幾千 25↑
2025-09-02 21:38:17
4553文字
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訓練以上の距離 前編

sgud×夢主
忍務中に助けられたsgudに一目惚れしてしまい、訓練と称して会う話


戦場――訓練場というにはあまりに厳しい環境で🌸は必死に足を踏ん張っていた。課題は単独潜入。敵陣に見つからず、忍務を遂行しなければならない。教官の目は届かないが、緊張感は容赦なく、身体中の神経が張り詰める。


『くっ……!』

斜面を駆け上がろうとした瞬間、思わぬ罠が足元を掬った。地面が崩れ落ち、🌸は制御不能のまま転げ落ちる。


――その瞬間、風を切る音と共に、強い腕に抱え上げられた。

そこには、見たことのない忍び装束の男が立っていた。身のこなしはしなやかで力強く、一挙手一投足に無駄がない。

「大丈夫か?」

その短い声に、🌸の心臓が高鳴る。冷静であろうとする心を、思わず乱される。

……あ、あの……助けてくださって、ありがとうございます!貴方は……?』

🌸は礼を言いながら、相手の名を尋ねる。
その男は影のように静かに、低く答えた。

……ドクササコ城の凄腕忍者と呼ばれている」
 
『え……?』
 
🌸の胸が一瞬凍りついた。ドクササコ城――その名は学園でも耳にしたことがある。戦好きの悪名高い城。
尊敬と畏怖、そして知らず知らず芽生えた恋心が混ざり合い、🌸の心は複雑に揺れる。しかし、

 (……この方について行きたい)

その想いが心の奥で燃えていた。

一瞥だけで風のように立ち去ろうとする凄腕を🌸は思わず呼び止めた。

……待ってください!』

凄腕は立ち止まり、背を向けたまま顔だけ振り返る。その姿に、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。助けてくれた人――学園とは敵対する存在――この人と、もう二度と会えないかもしれない。

🌸は勇気を振り絞り、声を震わせながら告げた。

『私……もっと強くなりたいんです。もし……もしよければ、訓練をお願い出来ませんか……?』

 🌸の前で凄腕は腕を組み、少し眉を寄せた。

……学園の先生に教えてもらえ。そっちの方が安全だ」

冷たく突き放すその声に、🌸の胸はぎゅっと締め付けられる。

『でも……でも、私は貴方から教わりたいんです!』

🌸は必死に手を握り、目を潤ませながら懇願する。

『危険なのは承知です。でも、私、絶対に諦めません!お願いします!』

しばらく沈黙が続く。
凄腕の視線が🌸の目をじっと捉える。

……敵と分かっているのか?俺の訓練は厳しいぞ。痛い思いも、屈辱も、覚悟できているのか?」

 低く響くその声に、🌸は息を呑む。

……はい!全部覚悟します!貴方に認められたいんです!』

 その声には恐怖よりも決意が勝っていた。
 一瞬の間。凄腕は肩の力を抜き、ゆっくりと頷く。

「分かった。なら、教えてやろう」

 胸が高鳴る。🌸は思わず顔を上げ、熱い視線を凄腕に向ける。

 『はい……ありがとうございます!』

その目の前には敵と知りながらも、自分の熱意に根負けし、認めてくれた特別な存在――凄腕がいた。

 

 
 それから数日後、夜の静けさに包まれた森の中。
 🌸は息を整え、凄腕の前に立つ。

「じゃあ、まずは基礎からだ。姿勢を正せ」
 低く落ち着いた声に、🌸の背筋が自然と伸びる。凄腕の瞳がじっとこちらを見つめるたび、胸の奥が熱くなる。

『はい……

🌸は小さく答え、力を込めて正しい姿勢を取る。

「足の踏み込みが甘い。腰の位置も低すぎる」

凄腕が手を添え、🌸の腰に触れ、身体の位置を微調整する。🌸はその瞬間、思わず息を呑む。

(近い……こんな近くで、しかも身体を触られるなんて……)

「もっと力を入れろ。体全体で反応しろ」

凄腕の声は冷静だが、指先の圧や体勢の指導に、🌸の心は動揺する。それでも🌸は必死に従う。

『はい……!』

繰り返すうちに、🌸の体温は上がり、汗が額を伝う。だが、凄腕の視線は一切緩めず、冷静に動きを見守る。

「まだ甘い。呼吸も浅い。もっと集中しろ。感情は動かすな」

低く響く声に、🌸はさらに胸が高鳴る。身体を使った訓練の中で🌸は自分の意識が凄腕に引き寄せられるのを感じた。危険で、秘密で、禁断――けれど、だからこそ熱い。
その夜、森の中で始まった秘密の訓練は、単なる修行ではなく、甘く緊張感のある時間だった。



 
とある夜。いつもの森の訓練場に、🌸は少し震える手で立っていた。

『凄腕さん、お願いがあります』

凄腕は目を細め、少し眉を上げる。

「また、訓練か?」

🌸は息を整え、覚悟を決めて言う。

『はい……でも、今回は……その、色の課題を教えて欲しいんです』

凄腕の顔に一瞬、冷たい警戒が走る。

「色……だと?」

その声は静かだが森の闇に響く。

『はい。学園で出された課題です。色を使って、相手から情報を引き出したり、場合によっては暗殺も……。私だけではうまくできないと思って……

🌸の瞳には必死さと、ほんの少しの恥ずかしさが混じる。

『誰にも知られず、貴方だけに教わりたいんです……。お願いです。』

🌸が必死にお願いする目の前で、凄腕はしばらく沈黙した。風が木々の間を揺らし、夜の森には2人だけの静寂が広がる。


……今夜は無理だ」

 低く響く声に、🌸の胸が一瞬ひやりとする。

『えでも、お願いです。』

 🌸の声は震え、必死さが混ざる。凄腕は少し眉をひそめ、冷静に答える。

「明後日の亥の刻――、町のとある宿に来い。それまでに身体も心も覚悟しておけ」

🌸は息を呑み、心臓が高鳴る。――亥の刻……。夜の更けた時間。誰にも知られない、秘密の時間。
そして、🌸が今まで感じたことのない緊張と高揚が胸の奥で膨らんでいく。

『わかりました……必ず、行きます』

凄腕は軽く頷き、風のように森の闇へと姿を消す。
(明後日、凄腕さんと……)

🌸は胸の奥で熱い思いが込み上げてきた。




約束の日、亥の刻。
🌸は町外れの宿の前に立ち、胸の奥が強く脈打つのを必死に抑えていた。
宿は古びていて、夜の灯りにほの暗く照らされている。人の気配は少なく、まるで最初から秘密のために用意されたような空間。🌸は深呼吸し、震える手で戸を開けた。

「来たな」

 部屋の奥に座していたのは凄腕だった。忍び装束ではなく、いつもより軽い装い――。しかしその存在感は相変わらず圧倒的で、🌸の心臓をさらに早鐘のように打たせる。

……遅れてはいませんか?』
 緊張感で喉が乾き、声が掠れる。
「予定通りだ」

凄腕は短く答え、鋭い視線で🌸を見つめた。

「ここから先は遊びではない。お前の心と身体を試す。覚悟は出来ているか?」

🌸は喉を鳴らし、強く頷いた。

……はい。どんな訓練でも受けます。』

その答えに凄腕の瞳がわずかに細まる。

「よし。ではまず――色とは何かを教えてやる」

凄腕は🌸の目に前に立ち、腕を組んで静かに言った。

「まずは身体を使うな。声と仕草だけで相手の気を引け。」

🌸は息を呑み真剣に頷く。

「色は肉体の交わりだけじゃない。標的を油断させ、心を奪い、こちらの掌に乗せる。その入り口にあるのは声と視線だ」

凄腕は🌸の正面に腰を下ろし、鋭い瞳をまっすぐに向けてきた。

「例えば、標的に、問いかける時――声を落とせ。急かすな。囁くように……だ」

凄腕の声は低く、柔らかく響き、🌸の鼓膜を震わせる。ただ声を聞いただけなのに、胸の奥がじんわりと熱くなる。

「やってみろ」

促され、🌸は唇を湿らせ、小さく息を吐く。

……貴方のこと、もっと教えてほしい……

そう囁くと、自分の声が想像以上に甘く震えているのに気づき、頬が赤くなる。

「悪くない」

凄腕は淡々と評し、今度は指先をわずかに動かした。

「仕草も同じだ。大袈裟ではなく、自然に。例えば――首をかしげる。指先で唇に触れる……。それだけで相手の目を奪える」

凄腕の仕草を目の前で見せられ、🌸は思わず喉を鳴らす。胸の奥がざわつき、息が浅くなる。

……試せ」

🌸はぎこちなく首をかしげ、指先で自分の唇をそっと触れる。凄腕の視線がそれを逃さず捉えているのを感じ、心臓が跳ね上がった。

……こう、ですか……?』

一瞬の沈黙。凄腕は瞳を細め、低く呟いた。

……悪くない。だがまだ無意識の照れが出ている。もっと相手を支配するつもりでやれ」

🌸はその言葉に背筋を震わせながら、次こそは、と必死に覚悟を決めた。声と仕草――触れずとも、すでに胸が熱い。これが“色の入り口”なのだと🌸は実感していた。

 
幾度も声と仕草の練習を繰り返し、🌸の喉は乾き、頬は紅潮していた。自分の声色ひとつで空気が変わることを体感するたび、胸のざわめき、知らない自分に出会うような気がしてならなかった。

……よし」

凄腕は腕を組み、🌸をじっと見据える。

「次は、身体の距離を使った実践だ」

🌸の心臓が大きく跳ねた。距離――つまり、近づく。触れる可能性さえある。喉が鳴り、言葉が出てこない。凄腕は一歩踏み込み、🌸のすぐ傍に立つ。蝋燭の炎が揺れ、互いの影が重なる。

「相手との距離が近づけば、それだけで支配できる。だが覚えておけ。身体を使うのは――本当に最後の手段だ。声と仕草で落とせぬ標的にのみ、肉体を使え」

🌸は息を詰め、ただ頷いた。近づく凄腕の気配だけで、全身が熱くなる。けれど彼の瞳は冷静で、決して情に流されてはいなかった。

……俺の影を踏め。踏み込み、目を逸らすな。怯めば支配される」

凄腕は床に落ちる自分の影を示す。🌸は震える足を前に出し、影の上に立った。視線を上げると、すぐそこに凄腕の瞳。息が触れ合いそうな距離。心臓が破裂しそうなほど高鳴るのを必死に抑えながら🌸は目を逸さずに立ち続けた。

……いい眼だ」

凄腕はわずかに口角を上げ、🌸の肩に手を添える――触れるか触れないか、ぎりぎりの距離で止める。

「身体を使わずに、ここまで相手を縛れれば十分だ。覚えておけ、色は心を制す技だ。だが……

 凄腕の眼差しはこれまでと違っていた。深く、鋭く、試すような光を帯びている。

「実践で相手がそれ以上を求めてきた時……お前は逃げられない。今からは――触れる訓練に入る」

🌸の背筋が強張った。ようやく来た。避けては通れぬ課題。心臓の鼓動は訓練だからという理屈で全て振り払う。

「忘れるな。身体を使うのは、標的を完全に落とすための最終手段だ。だが、お前はその最終手段を、今ここで学ばなければならない」

……お願いします』

それは覚悟の言葉のはずなのに、震えて甘さを帯びた声になっていた。
凄腕の瞳がかすかに揺れる。

……いいだろう」

短い言葉と共に、彼の手がゆっくりと伸びてきた。
指先が🌸の頬に――触れるか触れないか、ほんのわずかの距離で止まる。

「これから先は、後戻りできんぞ」
低い声が🌸の耳に落ち、鼓膜から全身へと痺れるように広がる。🌸は瞳を逸さずに、ただ小さく頷いた。

……はい』

その瞬間、凄腕の指先がついに頬に触れた。柔らかな熱が走り、🌸の身体はびくりと震えた。