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roku
2025-09-09 16:27:41
2286文字
Public
その他CP
好き。【沢イチ】
・人を好きになるとはどういうこと?から、なんやかんや両思いになる話。
・イチノに彼女がいた過去あり。
pixivから移動(2024.9.8掲載 沢イチ処女作)
「ねぇイチノさん」
短い休憩時間。体育館の扉を出たところの階段で水分補給をしていると沢北がやってきた。
「ん?」
ドリンクボトルに口をつけたまま返事をする。
「人を好きになるってどんな感じですか?」
想定外の質問に危うくドリンクボトルが手から滑り落ちるところだった。
「は?」
「オレ、好きだって言われたことはあるけど、好きだって思ったことなくて」
「何の自慢だよ」
「あ、いや、そういうことじゃなくて
…
」
誰とどこでそんな話になったのかはわからないけど、もっと他にいるだろ。適任者が。
「そんなの、オレに聞くより適任者がいると思うけど?」
体育館を振り返り顎をしゃくって示した先は松本。
「あー。一応聞いてみたんすよ。そしたら「お前バスケ好きだろ?その対象が人になるだけなんじゃねぇのか?」って」
「ははっ、何だよそれ」
松本らしいっちゃ松本らしい。モテるくせに人からの好意にはとても鈍感で、バスケ馬鹿だから告白も全部断ってる。その結果あんなにスペックが高いのに彼女いない歴=年齢ってやつ。
「で、イチノさん、中学の時に彼女いたって聞いたんで」
「誰だよ。バラしたやつ」
告白されたことが嬉しくて付き合い始めた。そんな中学生の大したことない話聞いたって何の解決にもならないのに。
「だから教えてください!」
んー
…
と顎に手を当て考えていると、ビーッとタイマーが鳴る。休憩終了の合図だ。体育館へ戻るため立ち上がると、沢北はその綺麗なアーモンドアイを輝かせながら「今日の夜、部屋行きますね!」と笑った。沢北は興味のあることにはよくも悪くも一直線だから、ここで話が終わらないならこうなることはわかっていた。面倒くさいことになったなと内心ため息をつきながら、バッシュの紐をギュッと締めた。
◇
「今日の夜、部屋行きますね!」
その言葉に嘘はなく、就寝時刻の1時間前に沢北はやってきた。
「ほんとに来たのか
…
」
「オレちゃんと言いましたよ〜」
「はいはい、そうだったな。入れよ」
オレは扉に向かって右側の自分のベッドに座り沢北はその向かい側の空きベッドに腰を下ろした。
「それで昼間の話っすけど」と即座に本題を切り出した。沢北らしい。
「あー。人を好きになるって話だっけ?」
「そうっす!」
確かに中学生の頃付き合ってる子はいた。ただ今よりは幾分かマシではあったけど、バスケ漬けだったことは変わらないし、彼女も部活に入っていたから放課後一緒に帰るぐらいだった。その中で手を繋いだことはあるし、バイバイの代わりにキスもした。でもそこまで。中学生のお付き合いなんてそんなもんだろ。
「何だろうな
…
この子可愛いとか、カッコいいとか、もっと知りたいとか、近づきたいとか、手を繋ぎたいとか、キスしたいとか」
まぁそんな感じ?と小首を傾げてみせると、「わかりました!!」と勢いよく立ち上がった沢北がオレの隣にドカッと腰を下ろし覗き込んでくる。
「何だよ?」
「オレ、イチノさんのこと好きです!!」
突然の告白に止まる時間。流れる沈黙。
「
……………
は?」
ようやく絞り出せたのは、なんとも間抜けな音ひとつだった。
「だってオレ、イチノさんのこと可愛いって思うし、バスケしてるときはカッコいいって思うこともあります!もっと知りたいし
…
」
「ちょっと待て!!」
左手で額を押さえると同時に、右手を沢北の前にかざして話を遮る。
「触れたいし、キスもしたいっす」
パシッと掴まれ引っ張られた右の手首。その手のひらに触れたのは沢北の唇。
「おい!」
予期せぬ事態に動揺してしまい、その手にじんわりと汗が滲んでくる。気づいた沢北が手のひらに頬を擦りつけ「緊張してます?」なんて嬉しそうにへらっと表情を崩した。
「
……
お前、からかうのもいい加減にしろよ」
トクトクと速度を上げる心臓には気づかないふりをした。
「からかってませんよ。本気です」
アーモンドアイに一切の曇りはなく、その言葉が嘘ではないことは火を見るよりも明らかだった。
「
……
オレたち男同士だぞ」
あたり障りのない、だけどもっともな言い訳を口にするけれど、鼓動はシャトルランを終えたときみたいに速く脈を打っている。
「そんなのわかってますよ。でも“好き”ってそういうのも超えるんじゃないっすか?」
知らないすけど。
知らないと言いながらもふふんと自信満々の沢北。それに対して「そんなことない。気のせいだ」と強く言えなかったのは、じりじりと詰められる距離に心臓がきゅうと掴まれたような感覚に陥り、息が止まりそうになったから。
「ねぇ、イチノさんはオレのこと嫌いすか?」
唇をムッと突き出し、潤んだ上目遣いで覗き込んでくる。その可愛らしさに不覚にもドキッとしてしまい沢北なら
――
。なんて気持ちが顔を出す。
そんなことあるわけないだろ。
ふたりきりの部屋というシチュエーションに脳が錯覚を起こしているだけだ。
そう言い聞かせ、何とか答えを紡ぐ。
「
……
嫌いじゃないよ。でもそれは
―――
」
“後輩として”
逃げるための言葉は重なったくちびるに飲み込まれてしまった。
「証明してみせますよ。好きが性別を超えるってこと」
何だろうな
…
お前が言うと全部本当になりそうだ。
自信満々の沢北はカッコいい。
すぐ泣く沢北は可愛い。
もっとお前を知りたい。
ふたりきりだったら手を繋ぐぐらいはいいか。
キスは
…
びっくりしたけど嫌じゃなかったな。
あぁ、そうか。
オレも沢北のことが好きなんだ。
オレはありったけの力を込めて沢北を押し倒した。
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