三毛田
2025-09-09 21:47:40
1075文字
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10 010. いつもより一歩分だけ近付く

10日目
本音はもっと近づけたいけど

「丹恒先生」
「どうした」
「少しだけそっちに寄っても……いいか?」
「お前の好きにしろ」
「うん!」
 俺の部屋のソファーで読書をしていた丹恒へ問いかけると、好きにしろと言われたので少しだけ近寄る。
 立っていたら、一歩分。
 ソファーの端と端に座っていた俺たちの、距離は縮まる。
 勢いで、このまま押し倒したい。でも、嫌われたくない気持ちも同時にあり。
 だから、今はまだこの距離で我慢。
……
……
 互いに、静かに読書とゲーム。
 それが嫌ではないし、どちらかと言えば心地よい。
「たんこ~」
「どうした」
「腹減ったから、パムから何かつまめるものもらってこようかなって。丹恒は食べるか?」
「そうだな……手が汚れないものならば、貰おう」
「わかった。伝えてくる」
 スマホを置いて、階下へと向かう。
「パム。今、大丈夫か?」
「大丈夫じゃ。何かあったか?」
「お腹空いたから、片手で食べられるような軽食ってあるか?」
「包みピザというものを試作してみた。もう少しで焼けるから待っておれ。紙ナプキンで包めば、手は汚れん」
「なるほど」
 包みピザ。熱そうだけど、それよりも美味しそうって気持ちが強い。
「穹。涎が垂れておる」
「え、マジ」
 慌てて手の甲で拭う。
「食材の上に落とさなければ、問題ない。オレの作ったものを楽しみにしてくれていると思ったら、嬉しいぞ」
 ニコニコと笑い、手の甲で頬についた粉を拭う。でも、広がっただけ。
 布巾を濡らして持って来て、そっとそれを拭えば。
「む? ありがとう、穹」
「どういたしまして」
「出来上がったら、部屋に届けるから待っておれ」
「ありがとう。じゃあ、楽しみにしてる」
「うむ」
 丹恒に伝えるため、部屋へと戻る。
「丹恒。今パムが包みピザ作ってるんだって。出来上がったら持って来てくれるってさ」
「なるほど。それならば、待っていよう」
 一度顔を上げ、ちょっとだけ嬉しそうな表情を浮かべ。それからまた視線を戻す。
 今すぐ飛びついて抱き着いて、キスしたい。
 でも、今の俺はまだそんな権利はなくて。
「穹~」
 扉のノックと共に、俺を呼ぶ声。
 慌てて開けれ宇都、トレーを手にしたパム。
「飲み物は、スープじゃ。これも試作じゃから後で意見を利かせてくれ」
「ありがとう。二人で飲んで、レポートにまとめるから」
「簡潔でよい」
 レポートにすると告げたら、ちょっと困ったような顔された。何でさ。
「丹恒、ご飯だ。はい、どうぞ」
「ありがとう。スープも美味そうだな」
「だよな!」