Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
アルマジロ
2025-09-02 19:32:15
6751文字
Public
Clear cache
アボミちゃんと一緒
レザヘクwithアボミちゃんの平和な話。微すけべ。小さいアボミちゃんと生還ヘクトールどっちもいるご都合世界です。
アルカディアを中心にソリューションナインを揺るがした大事件からしばらくが過ぎた。
ボクを含めた闘士たちは長らく事件の対応に追われていたけれど、ここ最近はようやく落ち着きを取り戻せたと思う。
今日もヘクトールの家に行って猫たちと遊ぶ。こんな時間こそが何よりも大切なんだと、今回の件で嫌と言うほど思い知らされてしまった。
「よ〜しよしよし
……
今日も可愛いでちゅね〜!」
「せっかく懐いてくれてたのに、またつれなくなっちゃったなぁ
…
」
三匹の猫たちはヘクトールの足元に集まりながら、甘えるようにその身体を擦り付けている。
隣にしゃがんで猫を撫でるヘクトールを、ボクは目を細めてただ見守っていた。もう二度と見れないと思っていたこの光景が目の前で広がっている。それが何よりも嬉しかった。
一時は魂蝕症の急速な悪化によって死んだと思われていたヘクトールだったが、レギュレーター内に残存していた魂や記憶、障壁の外から来た協力者の存在によって一命を取り留めることができた。
当時のボクときたらそれはもう大声で泣いて喜んだ。喪われたはずの大事な幼馴染が、奇跡的に生還したとあっては抱きついて咽び泣かずにはいられない。とはいえ相手は重病人だったので、医者や看護師にすぐ引き剥がされることになったのだけれど。
なにせ研究が進んでいない病だ。様子見も兼ねて長いこと安静を命じられていたが、ボクたちはその間に沢山色んなことを話し合うことができた。
先のことは分からない。それでも今は、こうして家で過ごせる程度には回復している。それだけで十分だ、何とでもなる。今は自然とそんな前向きな気持ちで過ごすことができるようになっていた。
「猫たちの機嫌も悪くねぇ。会わせてもいいんじゃねぇか?」
ヘクトールが猫たちの様子を確かめてからこちらへ視線を寄越す。
ボクはその視線に頷き返して、隣に置かれたペット用キャリーバッグの出入口を開いた。
「よーし
……
ほら、出ておいで」
安心させるように呼びかけてみる。しばらくの間動かず様子を伺っていた彼は、やがておずおずとキャリーバッグから姿を現した。
『
…………
』
一つだけの目がきょろきょろと辺りを見回す。ヘクトールの家に連れてきたのは、かつてブルートアボミネーターと呼ばれた魔物
……
をかなり小さくした生き物だった。
キャリーバッグから出てきた未知の客に対して、三匹の猫たちは遠巻きに見た後、じりじりと近寄っていく。
大人しいそれに更に近付いて各々が匂いを嗅ぐと、馴染みの相手かのように身体を擦り付け始めた。
小さいブルートアボミネーターもまた、自身の蔓を伸ばして猫たちを撫でるような仕草をする。
「
……
懐いてるねぇ」
「
……
だな」
固唾を呑んで見守っていたボクとヘクトールが揃って胸を撫で下ろす。
いきなり喧嘩にならなくてよかった、と苦笑しながら呟いた。
この小さな魔物が発見されたのは、ヘクトールの生還からしばらくしての事だった。
アルカディアの運営に囚われていたブルートアボミネーターの身体は、事件の解決後、事後処理にあたる政府の研究・医療班に確保されることになった。
その身体からヘクトールは蘇生されたのだが、どういう訳か身体を収容していた部屋から、この小さなブルートアボミネーターが出てきたという。
研究者によると、ブルートアボミネーターから人としての部分を切り離したのが今のヘクトールなら、それ以外の魔物としての部分がこの小さいブルートアボミネーター
……
ということらしい。
蘇生の過程で余ったエーテルから自然発生した生物と思われることから、危害を及ぼすほどの戦闘能力や凶暴性は備わっていない、というのが先生方の見解だった。
実際、発見されてからというもの人に敵意を向けたことはない。大きさも猫と同じくらいで、少し丸っこいシルエットになっているせいか愛嬌すら感じる。
「ねぇヘクトール」
「なんだ?」
『?』
「あっどっちも反応しちゃうのか。ええと、この小さい方も大人しいし、ネコちゃんとも問題ないみたいだから、ここで一緒に飼うってことでいいんだよね?」
「
……
まぁ、そうするしかねぇよな。放っておく訳にもいかねぇし
……
」
危険性はないと判断されて、次に浮かんできたのはこの生き物をどうするのかという問題だった。
安全とはいえ未知の魔物である以上、野放しにはできない。何より元はヘクトールだった存在だ。危険な目には遭わせたくないし、知らない人の手にも委ねられない。
結局本人が面倒を見るしかないのではないか、というのがボクたちの辿り着いた結論だった。
「どっちもヘクトールだってネコちゃんも分かるんだねぇ」
「俺としちゃ変な気分だけどな
……
」
猫たちと小さなブルートアボミネーターがじゃれ合っている様は、まるで新しく増えた家族を歓迎しているかのようで見ていて微笑ましい。
猫が小さな舌で新入りを舐める。すると隣で見守っていたヘクトールが急に落ち着きをなくした。僅かに身体を跳ねさせてはそわそわと周囲を見る。
「
……
っ
……
」
「どうしたんだい? ヘクトール」
「いや
……
気の所為かもしれねぇが、なんかくすぐったくてよ
……
」
ヘクトールは首を傾げながら身じろぎをする。何も当てられていないことを確かめるかのように、首元や身体のあちこちを手で触れていた。
「くすぐったい? 特に変なのが付いてるようには見えないけど?」
ボクもヘクトールの周りをチェックしてみるが、それらしきものは見つからない。その間もヘクトールは横目で猫たちの方に視線を投げていた。
猫たちは親しげにブルートアボミネーターに頭を押しつけたり、頬を舐めたりしている。その様子を何とも言えない顔で見ていたヘクトールが、戸惑いつつも言葉を零した。
「その
……
猫たちがそいつを舐める度にムズムズするっていうか
……
前から似たような感覚はあったんだけどよ
……
やっぱり
……
」
妙な発言に目をぱちくりとさせながら、ボクはヘクトールと小さなブルートアボミネーターを見比べる。
猫のザラザラした舌がブルートアボミネーターを舐める度に、ヘクトールはむず痒そうに視線を彷徨わせていた。
……
その姿に突飛な想像が浮かぶが、そもそも現状が不思議なことだらけだ。もしかすると、あり得ないことでもないのかもしれない。
「えっと
……
こうするとどう?」
ヘクトールの様子を伺いながら、ボクはブルートアボミネーターの頭に手を添える。そのまま髪に沿って撫でれば、彼は心地良さそうに目を細めた。
一方でヘクトールは俯いたまま何も言おうとはしない。しばらく黙って考え込んだ後、観念したかのように溜息を吐いた。
「
……
撫でられてるみてぇな感じがする」
「
……
やっぱり、そうなんだ
……
」
頬に赤みを増したヘクトールにつられて、なんだかボクまで恥ずかしい気分になってくる。
どういう理屈かは分からないが、どうやらこの小さなブルートアボミネーターとヘクトールは感覚を共有しているらしい。
思わぬ後遺症に頭を悩ませつつ撫で続ける。新入りとの交流を邪魔された猫が鋭いパンチを飛ばしてきて、慌てて腕を引っ込めた。
「なおさら放っておけないというか、目を離せなくなったね」
「だな
……
てかこいつの世話ってどうするんだ? 飯喰うのか?」
「確かに。こういう魔物って何食べるんだろう。植物だから光合成? それともネコちゃんと一緒でいいのかな」
「んな適当な
……
でもどっちにしろ、そろそろこいつらの飯の支度しねぇと」
しゃがんでいたヘクトールが立ち上がり、猫たちの食事を用意するべくキッキンへ向かう。
残されたボクはどうするべきか考えた後、好奇心の赴くままに小さなブルートアボミネーターを調べてみることにした。
猫たちに埋もれているところに両手を差し込んで、「よいしょ」の声と共に彼を持ち上げる。不満気に手足を動かしているのを宥めながら、ソファに腰掛けて膝の上に乗せてみた。
「うーん
……
キミはどういう生き物なんだろうねぇ
……
」
『
……
!
……
!』
猫と引き離されてご機嫌斜めなのか、小さな手がべしべしとボクの腕を叩いてくる。
逆にその手を取って手のひらをにぎにぎと押してみた。猫のように肉球があるわけでも、爪が出入りするわけでもないらしい。
「植物
……
に近いのかな? 花とかあるし」
片手で握手もどきをしながら、もう片方の手で花弁を撫でる。普通の花よりは少し厚みがあって硬いが、それでも指で動かせる程度には柔らかい。
その独特の感触が面白くて、花弁の縁をなぞるように指で伝う。そのまま付け根の方まで指を埋めてくすぐってみた。びくりと驚いたかのように蔓が伸びる。
『
……
!』
「同じ植物っぽい所でもパーツによって感触が違うね。花弁と、蔓と、足
……
もちょっと違う」
『
……
!
……
!!』
撫でる度に反応を返してくれるのが面白くて、どんどん調べたくなってしまう。
持ち上げて足の感触も確かめていると、蔓や花弁の先端が照明の光で少し透けて見えた。こうして見ると本当に動く植物って感じだ。
まじまじと下から眺めていると、ブルートアボミネーターの胴体の真下、足の付け根の中心辺りに窪みがある事に気がついた。
「なんだろ、ここ」
指先で窪みをつついてみる。その拍子に赤い爪先がびくりと大きく跳ねた。
『
……
!?』
「へこんでる
……
? わっ、わっ、暴れないで!」
『
……
!
……
!?』
これまで以上にブルートアボミネーターが激しく暴れ出す。じたばたと抵抗する手足は厄介だが、窪みを探る手を止めてはいられない。
これまで彼を調べた中でこんな窪みがあるなんて聞いたことがなかった。もしかして何処かでぶつけたりしたかもしれない。慎重に運んだつもりなんだけど、怪我だったら大変だから念入りに調べないと。
指の腹で撫で回せば、がむしゃらに暴れる動きに変化が見られた。ビクビクと震えるようにして抵抗が少し弱まる。
痛みを感じている訳では無さそうだ。ぐりぐりと指先を押しつけてみると足がさらに痙攣する。弱々しく伸ばされた蔓が、ボクの手にしがみつくように巻きついた。
過敏に反応するけど、傷跡という印象も受けない。ここは一体何なんだろう。
「ん? 窪みじゃなくて穴なのかな? ちょっとずつ開いてきてるような」
「何してんだテメェ!!!!」
背後からの怒号と共に脳天を強烈な衝撃が襲った。
振り下ろされた拳骨に視界が明滅する。頭を押さえて蹲ると、その隙に小さなブルートアボミネーターは脱兎の勢いで猫たちの方へ逃げ出してしまった。
振り返ると怒りに顔を歪めるヘクトールと目が合った。岩のような握り拳がわなわなと震えている。
「い、いったぁ
……
!? 急に何するんだ!」
「うるせぇこっちの台詞だ!! さっきからどこ触ってやがる!!」
「えっ
……
ボクはただ撫でてただけで
……
」
痛む頭をさすりながらブルートアボミネーターの方を見る。彼は猫たちの背後に隠れるようにしてこちらを睨んでいた。恨めしげな赤い目が、僅かに涙で潤んでいる気がする。
怒りと恥ずかしさが滲むその目つきを、ボクは確かに知っている。
恐る恐るヘクトールを見上げた。その顔は真っ赤に染まっていて、ブルートアボミネーターと同様に薄っすら涙目になっている。荒くなった呼吸に宿る熱は、怒りだけではなく甘さも秘めていた。
やはりこの顔も知っている。なんなら昨日ベッドの上で見た。
じわじわとボクの顔まで熱くなってくる。この時になってようやく、ボクは自分が何をしてしまったのかを悟った。
「え
……
っと
……
もしかして、そういう感覚だった?」
「
……
ッ!」
返事の代わりにヘクトールは背を向けて、足音を立てながらダイニングテーブルに引き返した。一時的にテーブルの上に置いておいた猫たちの食事を手にとって、床の上に並べていく。表情は見えないけれど、朱に染まった耳が無言で肯定を示していた。
「そっかぁ
……
うん、そっか
……
」
ぼんやりした言葉しか出せなくて、天井を仰ぎながら目を閉じる。先ほどの感触を繰り返し思い出しては噛み締めていた。
魔物の身体の性感帯なんて考えたこともなかったけど、そうか、窪みと花弁の付け根か、覚えておこう。
先ほどのブルートアボミネーターの反応を振り返ると、口の端がニヤけるのを止められない。こんな顔をしていることがヘクトールにバレたら二発目の拳骨まで喰らいそうだ。
床に並べられた食事に猫たちが集まってくる。
一匹一匹の食いつき方を確認し終えたヘクトールが、ゆっくりとこちらへ顔を向けた。
「
…………
レザラ」
静かな怒気を含んだその声に、思わず身体が硬直する。
立ち上がったヘクトールが歩み寄ってボクを見下ろす。いつの間にか小さいブルートアボミネーターまでこちらに寄ってきていて、ソファテーブルに登ってボクを睨みつけていた。
無言の二人から「ちょっとそこに直れ」という圧力を感じる。ただならぬ雰囲気にボクはソファの上で身体を縮こまらせるしかなくなった。
「触られてるの分かるって話したばっかだよな」
『
……
!』
「うん
……
」
「こいつも散々暴れただろ」
『
……
!
……
!』
「はい
……
」
「そうやって一方的に撫で回すから猫たちにも懐かれねぇんじゃねぇの?」
『
……
!
……
、
……
』
「おっしゃる通りです
……
」
二人がかりの説教は普段の倍の勢いで心に刺さっていく。
ブルートアボミネーターの言葉は分からないけれど、何を言おうとしてるのかは何となく分かる。容赦の無さもヘクトールそっくりだ。
耳を垂れ下げてお叱りの言葉と鳴き声を受け止めていると、やがてブルートアボミネーターは呆れたように肩をすくめてソファテーブルから飛び降りた。
食事中の猫たちの元へ向かう様子を見るに、怒りを鎮めてくれたらしい。ヘクトールもまた溜息を吐いて、ボクの隣へと腰を下ろした。
「ごめんね、ヘクトール
……
嫌だった?」
「
……
別に、急だったから驚いただけで、嫌ってわけじゃねぇ
……
」
ヘクトールの肩にもたれ掛かりながら顔を上げれば、その眉間に刻まれた皺が薄くなるのが見えた。
急に触られたように感じてとても驚いただろうに、すぐに許してくれてよかった。やっぱりヘクトールは優しい。
安堵と共にボクはヘクトールの身体に手を伸ばす。胸元から腹部へと掌を滑らせて、服の中へと手を差し入れた。
「
……
っ、おい
……
何して
……
」
「いやぁ、そういう気分にさせちゃったなら責任取らないとなって」
あんな顔させておいて放置する訳にはいかないだろう。ちゃんと続きもしてあげなくちゃ可哀想じゃないか。ヘクトールもボクも。
ソファの上で密着して、少しずつ身体を倒していく。最初は抵抗していたヘクトールも熱を持て余していたのか、身体を撫でる度に少しずつ力が緩んでいった。
「
……
駄目?」
「
…………
」
駄目押しに上目遣いで尋ねてみる。ヘクトールは何か言いたげに苦々しい表情を浮かべていたが、やがて紅潮させた顔を背けると、無防備にソファへ体重を預けた。
ボクを受け入れてくれるヘクトールに、自然と頬が緩んでしまう。衣服をたくし上げながら手を上へと這わせていく。鍛えられた胸の形を確かめるように撫でれば、期待に熱を帯びた吐息が耳をくすぐる。
吸い寄せられるように顔が近付いて、唇と唇が触れ合おうとした────その時。
「痛っ!?」
突然足に鋭い痛みが走った。咄嗟に身体を起こして足元を見れば、小さなブルートアボミネーターがボクを睨んでいた。
『
…………
』
よく見ると小さな手がボクの足に添えられている。その手で力いっぱい掴んで捻ったのだろう。触れられた箇所がじくじくと痛む。
予想外の妨害を受けて、ボクもヘクトールも呆然としたまま何も言えなかった。ただ二人揃って顔を見合わせる。
絶妙なタイミングで水を差すこの行為に、心当たりなんて一つしかない。
「
…………
やきもち?」
ボクの言葉の意味を理解したのか、ブルートアボミネーターは拗ねたようにぷいと顔を背ける。
その様子を見たヘクトールが真っ赤な顔で頭を抱えるものだから、思わず笑ってしまうのを堪えることができなかった。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内