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roku
2025-09-09 16:34:28
2504文字
Public
その他CP
ライバル【松イチ】【沢イチ】
⚠松本→イチノ←沢北
pixivから移動(2024.9.18掲載)
「ねぇ、松本さんってイチノさんのこと好きですよね?」
休憩中。いつもならば河田や深津の元へ行く沢北が、壁にもたれタオルで汗を拭う松本の隣にやって来たかと思えば予想外の言葉を投げかけた。
「あ?」
一瞬で眉間に皺を寄せ険しい顔で沢北を見やる。
「だってめっちゃ見てんじゃん」
「見てれば好きとか、お前は小学生かよ」
フッと表情を崩した松本に、「見てることは否定しないんだ」という沢北の声は届いていなかった。
「んじゃ、オレがもらってもいいですよね?」
「あ?」
先ほどよりも低い声が出る。何を言っているのだこいつは。と呆れるよりも、厄介なことになった。というのが松本の本音だった。
なぜなら松本は沢北が言うように、友情ではなく恋情という名の思いを寄せているからだ。
◇
「イチノさーん!」
「お前は毎休み時間
…
クラスに友達いないのか?」
一之倉はわかりやすくため息を吐きながら気怠げではあるが、決して無視するわけではなく、休み時間ごとにやって来る沢北の相手をしている。
話の内容は大したことではなく、日常的な会話であるが、気になるのはその距離の近さと、時折松本へ送る視線。
今日は、クラスの女子から手相占いとやらを教えてもらったなどと言い、一之倉の手を握っている。「これが恋愛線ですって。運命の相手はすぐ近くにいるかもしんないっすね!」と必要以上に大きな声は一之倉へ、というより松本に向いていた。
松本と視線がかち合った沢北は、勝ち誇ったように口端を持ち上げる。
チッと鳴らした松本の舌打ちがもちろん沢北に届くことはなく、隣の席のクラスメイトがビクッと肩を震わせただけだった。
◇
コンコンコン
その夜、一之倉の部屋のドアを叩いたのは松本だった。名を名乗り、どうぞと許可を得てドアを開ける。
「どうしたの?珍しい」
「英語の予習してたんだけどよ、わかんねぇところがあって。一之倉英語得意だろ?」
松本は準備していたセリフをわざとらしくないように吐きながら手に持っている教科書を掲げて見せた。松本だって苦手なわけじゃないでしょ?と突っ込まれたが、聞こえないふりをして、空き机の椅子を移動させてくる。我が物顔の松本にため息とともに「どこ?」と訊ねた。
「ここなんだが」と教科書を開いてあらかじめアンダーラインを引いていた場所を指差した。
「あー。ここ確かにややこしいよね」
納得した一之倉は左手でペンを取り、書き込みながら説明する。松本は説明そっちのけで手持ちぶさたにしている右手を自身の左手で取った。
「
……
何してんの?」
普段感情をあまり表に出さない一之倉の瞳が揺れた。
「沢北はよくてオレはダメなのか?」
指の腹で手の甲をなぞったり、指を絡めてみたりしながら、右手は頬杖をついて、そのくっきり二重の瞳は一之倉を捉えている。
「は?あれは手相占いだって」
「下心見え見えじゃねぇか」
「何言ってんの?てか、手離してよ」
振りほどくこともできるはずなのに、それをしないのは一之倉の優しさか。それとも
……
。
そんな折、バタンッ!!と勢いよくドアが開き沢北の声が部屋に響き渡った。
「あー!!何やってんすか、松本さん!!」
松本は自分の名前を口にした沢北を振り返る。
「あ?」
「その気もないのに卑怯じゃん!!」
「誰がその気がねぇなんて言ったんだよ?」
「イチノさんのこと好きか聞いたら違うって言ったでしょ!?」
「言ってねぇよ!」
「オレがもらってもいいって言ってたし!!」
「あ?そんなこと、ひとことも言ってねぇだろ!!」
お互い一之倉を譲りたくない思いと比例して声もどんどん大きくなる。ヒートアップしていく言い合いのせいで、開いたドアの向こうに人集りができ始めている。
「松本さん頭いいのに勉強わかんねーとか絶対嘘でしょ!下心しかないじゃん!!」
「お前だってそうだろ!」
「昼間の話っすか?恋愛線はほんとなんで。で、その相手はもちろんオレですよ。ねっ、イチノさん」
「はぁ!?誰が決めたんだよ!オレかもしれねぇだろ!なぁ、一之倉」
ふたりして一之倉に同意を求めた。
その瞬間
――
「いい加減にしろよ!!!!」
部活の時以上に大きくドスの利いた低い声が部屋の壁を揺らす。
一之倉は絡まる松本の手をそのままに、反対側の手は沢北の手首を掴み、自分よりも10センチ以上もデカイ男ふたりを思い切り引っ張る。あれよあれよという間に松本と沢北は部屋の外に追い出された。勢い余って尻もちをついたふたりを見下ろしひとこと。
「これ以上くだらないことばっかりするなら、どっちのことも嫌いになるからな!!」
そう吐き捨てて部屋のドアを思い切り閉めた。
締め出されたふたりは顔を見合わせた。
「松本さんのせいじゃん」
「あ?お前が来なきゃこんなことにはならなかっただろうが」
「はぁ?オレのせいっすか?人のせいにするとか最低なんですけど?」
「どの口が
――
」
ギィと静かに開いたドアの隙間から覗くふたつの瞳。それはもちろんその部屋の主の一之倉。その氷のようなまなざしに沢北と松本は言葉を失くす。
「わからないならいい。おやすみ」
パタンと閉まったドア。一之倉の静かな怒りを感じ取ったのは人集りを作っていた部員たちが先で、蜘蛛の子を散らすように各自部屋へ戻って行き、残された沢北と松本はやってしまったと頭を抱えた。
「イチノさんが口聞いてくれなくなったら松本さんのせいだから
…
」
大きなアーモンド型の瞳に水分を溜めてブスッとふてくされた顔で松本を睨む。
「しつこいな」
「だって!」
「しつこい男は嫌われるぞ?」
「ゔっ
…
」
「次からは正々堂々と勝負な」
「もちろんバスケで!ですよね!?」
「何で一之倉の彼氏になるのにバスケで勝負すんだよ?」
どこか納得のいかない松本が食ってかかるも「負けるの怖いんでしょー」と煽るから、「んなわけねぇだろ」と、結局バスケで勝負をすることになったのだ。
その後、バスケの勝負はあーだこーだと決着の着かないまま、こうして沢北と松本は1週間、一之倉に口を聞いてもらえなかった。
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