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望月 鏡翠
2025-09-09 10:21:32
896文字
Public
日課
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#1835 嵐の夜の散歩
#毎日最低800文字のSSを書く
とてもいい天気だ。
空は暗く嵐の気配。夜が近づくにつれて、雨風は激しくなっていく。
こんな日は絶好の散歩日和だ。手ぶらで少しその辺りを歩いてみることにした。
雷とともにのしのしと歩く。こんな天気のときは人も獣も隠れているから、誰かの眼につくこともなければうっかり踏み潰してしまうこともない。
嵐の中を歩くものは、空が暗くなり人が目を開けて空を眺めることができないくらいに風が強くなってからでないと遠くには出かけない。その腕を元気に振るうと風が生まれ、肩の周りには雲が揺蕩い、雨を降らす。
嵐の中を歩くと、それ自身が雨風を生み出しもするのだ。
だから散歩を始めると、嵐はどんどんと強くなっていく。
その日の散歩の最中に山の向こうから、ガランガランと鐘の音が鳴るのを聞いた。嵐の中でこんなに鳴くものがいるなんて珍しい。そちらに歩いていくと街があった。街は苦手だ。うっかりと踏み潰してしまいそうなものが多すぎる。
音はその真ん中のあたりから聞こえていた。
鐘が揺れているのだ。
これは素敵な飾りものだと思った。小ぶりで手頃だ。玄関の呼び鈴がわりにちょうどいいんじゃないだろうか。
そおっと、街の中に踏み込む。あちらこちらにものが多いものだから、歩くだけでも一苦労だ。何も考えずに真っ直ぐに堂々と歩いて行けたらいいのだろうが、それをした後は踏み潰した生き物は街を見て、必ず悲しい気持ちになってしまうのだ。
だから、何も踏まないように細い棒まで近づいた。石積みの棒の先端についていた鐘を引っ張って取る。大きな手で、何も崩さずにそれだけ取ることができたのは奇跡に近く、スキップしたい気持ちになったが、かろうじて耐えることができた。
足取り軽く、家まで帰る。
次の日、雨が止んだあと早速工作に取り掛かった。ドアにつけると、最初からそこにあるために作られたものが如く、ビッタリだった。誰も訪ねてきていなかったが、鳴らしてみるとガランガランといい音を立てた。
家が素敵になったので、家にたくさんお友達を呼んだ。
ガランガランと山を越えて遠くまで呼び鈴の音はよく響いた。
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