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望月 鏡翠
2025-09-03 09:58:27
924文字
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日課
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#1831 1830の続き
#毎日最低800文字のSSを書く
酒を盗まれた男は、しばらく龍が酒を舐める様を見ていたが、やがて酒の入った椀を目の前の地面に置いてくれた。龍は自分に与えてくれたのだとわかり、顔を突っ込んで大喜びで飲んだ。
二杯目を期待したが、男は酒瓶の口を開けてくれない。
酒が周り上機嫌になった龍は、男の膝に体を預けてうとうととした。不思議だった。どれほど深く匂いを吸い込んでも、やはり木と苔しか感じられない。傷口に当ててくれた苔は、外套に生えていたもののようで、このあたりでは見たことがなかった。
男の膝は古い木の匂いに体を預けたようだった。落ち着く匂いがした。
かつて龍がいたところにも、こういう古い木があった。
彼らは優しく接してくれたものだ。昔の夢を見た。
目が覚めたとき、男はいなかった。体の上には落ち葉が掛けてあって、見つからないようにされていた。龍は強い生き物なので、獣に襲われることはないから人避けなのだろう。
龍は喉が鳴ったので驚いた。寂しいときに鳴る音だ。悲しい夢を見たときや、故郷の木が切り倒されてしまったときに、同じような音が鳴った。
苔が取れる頃に、また来てくれるだろうか。龍の鱗に、男の体温は温かく心地が良かったことを思い出す。待つのは退屈で、まだ体の小さな龍には向いていなかった。
怪我を負った体は、少しずつ動くようになっていた。酒の匂いに釣られて寄ってきた虫を二、三匹食べて、龍は男を探しにいくことにした。
匂いは木のようでわからなかったし、気配もない。しかし男は体が重たかったから、足跡が地面にくっきりと残っていた。
豊かな山の地面は柔らかい。残る男の足音を辿りながら山を抜けると、やがて男の背中が見えた。
龍は、あまり鳴くのに向いていない喉で声を上げた。元々群れで暮らす生き物ではないから、交流の手段に乏しいのだ。
物音に気づいた男は振り向き、そして困惑した声を上げた。
「何をしにきた?」
龍は立ち止まった男の足元に一目散に駆け寄り、体を這い登る。
「酒が恋しくなったのか?」
それも間違いではなかった。あの芳しい酒をもう一度味わうには、ついていく他ない。しかし何よりも龍は、助けてくれた男のことを気に入っていたのだ。
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