spmm8ck9
2025-09-06 22:04:07
1833文字
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オロイフワンライ「いたずら」「歌」


「なあ」
……
「おい」
……
「黙って見てるだけなら手伝ってくれよ、きょうだい」
「駄目だ。僕が手伝いで注意を逸らしている間に、君が何か仕込むかもしれない」
「仕込むって何をだよ。大体、俺が今何してるのか見て分かんないか?」
……確かに。医者の君が、治療中に別のことを考える訳がないか」
「ご理解いただけて幸いだ。ほら、そっち支えてくれ」
「分かった」
……
……
……よーし、よし。もう大丈夫だ、我慢出来て偉かったな。もうすぐ親御さんが来てくれるから、それまでちょっとだけ待っててくれよな……
「暴れもせず、悲鳴一つあげず、よく耐えた。君の見せた強さを、きっと親御さんにも伝えよう」
「そうだな。……よし……じゃあ、ここで……しばらく休んでな」
……
……
……
……で?」
「もうすぐ僕の誕生日だろう」
「おいおいきょうだい、1カ月は先の話だぞ?」
「そのくらい前もって、少しずつ準備をすれば企みがバレないと考えているかもしれない」
「あー……? あっ、お前もしかして、まだカクークの誕生日のこと引き摺ってんのか⁉」
「当然だろ。僕はあのとき思い知ったんだ。君に対して無警戒でいてはいけないって」
「大したいたずらじゃなかったろ? お前だって、ネタばらしをする前に気付いてたじゃないか」
「最初から作戦を共有してくれたって良かったはずだ。ちょっと冷や冷やしたんだぞ」
「なに。冷や冷やしたのか? お前が?」
「ちょっとだけだ」
「ふーん」
……
「おっとそうだ。冷蔵室にショコアトル水が2本冷やしてあったんだった。取って来てくれよ、きょうだい。その間にクッキーを出しておくから」
「ん、分かった」
…………ふ、」
「これか? 君とカクークの分じゃないのか」
「今は遊びに行ってるし、置いといても悪くなっちまうからな。出来立てを飲ませてやった方がいいだろ?」
「それもそうか。ほら」
「さんきゅ。……あ、そっちを選んだんだな」
「えっ」
……
「は? 何か違うのか? 瓶や蓋に違いはないし……えっ? 何かマークが入ってるのか?」
……
「もしかして味に違いが……? それとも何か仕込んで……
「くくっ」
「⁉ イファ‼」
「あっはっはっは! 悪い悪い、変に警戒してるお前が面白くって」
「笑っていられるのも今の内だぞ。君の誕生日には、とんでもないいたずらをしてやるからな」
「おぉ怖。なんだ、野菜に誕生日おめでとうの歌でも歌わせるのか?」
「あっ」
「あ?」
「卑怯だぞイファ、素晴らしいアイディアを先に出して僕の選択肢を狭めるなんて」
「えぇ……? お前にとっちゃ、歌を歌う野菜ってのは素晴らしいもんなのか……?」
「素晴らしいだろ。きっとキャベツは多層的な歌声を持っているし、カボチャは重々しい歌声だ。ナスはきっと、張りがあって瑞々しい歌を披露してくれる。タマネギの歌声には思わず涙が浮かぶ」
「冗談か。冗談だよな?」
「いや、君の誕生日は今はどうでもいいんだった」
「急に投げるなよ」
「僕の誕生日に何を仕掛けてくるつもりなんだ? 隠し立てしても無駄だ。君の行動は当局によって監視されている」
「今度は何を見たんだよ。また映影か? それとも探偵小説か?」
「ノワール小説だ。犯罪者が主人公で、メロピデ要塞からの脱出を目指す」
「ふーん。どうでもいいけど早く飲まないとぬるくなるぞ」
「どうでもよくは……いやどうでもいいんだ。そんなことより君の話だ。ほらきりきり吐け。こいつのお世話になる前にな」
「こいつってどいつだよ。大体まだ何も考えてねえって」
「語るに落ちたな、イファ! やっぱり何かするつもりなんだ。実はアイディアだっていくつか出してるんだろう?」
「あー、ったく。フォンテーヌに連れてったのは間違いだったのか……? どんどんめんどくさくなりやがる……
「せめてヒントをくれ。ヒント!」
「ヒントねえ……。あー……、うん。オロルン」
「うん、うん、なんだ?」
「紐がついてるやつと穴が開いてるやつならどっちがいい?」
「紐……? 穴……? ま、まさか罠か⁉」
「あーそうなるか。まあ罠みたいなもんだな」
「やっぱりか! 誕生日に罠を仕掛けるなんて、君は酷いやつだな……。うーん、ちょっと一旦持ち帰って考えてもいいか?」
「答える気はあるんだな。お前のそういうとこ、変だけどいいと思うぜ」