なりさ
2025-09-07 21:44:14
1439文字
Public 駄文拙文
 

帰り道


■帰り道  Update 2004/06/13 (2004/03/21)
 管理人注:KC-12巻SCENE-57の直後だと思って頂けるとうれしいです。
 なんか、読み返すと麻上って妖怪みたいな顔してるなぁと……(爆笑) そんな管理人は麻上ファン。ちょっと勢い余って書いたヘボ小説。だけどかなりお気に入り。とある方に贈りました作品です。
 私の中では、“麻上スキーのためのバイブル”となっております(笑) これ以上かっこいい麻上、書けないだろうと……思います。サブタイトルは、どれが正しいのかそれは解らないよ?という意味を込めて。
 ※自分のイメージする麻上さんの根本にあって、すべての始まりになった作品といってもいいかもしれません。今考えても妖怪ってひどいよねー!・笑 愛ゆえということでお許し下さいませ。


追記:意外と打ち込んだ際に思っていたことは今でもゆるぎがないらしい。妖怪は今でも失礼。でもそう思ったこともあることは否定をしない。知らないうちに麗しくなって、心が踊ってしまいました。まさか2025年に新しい麻上さんを拝めるとは、この時の自分に言ったら驚くことでしょう。




 寮までの道のりは木々が生い茂っている。
 うだるような暑さの昼間は、蝉の鳴き声がうるさい道のりも、遅い日暮れが過ぎると昼間の喧噪が嘘のように静かになる。

 隣を歩く長瀬はただ無言で歩くという行為を繰り返している。
 そして麻上もまた同じように歩く行為を繰り返している。

「なあ、麻上……
 沈黙を破ったのは長瀬の言葉。
「なんだ?」
「どうすればいい?……いや、どうしたらいい?」
「希のことか……?」
……
 麻上は長瀬をちらりと見る。わずかに背の低い彼の表情は髪の毛に邪魔されてよく見えなかった。
 だが、無言が答えを証明していた。そのとおりだと。



 今日の練習で、麻上は二人に投げつけたのだ。
『甘え』という二文字を。



 麻上自身、今まで感じていた事であった。
 長瀬が希のやりやすいようにお膳立てする事だけが、果たしていいのだろうかと。
 インターハイまでには少しはその考えも変わるだろうと思って黙って見てはいたが、今日の長瀬の発言に限界がきたのは事実だ。

 今のままでは、きっと上を目指す事なんて出来ないだろう――

 それは麻上がずっと思っていた事だった。



 麻上が指摘した後の練習は練習にもならなかったのは言うまでもない。
 希も長瀬もその後のプレイがかみ合わなかったからだ。



……俺は希の思うようなプレイを引き出したいだけなんだ。それが出来たらいいと思ってる」
「誰だってわかってるよ」
「だけど、希のプレイを引き出せるようなアシストが出来ているのか、未だに自信がない」



 十分じゃないか。と言う事は簡単だ。
 だけど、そんなのは慰めにもならないのは十分に解っている。



「それは俺がどうこう言える問題じゃないし、お前達二人で見つけていくしかないだろ」
「それはそうだが……
「俺たちのキャプテンは悟なんだ。悟が希のためにゲームを作るなら俺たちはそれに従うだけだ。だがな、今のままじゃ、天童寺はおろか瑞穂にも勝てないんじゃないのか?」
……
 隣で言葉に詰まるのが解った。



 麻上は今まで思っていた事が確信に変わっていくのが解った。

 ――自信のなさと、愛情がお前ら二人を変な方向に持っていってるんじゃないのか?
 もう少し自信を持てよ、悟。



……あの哀川と組んでいる4番、あいつはそんな事考えてないんじゃないのか?悟は悟の持ち味とやり方がある。ならばそれを生かしながら希のやりやすいようにやっていけばいいだろ?」
「解ってるよ、そんなこと……!」
 低くうなるような声が聞こえた。
「なら、それを実践してみろよ。あいつもバカじゃない。お前がやる事についていくさ」



 沈黙が訪れる。
 隣の長瀬は難しい顔をしている。
 歩くという行為だけを繰り返す二人の目の前に、寮の明かりが見えてきた。

「あとは、希が俺のリバウンドやディフェンスに勝てるかどうかだ。俺なんかにやられてたら、いつまで経っても上には行けないだろ」
 再びの沈黙を破った麻上の言葉に長瀬は何も答えなかった。



 二人は無言で寮の入口をくぐる。
 玄関で靴を履き替えた長瀬は何も言わずに、麻上から離れていく。
立ち去る長瀬の背中に、麻上は声をかけた。
……俺たちは良くも悪くも悟と希にかかってるんだ。それだけは覚えておけよ」


 ――お前達が少しでも今の状況を打開しない限り、上は狙えないんだぜ?