晴の
2025-09-07 23:17:27
1405文字
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感想【小説】誠実な詐欺師/トーベ・ヤンソン

読書日記

誠実な詐欺師 感想 20250907


フォロワーさんのおすすめ!ということで購入した本。読んで良かったな……

読み終えたこの日は残暑というのも憚りがあるくらい暑い日だったのだけど、北欧の街に吹き荒ぶ風や雪、海に張る氷、作中に漂う冷たくしんしんとした雰囲気がすごく感じられて、一瞬外の暑さを忘れるほどだった。
以下ネタバレ込みの感想





こういうしんとした雰囲気の小説、すごい好きだ。好きな作家の異国でのエッセイを読んだ後の満足感と似てる。三人称ながら、巧妙にその人から見える範囲のことしか書かれておらず、かつその人も革新的なことをこのタイミングでわかりやすく言葉にしなかったりするから、どこかミステリー的にも読めて良い。タイトルに詐欺師、が掲示されているから、色んなことをちょっと疑いながら読んでたのもあるかも。

最初から、私はカトリに好感を抱いてたな〜。
彼女に感情的な、グレーなやりとりはのぞめないんだけど、とはいえ彼女はなんだかんだ優しいと思うんだよね。弟に対する愛情があり、不正に対して公正公平で、周囲に自分をよく見せたり好意を抱かせたりすることをしないだけで。だからこそ船大工の長男?はカトリのこと一目置いてたと思うし……
だからこそ、己の思惑のためとはいえ(とはいえそれだってカトリに多分そういう矢印を負けてた店長が発端だし、カトリが考えてたのは弟の今後だし……)自分が正しく適切なことをすればするほど失われて行くアンナの純朴さ?良さ?が気になってたと思うし、だからこそ、最後の最後、彼女のそれが取り戻せないかと、全くカトリらしからぬ嘘をついたわけだし。最後、犬を思った一節は、命令関係を引っ掻き回されて野に解き放たれた犬とカトリとを重ねさせる文だと感じたんだけど、なんかねえ、いい終わりだったし、カトリが自分の望む人生を、安心して過ごせると良いな、と思った。そのくらいは、結構彼女に入れ込んで読んでいた。

厳しい冬へ、冬から春への描写がすごく好きだったな……。特に、これはもう、言い尽くされてるかもしれないけど、最後の方にある、カトリと弟の見る海のシーン。金色に見える氷の道、夕暮れの造船所、ベニヤ板に反射する夕日、めちゃくちゃ美しかった。今読み返してても分量で言ったらそこまでじゃないのに(探すのに何ページかウロウロしてしまった)、すごく綺麗だった。

アンナはさ、でも、例え自分が分からなかった悪意や嘘が他者によって詳らかになったとしても、多分その屈託のなさや創作心は自分で守らねばならないものだったんじゃないかと思う。あとは、見て見ぬ振りをしたり、それはそれ、と割り切ったり。そうじゃなければ、タイプの違う他者とは暮らせないし、暮らせなくてももしかしたら良かったのかもしれないけどさ〜〜
でも、カトリを家に呼んだの、全てが全てカトリの思惑だけじゃなかった(……よね?)し……
最後、アンナが再び土のにおい、土壌を感じられたのは、そんなわけがないのに、多分アンナの不調を自分のせいだと思ってついたカトリの嘘に、親密さとか親切さとかを感じて、再び地面の上に立てたからなんじゃないかな

結構夢中になって読んでしまったのでまだ読みがも浅いと思うんだけど、とりあえず最初の感想として残しておきます。
いい文章を読んだな〜〜。お勧めしていただきありがとうございました……