三毛田
2025-09-06 22:58:49
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7 007. 他人事ならよかった

7日目
恋心なんて、知りたくなかった

 こんな痛い思いを、苦しい思いを、苦い思いをするのならば。
 いっそ他人事ならば楽になれただろうに。
「これって、なんだろう」
「さあ?」
 現像した写真を整理していたなのは、興味なさそうな声。
「丹恒なら、わかるか?」
「質問してくれば? さっきお茶しようって誘ったけど、読書中で素っ気なかったけど」
 ちょっとだけ拗ねたように。
 丹恒が素っ気ないのは、いつものことじゃん。
 そんなところも好きだけど。
「丹恒先生、今時間いいですか?」
 ノックに返事がなかったので、アーカイブに用があるふりをして入っていく。
「どうした」
 本から顔を上げ、俺を見る。
「痛くて、苦しくて、苦い思いをする瞬間があるんだ。それって、なんでかわかる?」
「どこがどう痛いんだ」
 ぱたんと本を閉じ、俺の前まで来て。
「ぐへぇ」
 顎を掴んで、結構強い力で左右に振る。その後、上下に。
「ふむ。瞳孔の開きに問題はないな。首の動きも問題なし。口を開けろ」
 顎から手を離し、そう告げるからゆっくり口を開ける。
「喉の腫れもない。舌の色もおかしくない。そうすると、内臓か?」
 俺の頬を両手で揉み、それから喉を指で撫でて胸元に触れて。
 丹恒の触れ方がとてつもなくえっちで、ドキドキする。
「ちょっと心音が速くなった? 穹、具合でも……
 胸から手を離し、俺を見る瞳には驚きが広がり。
「顔が真っ赤だ。熱でもあるのか」
 額に触れようと伸ばされた手を、掴む。
「穹?」
 わからないと思っていた。気づかないようにしていた。
 他人事ならば、楽になれた。よかったと思うのに。
「丹恒が好きだ」
「それは……俺も、まあ、お前のことは嫌いじゃない」
「違う。お前の好きは、仲間としての好き。でも、今気づいた俺の〝好き〟は、恋なんだ」
「こい?」
「そう。恋なんだ」
 ふとそう思った。これは、恋なんだと。
「もし、お前が俺に対して恋心を抱ているとしたら、それで……どうしたいんだ」
「うん。好き」
「だから」
「本音を言うと、恋人? っていうものになりたい。丹恒の特別になりたい。でも、お前に無理強いすることはしたくないから」
 自分で言っていたのに、段々胸が痛くなってきて苦しくなって。
 痛い思いはしたくないのに。苦しい思いはしたくないのに。
 丹恒の全てが欲しい。
 強欲な感情。
 こんなものが俺の中にあるとは思っていなかった。
「それ、は……
 困ったような表情を浮かべ、俺を見る。
「俺は、恋というものを知らない」
「俺だって、さっきまで知らなかったよ」
 うん。