幾千 25↑
2025-09-02 21:40:06
2703文字
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訓練以上の距離 中編

sgud×夢主
忍務中に助けられたsgudに一目惚れしてしまい、訓練と称して会う話


指先が頬に触れた瞬間、🌸の呼吸が乱れる。それを見逃さず、凄腕は低く囁いた。

……頬は、警戒を解く為の場所だ。撫でられて拒む者は少ない。まずは安心させる――それが入り口だ」

凄腕の指がゆっくりと頬をなぞる。ただそれだけなのに、胸の奥にじんわりと熱が広がっていく。
次に、凄腕は🌸の手を取った。その手の甲に、指先を滑らせながら言う。


「手は信頼の証だ。強引に握れば反感を買う。だが、自然に触れれば、相手は心を開きやすくなる」

🌸の指先に熱が宿り、逃げようとしたが、強く握られていないのに離れられない。その柔らかな拘束に、胸が甘く締め付けられる。
 凄腕の指が次に触れたのは、首筋だった。ヒヤリとした感触に、🌸は思わず肩を震わせる。

「首筋は弱点だ。ここに触れるのは支配の合図……。抗えぬ相手に、自分を委ねさせるための場所だ」

囁く声が耳元に絡みつく。🌸は耐えきれず、目を閉じた。そして凄腕の手は、ためらいなく腰へと伸びる。衣の上から、ぐっと引き寄せられ、息が止まる。

「腰は……逃げ場を奪う場所だ。ここを支配すれば、相手の心も身体も、完全に縛れる」

その言葉と同時に、🌸の身体は凄腕の胸に押しつけられるように近づいていた。全身に熱が走り、頭が真っ白になる。

「忘れるな。今教えたのは、技としての色だ。だが――

凄腕の声が低く沈み、🌸の耳を打つ。

「心まで奪われれば、忍びとしては失格だ」

🌸は答えられない。耳に残る声から逃れられなかった。頬、手、首筋、腰――。次々と触れられるたび、🌸の身体は熱に浮かされるように反応していた。息が浅くなり、心臓が暴れる。これは訓練、忍びとしての技――。そう頭では理解しているのに、どうしても制御できない。

その変化を、凄腕が見逃すはずもなかった。鋭い眼差しが🌸を射抜く。

……お前、今、頬を赤らめただろう」

低く鋭い声。🌸は反射的に首を振るが、言い訳は喉で詰まる。凄腕は🌸の腰から手を離し、一歩引いた。その冷たい距離に、胸がきゅっと縮む。

「感情に溺れるな」

凄腕の声は冷ややかで、突き放す刃のようだった。

「これは技だ。忍務の為の武器だ。……お前が見せていたのは、女としての反応だ。そんなものは敵に利用されるだけだ」

🌸の瞳に、羞恥と悔しさが滲む。

……分かっています……でも……どうしても、抑えられなくて……

「甘さは命取りだ。――次に同じ反応をしたら、その瞬間に訓練は打ち切る」

冷酷な判断。それは🌸を試すためのものだと分かっていても胸の奥は締め付けられた。それでも🌸は、視線を逸さずに答える。

……はい』

その返事の中に、自分でも気づかぬほど強い覚悟と――秘めた恋情が混ざっていた。凄腕は🌸の答えを静かに受け止めると、再び一歩近づいた。その気配だけで、🌸の背筋は強張る。

「よし。ならば次の段階だ。」

低く響く声は、冷酷さの中にどこか挑発を含んでいた。

「色は、感情に飲まれてはならん。――心を動かさず、相手の心だけ揺さぶれ。それが出来て初めて“技”になる」

凄腕の手が再び伸び、🌸の顎をそっと掬い上げた。強くはないのに、抗えない。視線が絡み、逃げられない。

……今から、お前は俺を惑わせてみろ」

🌸の目が大きく見開かれる。

『わ、私が……?』

「そうだ。声と仕草で揺さぶるのは覚えた。次は――俺を相手に、心を動かさずに支配してみせろ」

🌸の心臓が跳ねた。

(無理……相手は……私が……)

胸に芽生えている恋心が、すぐに邪魔をする。“心を動かさずに”なんて1番難しい。
けれど、逃げるわけにも行かなかった。🌸は深く息を吸い、目を閉じて心を鎮めようとした。

(……これは訓練。忍務のため。好きとか、そういう感情は関係ない……!)

目を開き、凄腕を見据える。そしてわざと伏し目がちに視線を落とし、指先で袖をつまみ、小さく囁いた。

……こんなに近いの、誰にも見せたこと……ありません』

甘く震える声。確かに“色”だった。だが――

……駄目だ」

凄腕の声が冷たく遮った。

「瞳が揺れている。俺を意識している証拠だ。そんな未熟な色で、敵を落とせると思うな」

突き放すような言葉に、胸がちくりと痛む。
🌸はもう一度挑む。

今度は、凄腕の袖を掴み、そっと顔を寄せる。吐息をわざと耳にかけるようにして囁く。

……もっと、教えてください』

ほんのりと香る髪と熱い吐息。一瞬凄腕の瞳がわずかに動いた。けれど次の瞬間には鋭さを取り戻し、🌸の肩をぐっと押し返した。

……駄目だと言っている」

低い声には、今度はわずかな苛立ちが混じっていた。

「心を押し殺せ。今のお前は、俺を求める女の声になっていた。……技ではなく、感情そのものだ」

🌸は顔を赤らめ、言葉を失う。心臓は激しく打ち、抑えられない。必死に“技”を使おうとしても、どうしても(凄腕さんだから……)と心が動いてしまう。

凄腕はしばらく🌸を見据え、沈黙した。やがて低く吐き捨てるように言った。

「もっと心を整えろ。そうでなければ、お前は忍務で命を落とす」

🌸は拳をぎゅっと握りしめた。

……お願いします。私、もっと強くなりたい。役に立てる忍びになりたいんです』

必死な言葉。それは忍びとしての願いであると同時に、目の前の男に縋り付く気持ちでもあった。

凄腕はしばし黙り込む。鋭い瞳で🌸を見据え、やがて深く息を吐いた。

……どうやらお前は、心を抑える訓練では限界のようだな。ならば、身体の距離を使った訓練に進むしかない」

胸の奥がどくんと跳ねた。それは恐怖なのか、期待なのか。自分でも判別できない。

……身体、を……

🌸の声は小さく震えた。凄腕は視線を逸さずに告げる。

「勘違いするな。これは術だ。心を交わすためではない。敵を惑わせ、支配する最後の手段」

そう言いつつも、その声色にはどこか迷いが混じっていた。彼自身も、この一線を越えることを本能で危ういと感じているのだ。

……覚悟はあるか」

 低く問われる。🌸は強く頷いた。

『はい』

その瞬間、凄腕の手が🌸の肩に置かれた。指先は冷たいはずなのに、触れられた場所から熱がじわりと広がっていく。

……いいだろう。ただし、一度始めれば後戻りはできん」

その声に、🌸は胸を締め付けられるような緊張感を覚えながらも、はっきりと答えた。

『構いません。教えてください』

 二人の距離は、もう紙一重だった。