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KARATATTI
2025-09-07 17:08:59
6007文字
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姉妹のカラス
seLさんラス6♀と弊社ラス6♀のちょっとしたSSです!
二人並ぶと姉妹みあって可愛いね〜♡の気持ちで書かせて頂きました!!
掲載許可頂き恐縮です、ありがとうございました〜!!
辺りを見回す。カメラアイで判別できる人の中で知り合いはいない。エアにも探してもらっているが、めぼしい返事はなかった。
どうしよう、迷子になっている。
ラスティとNESTのロビーで待ち合わせの予定だったのだが、どうやらサーバーの不調があったらしい。ロビーではない場所に放り出され、地図もバグって表示できない。幸いNESTだから車椅子でもないし移動が不自由なわけではないのが幸いか。ログアウトした方が早いと思ったが、オールマインドからのアナウンスでログアウトしたらデータ破損の可能性もあると言う。仕方がないと諦めて、自力でロビーに辿り着くことに決めた。
とりあえず人が多い方へ行ってみる。周りにいる人は当たり前だが皆自分より背が高い。車椅子に座っている時より視点は高く自由度は高いが、いざと言う時に武器がなく自衛できない心細さがある。ACにも乗れない今はただの無力な子どもだ。気を引き締めてしっかりと二本の足で歩みを進める。
「待って」
背が高い男たちについて行っていると、突然後ろから腕を掴まれる。警戒していたはずなのに勘が鈍ったか。指先を動かすもいつもあるトリガーはなく、空を切るだけの無駄な動作。振り向いてできる限りの形相で睨み付けるが、引き留めた相手は想像していた暴漢の形をしていなかった。
鳥か、犬か。ふわふわと長い白がかった灰色の長髪に、ぴょこんと可愛い一房が跳ねている。首には自分と似たような首輪が嵌められているが重厚でいかにもと言った風だ。服装も同じく灰色と黒色がメインでスポーティな印象を受けるが、スカートの一部分がシースルー素材で女性らしい遊び心が見られる。
女性。そう、女性だ。
しかも自分より少し年上くらいの若い女性。
「そっちはアンダーグラウンド。あなた一人じゃ危ないよ」
『
………………
』
透き通るコーラルの赤のような燃える瞳が嘘を言っているようには見えなかった。エアにも確認を取ってもらったが、不明瞭なデータの廃棄があるという。アンダーグラウンドと言うのは的外れではないのだろう。
『一人でも大丈夫』
「今はサーバーも不安定だから尚更心配だよ。行きたい場所があるなら一緒に行こう?」
手を離さない彼女に嘘偽りはない。ただ単純に、純粋に、こちらを心配してくれている。ウォルター以外に与えられたことのない善意に晒されてどうしたらいいのかわからない。
『
……
人と、待ち合わせをしていて』
「うん」
『サーバーの不調で、よくわからなくなってしまって』
「うん」
『
……
ロビーに、行きたい』
「うん。話してくれてありがとう」
掴んでいた腕を離し、屈んでこちらの目線に合わせてくれる。間近で見た赤の瞳は僅かに色彩が違う。右眼の方が僅かに鈍い、義眼だろうか。自分より少しだけ年上の女性、NESTにいる、義眼ともなれば間違いなくAC乗りだろう。もしかしたらランカーの一人かもしれない。あまり親しくするのも情が湧いてよくない。
けれど、わざわざ目線を合わせてくれて、ありがとうと感謝もしてくれて、優しい人だと確信する。優しいからと言って心を許してはいけないこともわかっている。最低限。最低限警戒して、ついていくことに決めた。
「ロビーだね、わかった」
唇を少しだけ上げた微笑で返されると、すくりと立ち上がって今度こそちゃんと手を取られる。自分の小さな手をしっかりと包む手は、ウォルターでもラスティでもないもっとすべすべで、柔らかいもの。二人と比べたら頼りないものだけれど、こちらを安心させたい一心でしてくれることだと伝わってきて、胸の内側が暖かくなる。
「行こうか」
手を握り返して返事をする。その様子に灰色の女の子はまた笑ってくれて、歩き始めた。
自分の歩幅は狭い。普段車椅子での移動に慣れている分、自分の足で歩くのは慣れていないからだ。折角手を引いてくれるのに歩く速度は遅い。一刻も早くロビーに行かないといけないのに、この女の子の時間を無駄に使わせては駄目なのに、上手く足が動かない。
「焦らないで。ゆっくりで大丈夫だよ」
彼女の方が背が高いから歩幅は広いはずなのに、こちらに合わせてくれている。意識しないとできないはずの優しさが痛い。ウォルターだってこんなに親切にしなかった。そんな、慈愛に似た行動をされるのは困惑する。ウォルターには自分に優しくする理由がある。自分の猟犬だから。餌を与えて懐けて躾けないといけなかったから。そんなものなくても自分を拾ってくれただけで尽くす理由になるのに
——
と、それは置いておいて。
少なくとも今の時点で彼女には見返りはない。目的地に着いた途端に請求される可能性があるので油断はしないでおく。伊達に独立傭兵をやっていない、貯金は程々にあるのだ。
「今日に限って災難だったね。NESTにはよく来るの? わたしはよく来るんだ」
沈黙に耐えかねてか、こちらの緊張を解すためか。灰色の女の子は酷く優しい口調で話題を振ってくれる。あまり個人情報を開示するのはよくないが、これくらいの雑談なら大丈夫だろう。
『よく、来る。対戦もする』
「そうなんだ、わたしと一緒だね。好きなパーツはある?」
『
……
EARSHOT』
「高火力だ。取り回しは難しいけど爆風が大きくて直撃しなくても十分な火力で格好いい。そんな武器を使いこなせるのならすごい技量だよ、尊敬する」
『そ、そんなことない
……
』
褒めてくれた。自分を褒めてくれた。嬉しい。嬉しい
——
じゃない。駄目だ、そんな簡単な言葉で絆されては駄目だ。自分は立派な独立傭兵、強く羽撃く一羽のカラス。微笑んでくれて手を繋いでこちらの思いを尊重してくれる上に目的地まで連れて行ってくれる長い灰色の髪がきらきらと煌めいた素敵な女性に心を許すわけにはいかないのだ。
「わたしは足を止めたくなくてSONGBIRDSをよく使うんだけど、対複数戦がほとんどだから全部爆風で吹き飛ばせたらなと思う時がある」
『吹き飛ばすのは爽快だが、積載重量の関係もあって重量級の脚部を選ばざるを得ない。ミッションによっては命取りになる』
「その度に機体構成を考えるのも楽しい」
『そう、楽しい』
ね、と顔を見合わせればまた微笑まれる。その美しさは溜め息を吐くほどで、自然と身に付けたのであろう優雅ささえある。綺麗な人だ。自分とは比べ物にもならないくらいに。
「待ち合わせている人とは連絡が取れた?」
『
……
メッセージを飛ばしているけれど、エラーばかり吐かれる。きっとあの人も同じだと思う』
「実はわたしもなんだ」
『えっ』
その言葉に耳を疑う。こんな素敵な人が自分と同じ境遇だったなんて。だからこそ、余計に焦る。
『わたしなんかに時間を割いている場合じゃない、あなたもその人を探した方がいい』
「大丈夫、あの人もきっとロビーに向かってるから。それに、困っている子を見て見ぬふりはできない」
『はぅ
……
』
人に優しくできる人はすごい。ウォルターもエアもラスティも、みんな色んな理由があって自分に優しくしてくれた。何も与えられていないのに誰かに優しくする選択肢なんてない。けれど、この人にはそれができる。できない自分が恥ずかしくなってきて、それ以上に心が綺麗なこの人が直視できなくて顔を背けてしまう。
「着いたよ」
そうこう勝手に思考が迷走している間に、少しバグがかっているが見慣れた建物の前に来ていた。知っている景色に安堵を覚えて胸を撫で下ろす。
『
……
あれ。そういえば何故あなたは案内できたんだ?』
地図も位置情報もバグっているのに。エアでさえも雑音で正確な情報がハックできていない。
「それは簡単。ログインして最初に飛ばされた場所が、運良くロビー前だったからだよ。ほら、中に入ろう」
手を引かれる。それならわざわざ待ち人を迎えに行ったのに、全く面識のない自分を優先させたことになる。やはり申し訳がなくなってしまった。
早く目的を果たさなければ、と馴染みのロビーの中に入ると再度辺りを見回した。黒髪、高い背格好が目印の男性は
……
見当たらなかった。
「
……
いなかった?」
『うん
……
』
「きっと来てくれるよ。疲れたでしょう、あそこで休んでいようか」
勝手にしょげていた自分にどこまでも優しくしてくれる。もう道案内は終わったから彼女も待ち人を探しに行ってもらいたいのに、自分を座らせて当たり前のように隣に腰掛けた。
『も、もういい。あなたはあなたのことをしてくれ』
「ここまで来たらちゃんと見届けないと落ち着かないよ。わたしのわがままだから気にしないで」
『はぅ
……
』
駄目だ。まだ好きじゃない。好きじゃないんだってば
……
! と自分を律する。手を重ねて大丈夫だよと安心させるような言葉にときめくわけにはいかない。ウォルター、助けて
……
!
「待ち合わせしている人の外見を教えてもらっていい? わたしも一緒に探すから」
『
……
短い黒髪に青い目。背が高くてすらっとした男の人。多分黒いジャケットを着ている』
「うん
……
?」
外見の特徴を聞いて首を傾げる灰色の女の子。
「
——
あぁ、いや。わたしの待ち合わせの人も同じような特徴だからびっくりしちゃって」
『そうなのか?』
「同じような人なら探しやすいね。二人揃ったら面白いよ」
『ふふ、そうだな』
ラスティが二人いたらとても面白い。瑠璃色の女の子のラスティを思い浮かべていたらつい笑ってしまう。あの二人はよく手も口も出している仲睦まじい関係だ。自分と好きな子の好きな男の人が仲良くしていると微笑ましい気持ちになる。
「
——
可愛い」
『え?』
「元々可愛いけれど、笑った方がとっても可愛いよ。ずっと笑顔でいてほしいな」
『へぅ
……
!』
何故突然口説かれているのか。わけもわからない褒めに恥ずかしくなってまた顔を背ける。ラスティ以外にも息を吐くように口説く人っているんだ
……
!
しばらくロビーの出入り口に目を光らせているが、目当ての人物が入ってくることはなかった。もしかしたらここに来るまでにトラブルに巻き込まれているのではないかと心配になってくる。ログイン状態だけは見れるからNESTにいることは間違いないが。
その間にも他愛ない談笑を続けて、時間が経つのも忘れてしまった。裏表も利害もない、ただ親切にしてくれた人と話すのはとても不思議な感覚だった。対人関係において利害が発生するのは当たり前だったから。心が軽くなる、と言うやつなのだろうか。
『
——
と、』
かくん、と首が傾く。頭の中も若干もやがかってきて、思考能力が落ちているのが自覚できた。こんなに長時間人と話すのは久しぶりだったからか。それとも彼女と話していると安心してしまうからだろうか。
「ごめんね、喋りすぎちゃったね。少し寝ていてもいいよ」
『
…………
うん』
最初にあった警戒心はすっかり解けて、灰色の女の子の肩に寄りかかってしまう。それなら、と少し待っていてと言われて素直に従うと、上にかける物を持ってきてくれた。心遣いの数値がカンストしている。
再び隣に腰掛けてくれてどうぞと促される。よりかかった肩はラスティよりも薄くて体温も低くて安定感は劣るものの、包み込んで、柔らかくて、気持ちよくて、形容し難い安心感がある。女の子って、こういうものだったか。
「もし寝てる間に待ち合わせの人が来たら起こすからね。今はゆっくりお休み」
『
……
ありがとう』
自然とそんな言葉がこぼれ落ちた。こんなに優しくしてくれた人に、こんな朧げな状態でしかお礼が言えないなんて、自分はなんて薄情な人間なんだろう。
起きたらちゃんと、正面から、伝えよう。
△△△
「うっ
……
百合尊い
……
」
「何か言ったか」
「可憐な少女が二人寄り添う絵が素晴らしいと言った」
「圧縮言語
……
?」
何だかざわざわと騒がしい。何度かまばたきをして目を開くと、目の前に黒髪と青い目の男の人が二人いた。一人は間違いなく自分が探していたラスティで、もう一人は同じような雰囲気の、でも仔細が違う男の人。
「あぁ、ごめんね。起こそうとしたんだけど、彼がまだ起こさなくていいって」
『
……
ぅん』
彼ならそう言うだろうなと予想はしていた。先に寝こけてしまった自分が悪い。寝ぼけ眼でぼぅ、と見上げると、いつものように跪いて自分の手を取る。
「待たせてしまってすまなかった」
『
——
いい。この子が、親切にしてくれたから』
いつの間にか肩を抱いてくれて支えてくれていた灰色の女の子に頬ずりをする。その様子に何かくるものを感じたのか、ラスティが胸の辺りを押さえた。
「レディ。私の大切な人を守ってくれてありがとう。心から感謝する」
「次はもう少し早く迎えに来てね」
「耳が痛い。一層気を付けることにしよう」
両手を広げると、ラスティはいつものように自分を抱き上げてくれた。灰色の女の子とは確かに違うけれど、どちらも好きな安心感。目線が近くなった、恐らく彼女の待ち人であろう男の人に会釈をしてみる。笑顔で返されてしまって軽率に好きになってしまうところだった。危ない。
「それでは、我々は退散するとしよう。君も会えて楽しかったよ」
「こちらこそ。またどこかで」
彼らにもどうやら物語があるらしい。それは後で聞くとして。先に彼女に伝えたいことがある。
『親切にしてくれてありがとう
……
お姉ちゃん』
その言葉に面食らったのか、ぴょこんと跳ねた一房の髪が揺れる。最後は褒めてくれた笑顔でさよならをしようと表情筋を動かす。勿論手を振ることも忘れない。無償の善意には到底及ばないけれど、これが今の自分にできる精一杯だ。
ラスティに抱えられて、見えなくなるまで手を振る。また会えるといいな。次は対戦なんかできたらいいな。したいことが増えて、嬉しいな。
「ご機嫌だな、戦友」
『うん。すごく、嬉しかったから』
「そうか。また話を詳しく聞かせてくれるか? あのレディとの触れ合いを、事細やかに」
『
……
うん?』
何だか含みのある聞き方に疑問を覚えながら大きな胸に顔を預ける。今日の予定はどうしようかと、尋ねるのは野暮だろうか。
△△△
「こちらこそ遅れてすまない戦友
……
戦友?」
「お姉ちゃん
……
お姉ちゃん
……
」
「おーい。そんなに嬉しかったのか? 良かったじゃないか、とても素直で可愛らしい子で」
「お姉ちゃん
……
わたし、お姉ちゃんできてた?」
「最初見つけた時は姉妹かと思うくらいには」
「ふふっ。ラスティもわたしのことお姉ちゃんって呼んでもいいんだよ?」
「私の方がお兄さんと呼んでほしいところだが
……
今回は、よくやったぞ。姉さん」
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