三毛田
2025-09-03 22:03:18
1074文字
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4 004. 触れそこねた指先

4日目
でも、手を繋げた

 触れようと伸ばした手は、宙を切る。
「っ」
 触れたいのに、触れられない。もどかしさと、悲しさがないまぜに。
 深呼吸して、動揺を誤魔化す。
 丹恒が、俺に気づかず先へと進んでしまった。それだけ。
 うん、それだけだ。
 そう自分に言い聞かせ、彼を追いかける。
「穹?」
「なんでもなーい」
 わざと明るく告げることで、誤魔化す。そんなすべを覚えてしまった。
「そうか。早く行こう」
「うん!」
 これは切ない片想い。
 そう言い聞かせないと、自分が自分じゃないような気がしてしまう。
 こんな感情、初めてだから。
 誰かを好きになるとか、苦しい思いをするとか。
 どう足掻いたって、彼の気持ちはこちらに向かない。それを悟った時の絶望感。
「ほら」
「え」
 差し出された手に動揺して、言葉が上手く紡げない。
「ここから先は、人が多い。手を繋ぐとはぐれないと、前に三月が言っていた」
 俺が困惑しているのが分かったのか、そんな言葉をつけ足して。
……なのと、手を繋いだのか」
「あっちが勝手に俺の上着の紐を掴んできただけだ」
「じゃあ」
「お前が初めてだ。こうして、俺が自ら行動したのは」
 手の一は変わらない。
 ならば、気が変わらないうちに。そう思いながら、そっと手を重ねる。
 触れ損ねたはずだったのに、しっかりと触れ合って。
 嬉しくてスキップしそうになるのを、何とか我慢して丹恒と歩調を合わせて道を進む。
 あの店に入ったことはあるか、屋台のものは食べたことあるか。
 前にこの町へ来たことのあるという彼へ、質問を投げかけていく。
 まるで好奇心を抑えきれない子供のような俺の言動にも、彼は一つずつ答えてくれて。
「あの店は、三月ならば入ったことはある。だが、俺はない。あちらの屋台は、前に購入したことがある。俺の口には意外と合ったが、お前の口に合うかまでは保証できない」
「へ~。じゃあ、一緒に入ってみようよ。その後は、屋台でご飯!」
……そう、だな。たまにはいいかもしれない」
 俺の提案に、ちょっとだけ悩むそぶりを見せ。でも、最終的には頷いてくれた。
 内心で、デートだ! と思いつつ、でもそれを表に出さないように気を付けて。
 お店を見て回り、なのへのお土産を買い。買い物を終えて、屋台を二、三か所回ってご飯。
「え、えへへ」
「なんだその笑いは」
 串焼きを手に、呆れた表情を浮かべる丹恒。
「丹恒とこうして買い食いするの、楽しいなと思って」
「俺も、似たようなことを考えていた」
「ほ、本当!?」
「ああ、本当だ」