三毛田
2025-09-04 21:14:11
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5 005. 焦れったくて歯痒くて

5日目
でも、それが俺たちの進むスピード

「焦れったいわね。穹、あなたはもっとグイグイいく子じゃなかった?」
「俺は一途だし、相手は初心なんだよ。そんなグイグイ迫ったら、逃げられる」
「私たちはハンターよ。狙った獲物は逃がしちゃ駄目」
 手袋に包まれた指が、頬をつつく。拳銃も刀も持たない、ただの指ならば怖くない。
 それに、指先にわずかばかりの愛情が乗っているのだ。それを拒否する気はない。
「なら、刃をどうにかしてくれよ。あいつのせいで、進展しないんだから」
 俺が手をこまねいてるのもあるけど、彼が会いに来てくれるたび、刃が殺しにかかるのも原因だ。
 そのせいで、貴重な時間が何度無駄になったことか。
「彼が来たら、部屋に閉じ込めておくわ」
「頼む。でも、なんでそんなに協力的なんだ?」
 バディであり、育ての親のような女性の顔を見上げる。
「そうね。あまり余所に興味を持たなかったあなたが、彼には強く惹かれていたのを見たから。どうなるのか、気になったの」
「趣味悪い」
 顔をしかめると、珍しく小さな声を上げて笑う。
「刃ちゃんのことは、ちゃんと対処しておくわ。あなたが思うように動けば大丈夫」
……それも、脚本通りってことか?」
「どうかしら」
 いつものように誤魔化された。でも、憤りは感じない。
 だって、それが彼女だから。
「いらっしゃい」
……ああ」
「刃なら、部屋から出ないというか、出られないから安心して」
「そうか」
 ホッとした表情も可愛くて、抱きしめたくなった。我慢した俺は偉い。
 カフカと会話をして数日。
 今の星で拠点としている場所へ、恋人がやってきた。
 流浪の人であるらしいが、俺とお付き合いを始めてしまったがためにまだこの地に滞在してくれている。
 その事実に、嬉しくて仄暗い感情が胸の中へと広がっていく。
 特に何をするわけでもなく、俺が質問などをして彼が答える。そんな時間。
 今日は邪魔が入らないから、たくさん喋ることが出来た。カフカ様、ありがとう。
「なあ、丹恒」
「っ。どうした」
 名前を呼ぶと、一瞬だけ驚き。だけど、すぐに表情はいつも通りに。
 少しだけ嬉しそうなのは、何故だろうか。
「手を、握っても?」
「構わない」
 膝に置かれていた彼の手を、そっと上から包み込む。
 ようやく彼に触れることが出来て、嬉しくて仕方ない。
「ふふふ」
「嬉しそうだな」
「やっと、お前の手に触れられたんだ。嬉しくないわけがない」
「そう、なのか」
「うん。そうなんだ」
 いつか、口づけもできるよう一人密かに願いを込める。