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roku
2025-09-11 07:58:08
2168文字
Public
松深
鈍感【松深】
・大学生軸/両片思い
pixivから移動(2025.2.1掲載)
「二十歳になって初めて飲む酒は松本とがいいピョン」
「別に構わねぇぞ」
エリアは同じだが別の大学に進学する深津と松本が卒業式に交わした約束。指切りを迫った深津に「子どもみたいだな」と指を絡めた松本が、まだ蕾が固く閉じた桜の下で、その整った顔に花を咲かせると、つられて深津も笑った。
あれから二年。今日は深津の二十歳の誕生日だ。松本はあの日の約束を果たすため、大学の友人の誘いを断り深津の大学へと向かった。
「お疲れさん」
「
………
ピョン」
正門から出てきた待ち人に声をかければ、黒目がちの瞳をゆっくりと大きく見開いた。
「なんだよ?」
「何してるピョン?」
実に二年ぶりの再会に、目の前の人物は懐かしさや喜びではなく不審感をあらわにした。
「二十歳だろ?」
「あ」
「まさか忘れてたのか?」
「まさか覚えてたのか?」
動揺で接尾語を失った深津は、高校三年間で数えるほどしか見たことがなかったが、込み上げた懐かしさに頬が緩んだ。
「指切りまでしたじゃねぇか」
「
………
ピョン」
松本の言葉に深津は居心地が悪そうに視線を下げた。
「酒、準備してねぇから買って帰ろうぜ」
そう言いながら深津の少し厚みのあるかさついた手を掬い取れば、勢いよく払われてしまった。
「
……
な、何するピョン!?」
松本を捉える瞳はゆらゆらと揺れ、頬が一瞬にして朱に染まった。
「あ、すまん」
やってしまったという思いと、もしかして
…
という思いが松本の中で交錯する。
「松本、どこ行くピョン?」
「あー
…
オレんちって思ってたけど、どっか店探すか」
このまま家で酒を飲んだとして自分を抑える自信のない松本が歩き出す。
「
……
松本の家でいいピョン」
深津はくいっと松本の上着の裾を引っ張った。
松本は「本当にいいんだな?」と強く確かめる。
「ピョン」
これは肯定のピョンだった。
◇
「おじゃましますピョン」
玄関を一歩入った深津が何かを思ったのか辺りを見回している。さすがにもう少し片付けておくべきだったと反省した。
「散らかってるけど適当にしてくれ」
先に部屋の中へ入った松本はソファに置きっぱなしのジャージを洗濯機へ放り込むと、玄関先で靴を履いたままの深津に「どうした?」と声をかけた。
「
……
タバコ、吸うピョン?」
あぁ、そういうことか。戸惑う深津に「イチノがな」と告げれば、ホッと安堵の表情を浮かべた。
「吸ったことあるピョン?」
控えめに訊ねた深津はソファに座り、置いてあったクッションを抱えた。
「一回だけな」
「オレも試してみたいピョン」
「残念だな。ここにはねぇわ」
「じゃあ今度イチノに貰うピョン。松本とは酒を飲むピョン」
「だな」
深津が選んだ酒とつまみを袋から取り出し乾杯と缶を軽く合わせる。ごくごくとビールを流し込んだ深津に「どうだ?」と問えば「
………
苦いピョン」と顔を顰めた。
「ははっ。ならこっちにするか?」
深津の手からから缶ビールを取り上げて、代わりにアルコール度数のさほど高くないチューハイを渡した。
「それはどうするピョン?」
「ん?オレが飲む」
「好きピョン?」
好きかと聞かれれば答えはノーだが飲めないわけじゃない。大丈夫だと深津に手を伸ばし頭をくしゃくしゃと撫でた。今度は振り払われることはなかった。
深津は松本が渡したチューハイをジュースみたいだとみるみるうちに飲み干した。
5本目に手をかけた深津の目はとろんとなり、上と下の瞼がくっつきそうだ。
「そろそろやめとけよ」
「まだ大丈夫ピョン」
はっきり答えた深津はさらに酒を飲み進める。見た目よりも酔ってはいないのかもしれない。
「松本は
…
」
「ん?」
「付き合ってるやついるピョン?」
その瞳の揺らぎはアルコールのせいか、それとも松本の答えへの不安か。松本は「いねぇよ」という否定の言葉と同時に、自らの手を深津のピンクに染まった頬に添える。
「好きなやつはいるけど」
「
………
ピョン
…………
?」
フッと口端を上げれば、大きく開かれる真っ黒な瞳。
「肝心なとこ、鈍感だな」
ぷくりと分厚い唇をなぞる親指の腹。
深津は試合の時にさえ感じたことのない緊張感に襲われ言葉を発することすらできなくなる。
松本がゆっくりと顔を近づければ、かち合っていた視線を外すようにきゅうっと目を瞑った深津。松本は、深津が逃げないのをいいことにそのまま唇を重ねた。
「
…………
はじめてだったピョン」
「そうか。ごちそうさん」
「その余裕、うぜーピョン」
「余裕?全然ねぇけどな、ほら」
深津を抱き寄せ腕の中へと閉じ込めた。松本の心臓は深津と同じようににトクトクと速い速度で鼓動を刻んでいる。
「
………
続き、するピョン?」
「お前なぁ
…
」
松本はキスさえ初めてだったと言った深津の発言に大きな溜息を落とす。
「松本になら何されても構わないピョン」
腕の中から見上げる深津の瞳には欲情が混ざっている。
「酔ってんのか?」
「酔ってねーピョン」
そう言った深津は松本の肩に力を加えて押し倒した。
「うおっ!」
「鈍感なのはお前も同じだピョン」と見下ろす瞳は真剣そのものだった。
「
……
ははっ、そうかもしれねぇな」
松本は深津の後頭部を捉え、もう一度、今度は先ほどよりもずっと深いキスをした。
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