに押し倒されてしまった。
「あ、えっと、オレ、チョコ渡してないんでお返しなくていいっす!!」
「ん?サワキタエイジっていう甘い甘いチョコレート食べたからさ」
まだ何か言いたげな唇を自身のそれで塞げば、諦めではなく期待を宿して潤んでいく瞳が欲情を煽る。
「
……
っ、イチノ、さん
……
」
「お返しはオレってことで」
一之倉は絡めた指に力を込めた。
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