fedge
2025-09-03 20:32:55
2363文字
Public Pixiv非掲載
 

ふんわりナタっこ現パロ小学生妄想①『シロネンと宿題』

※都合の為全員同年代 ふんわり設定現パロ
実際の幼少期との乖離などが見受けられますのでご留意ください。

ネタ元
https://x.com/f_edge_talker/status/1962435203441582124

八月に入ったばかりで燦燦とした日差しが照り付ける中、シロネンは宿題を入れたリュックを背負って古民家の前に立っていた。少し高い位置にある玄関の呼び鈴をぽちりと押すと、ピロピロとした電子音に続いて「はーい」と遠くから声がする。カチャンと錠を上げる音の後、カラカラと引き戸を開けたのは、蝙蝠のような薄い耳を頭部に備えた少年だ。

「こんにちは、シロネン。いらっしゃい」
「おじゃましまーす。あれ、今日はシトラリばあさまはいないの?」

いつもならオロルンと一緒に出てくるはずの黒曜石の老婆の姿が見当たらず、シロネンは首をかしげる。八月に入った最初の日曜日、オロルンと一緒に宿題をする、もとい社会の宿題を見せてもらうことを休みに入ってすぐ約束していたのだから、今日来ることは伝わっているはずなのだが。

「ばあちゃんは急なおしごとで出かけて行った。シロネンが来ることは伝えてるからだいじょうぶだ」
「そっか。おまんじゅう持ってきたから、あとでシトラリばあさまに渡しといて」
「ありがとう。きっとばあちゃんも喜ぶ」

こっち、と通された畳の部屋には重厚な座卓がどっしりと置かれており、適当に投げられた座布団がそのそばにいくつか散っている。通された部屋には冷房がしっかり効いており、ここまで来る途中で熱されていた体がきゅっと冷やされる。散らばっている座布団を二枚ほどかき集めてその上に座り、リュックから宿題を取り出したところでオロルンが麦茶を持って戻ってきた。大き目のグラスに氷が幾つか揺れている。シロネンは渡された麦茶を半分ほど一気に飲み干し、ぷはーっと息を吐きながら机上にグラスを置いた。

「ありがとー、生き返るわ。外あっちぃんだもん」
「なつだもんな。それで、写したいのは社会だけか?」
「うん、社会だけ。観察日記もできてないけど、ウチのトマト枯れちゃったから……マーヴィカせんせーにごめんなさいする。オロルンは宿題おわった?ウチは算数と理科はおわってるから、もし写すならってもってきたけど」
「学校のは観察日記以外おわった、ばあちゃんがうるさいから……
「そっか。シトラリばあさま厳しいもんね……それは?」

社会のプリントを借りて答えを写そうとしているシロネンの横で、オロルンは何やら見慣れない冊子を開いている。オロルンは顔を上げることなく、その冊子にいろいろと書き込んでいた。

「ああ……これは、ばあちゃんが「シュクダイが終わってもベンキョウは終わりじゃないのよ!」って。今日はこのページをやるやくそくなんだ」
「あんたも大変ね……

そのあと二人はしばらくの間無言でプリントと冊子に向き合った。一刻も過ぎたころには二人とも宿題を終えて、シロネンはオロルンにプリントを返す。

「これでウチも宿題おわりー!ありがとうオロルン、助かったわ」
「僕で役に立てたなら何よりだ。でもシロネン、君のはまだおわりじゃないだろ?」
「国語と作文は嫌いだけどやったよ、まだなんかでてたっけ?」
「さっき観察日記がまだだって」
「ああ……でも観察するものが無いからさ。毎日「今日も枯れてました」ってかくつもり」

ほら、とシロネンが自身の観察日記をリュックから取り出しておもむろに開くと、そこには見事なまでに真っ白に枯れたミニトマトの茎の写真が貼られていた。あまりにも見事な枯れっぷりに哀愁さえ漂っているように感じてしまう。

「ここって絵を描くところじゃなかったか?」
「写真のほうが正確でしょ?こっちのほうがわかりやすいよ」
「たしかに」

ふむ、と考えたオロルンは無言で立ち上がって部屋を出て行った。オロルンの突飛な言動や行動に慣れているシロネンはそれを意に介さず、溶けかかって柔くなった氷を口に含んでかみ砕く。しばらくして部屋に戻ってきたオロルンの腕には、小さな鉢植えが抱かれていた。学校から持ち帰った鉢植えよりは一回り小さいが、茎は立派に育っていて今にも花をつけそうだというころあいだ。

「これあげる」
「オロルン、それは?」
「ふやしたミニトマトだ」
「ふやし?ミニトマトってふえるの?」
「おいしいトマトにするためには、えだを取らなきゃいけないんだ。でもそのえだにもいのちはある。だからえだを新しい鉢にうえてあげると、こうやってあたらしいミニトマトになる」

よいしょっと声を出しながら抱えてきた鉢を机の上に置き、オロルンは満足げに頷いた。

「これなら観察日記をかけると思う。プリティートマトがどう育つか気になるから、日記を書いたら僕にも見せてほしい」
「プリ……

よくよく見れば鉢には白い名札のようなものが刺さっていて、黒いペンで「プリティートマト」と名が刻まれている。

「でもウチが持って帰ったら、きっとまた枯らしちゃう……
「ここで一緒にそだてればいい。それならきっとだいじょうぶだ。それに、僕が宿題で日記をつけてるのはデリシャストマトだから、おんなじにもならない。僕の家までくるのは大変だけど……どうだ?」
「ウチは宿題できるようになるからたすかるけど……ほんとにいいの?」
「ああ。僕はいつもどおりトマトたちとお話するだけだから。庭のわかりやすいところに置いておくから、好きな時に日記をかくといい。ばあちゃんにも伝えておく」
「お話……?そっか、すごく助かる、ありがと」

シロネンのトマト観察日記は無事に提出が叶うこととなったが、帰ってきたシトラリに客間の机に植木鉢を乗せた土跡と傷を見つけられてしまったオロルンは大目玉を食らったのであった。
尚、オロルンの家には挿し木で増やされた計五つのミニトマトの鉢があり、大量に収穫されたミニトマトたちはオロルンとカクークの夏の間のおやつとなった。