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めい@moca_ba
2025-09-06 23:47:48
2119文字
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てのひらの熱
髭バソ
イチャイチャしてるだけのはなし
床に敷かれたラグの上で、たいしておもしろくもないバラエティ番組を眺めながら酒を飲んでいたときのことだ。
片膝を立てて座っていた膝の上に、ぺた、とまるで幼い子どものような幼稚な触れ方で手が置かれた。傍らに座るバーソロミューの手だ。
まさにただ乗せただけといった様子で、それ以上何をするでもなく逆に離れていくこともない。
「この手なによ」
「
…………
うん?」
たっぷりと間を開けて返ってきたのは、たったそれだけだった。そしてその返事ですぐに、こいつ半分寝てるわ、と思った。少し掠れた甘ったるい声は、この男が眠たい時によく出すものだからだ。
バーソロミューの小さなつむじを見下ろしながら、黒髭は手に持っていた缶ビールをあおった。
ハーフグローブを外した手のひらから、ジーンズ越しにじわじわと体温が浸透してくる。温かいというより熱いくらいのそれに、目をとろんとさせたぽやぽやした表情を浮かべているだろうなとなんとなく想像がついた。
それと同時に、今日はあまり顔を見ていなかったことに気づく。体の大きさが違いすぎるせいで、隣に並んでしまうと黒髭が顔を覗き込むかバーソロミューが見上げてこない限り表情を見ることができないのだ。
「おねむなの?」
「ぜんぜん」
うそつけ。いまのは完全にひらがなの発音だった。
膝に置かれた手を軽くペちんと叩くと、すぐにするっと逃げて、今度はこちらの手の上に乗せ返してきた。
なんとなくやり返すように黒髭も手を引き抜いてまたバーソロミューの手の上に乗せる。それを数度繰り返すと「ふふ」と楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
こいつってこんなんだったっけ。
すっかり油断しきった姿を見下ろして、ふと思う。
初めて顔をあわせたのはいつのことだったかもう覚えてはいない。英霊の座だったのか、それともパイケットだったか。どちらにしろ、第一印象で澄ました気に食わない野郎だと思ったのはたしかだ。
今でも伊達男だのなんだのと言っているが、わざとらしいキザったらしい仕草は鼻につかなくなった。それはくるくると変わる表情や笑うと途端に幼くなる顔のほうを見せることが多くなったからだろう。
いつのまにかするりと懐に入りこんできたと思ったらそのままいついていた。そんな感覚だ。時折思い出したようにつっかかってくるのも気まぐれな猫のようで、黒髭自身もつい甘やかしてしまっている自覚はあった。
黒髭がぼんやりと思考を巡らせているあいだも、バーソロミューは黒髭の脚や膝に触れて感触を確かめていた。なにがしたいのか膝の骨の形を探るようにくるくると撫でまわしては、何度もぺたぺたと触れてくる。
しばらく好きにさせていたが、まったく色気のないその触り方ではただくすぐったいだけだ。そろそろやめさせようとしたところで、急に動きをとめるとぽんぽんとホコリを払うようなしぐさをして、おもむろに肘を乗せて体重をあずけてきた。
「いやホントなにぃ?」
「肘を置くのにちょうどいいと思ったんだけどね
……
かたいし少し高すぎる」
不満げにそう言いつつも動くつもりはないらしい。
何度か位置を調節するようにもぞもぞしていたが、ちょうどいいところを見つけたのかそのまま腕の上に頭を乗せて全身で寄りかかってきた。
「ちょっとぉ、重いんでつけど」
体格的にだいぶ差があるとはいっても、八十キロ近い男の体重を足一本で支えるのはさすがにしんどい。
わしゃわしゃと髪の毛をかきまぜて逃げるのを待ったが、離れるどころか余計に膝にしがみついてきた。
「なにをするんだ、この私の肘を置いてもらえるんだぞ? 光栄に思いたまえ」
バーソロミューが肘の上に顔を乗せたまま首を傾けて視線だけで振り向いた。体勢的に角度がないせいで、腕で半分以上顔が隠れている。そこから覗く片目は不満げな色を乗せている。
「いや、拙者肘置きじゃないんでぇ」
構え構えと甘え全開の視線に耐えきれずに、脚を左右に揺らす。危なくほだされるところだった。それを悟らせないようにさらに振り落とすように思い切り脚を動かせば、急に重心をずらされたバーソロミューが太腿の傾斜に沿ってずるずると滑り落ちてきた。
「わ、」
脚と腹の隙間に挟まるかたちになって、体勢を立て直そうともたついている姿がおもしろい。
角度がついた脚の山に登ることができずにもがいているバーソロミューをさらに挟みこむように足を折りたためば、ついにギブアップのタップがあった。
「降参?」
「
……
後頭部になにかあたっている」
「キャ♡ それ拙者の拙者♡」
ふざけて答えれば、バーソロミューがぴたと動きを止めた。そして、細い指先がジーンズ越しに太腿をかり、と引っかいた。
「なに、してぇの?」
そう問いかけたらまたかりっと爪を立てられた。
先程までとは違う色気のある触れ方に、太腿からビリっと電流のようなわずかな快感が走った。
「
……
最初から、誘っていただろう」
むすっとした声が返ってきた。
甘えとお誘いがわかりづれぇのよ。そう思いながら、太腿に触れたままの手に、己のそれを重ねてぎゅっと握ってやった。
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